王羲之「蘭亭序」に感激する
今日も、朝からいいお天気で気温も上がって、蒸し暑かったです。でも、昨日ほどは湿度が高くなかったようにも感じました。昨日の屋外作業と今日の室内活動の差かもしれません。
今日は両国にある江戸東京博物館に行きました。我が家のある青山から行くんでしたら、都営大江戸線の両国駅から歩いてすぐでした。特別展「北京故宮 書の名宝展」を見に行きました。お目当ては何といっても王羲之の「蘭亭序」です。上の画像の作品です。なお、上の画像は Wikipedia の巨大な画像にリンクを張ってあります。王羲之の「蘭亭序」以外にも、黄庭堅の「草書諸上座帖」、蔡襄の「行書自書詩」、顔真卿の「行書湖州帖」、沈度の「楷書敬斎箴」などが展示されています。江戸東京博物館のホームページには詳細な展示資料目録が PDF ファイルでアップロードしてあります。
まず、何といっても「蘭亭序」について、もちろん、王羲之の真跡は現存しませんから、今回展示してあって私が見たのは、北京の故宮博物館に保存されている八柱第三本です。馮承素の臨摸といわれています。筆路が鮮明なのが特徴的で、高校の教科書などで紹介されることも多い模写です。割り印として使われた「神龍」の印が、端に半分残っているので神龍半印本とも呼ばれています。なお、「神龍」は唐時代の年号です。北京の故宮博物館には清の乾隆帝が蒐集した三点の模写本の「蘭亭序」が有名です。八柱第一本、第二本、第三本と呼ばれています。今回、日本に来たのは先ほども書いた通り、馮承素の臨摸になる八柱第三本です。なお、八柱第一本はかの有名な虞世南、第二本はチョ遂良であろうと推定されています。なお、「チョ」の字は IME で変換できません。悪しからず。唐の太宗が初唐の三大家にそれぞれ模写させたんですが、欧陽詢の模写は特に出来がよかったので石碑に彫らせて、模写そのものは現存していないと言われています。
言うまでもなく、「蘭亭序」は書聖と呼ばれる王羲之が書いた書道史上最も有名な書作品です。28行324字から成っています。永和9年(353年)3月、蘭亭に会して曲水の宴が開かれた折に作られた詩集の序文の草稿が「蘭亭序」で、あくまで草稿ですから、追加・修正・消した部分なんかもあり、王羲之自身が後に何度も清書をしようと試みたんですが、草稿以上の出来栄えにならなかったと言い伝えられています。まさに、何も意図しないで無心で書かれたもので、書道の世界では「率意の書」と呼ばれます。なお、私が知る限り、八柱第一本、第二本、第三本などの各種の模写については、真跡の通りに追加・修正・消した部分も忠実に模写されていると聞いたことがあります。
感想は何とも言えません。素晴らしいの一言です。感激を超えて、大袈裟に言えば、こんな名品が見られるのであれば、ここまで生きて来てよかったとすら感じます。王羲之の書を極端なまでに愛した唐の太宗皇帝が「蘭亭序」だけは手に入らず、最後には家臣に命じて、王羲之の子孫にあたる僧の智永の弟子である弁才の手から騙し取ることまでして、自分の陵墓に副葬させた話は有名です。この太宗皇帝がすべての王羲之の書を蒐集して副葬させたために、現代の我々は王羲之の真跡を見ることが出来ませんが、この太宗皇帝の気持ちも理解できないでもありません。馮承素の臨摸になる八柱第三本ですら素晴らしい出来栄えでした。見ることは出来ませんが、王羲之の真跡になる「蘭亭序」はさぞかし素晴らしいのだろうと、想像力貧困な私のような者にでも理解できます。
今回の特別展は日中平和友好条約30周年記念だそうで、繰返しになりますが、「蘭亭序」以外にも、黄庭堅の「草書諸上座帖」、蔡襄の「行書自書詩」、顔真卿の「行書湖州帖」、沈度の「楷書敬斎箴」などが展示されています。一般展示前の内覧会には福田総理も出席したそうです。全体的に、行書の作品が多くて、草書や私の大好きな楷書の作品はやや少なめな気がします。もちろん、書道展ですから、隷書や篆刻の作品もありました。バランスよく展示されている印象があります。北京の故宮博物館を紹介するビデオも放映されていたりしました。書道展ですから、ややお年を召した女性が多いのはいつものことです。会場は少し暗いので、説明文などを読む場合には私はメガネが必要だったりしました。
書の趣味ある方でしたら、入場料の1300円もカタログの2500円も決して高くありません。9月15日までの開会だそうです。比較的時間的余裕のある夏休み公開ですし、何といっても、「蘭亭序」は本邦初公開だそうですから、ご興味ある方はお見逃しなく。
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