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2008年7月17日 (木)

「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象」なのか?

今日も、朝からいいお天気でした。気温も上がって、蒸し暑かったです。明日は雨がちだとの天気予報ですが、関東近辺の梅雨明けも近いような気がします。

CPI, year over year米国のヘッドラインの消費者物価上昇率が急激に上がって来ています。左のグラフの通りです。"Wall Street Journal" のサイトから引用しています。6月には前月比で+1.1%の上昇を記録し、前年同月比ではとうとう+5%に達しました。"Wall Street Journal" でも "spike" と表現しています。しかし、他方で、徐々に上昇して来ているとはいうものの、コアインフレ率は前月比で+0.3%、前年同月比でも+2.4%に過ぎません。もちろん、このインフレ率でも、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) が物価安定と考えているであろう1.5-2%のレベルをかなり上回っていますし、中央銀行としての信任を維持する上からも、やや金融引締めに傾くバイアスを持っているだろうと思うんですが、それにしても、コアとヘッドラインの差が大きくなっている現時点で、景気とコアインフレの現状を勘案して、そんなに早い時期の金融引締めは予想されていません。
今月7月2日のエントリーで国際通貨基金 (IMF) のリポートとともに取り上げた国際決済銀行 (BIS) の年次報告では、コアインフレのヘッドラインに対する予測パフォーマンスの悪化を分析していましたが、これもエネルギーと食料の価格上昇が原因となっています。しかし、コアインフレに注目するのは、必ずしもヘッドラインの先行指標だからというわけではないと私は考えています。逆に、現在のようにエネルギーと食料の影響の大きいヘッドラインではなく、コアを注目すべきであるのは賃金や供給面との関係、さらにいえば、ホームメイドのインフレとの関係であろうと私は考えています。
今夜のエントリーに掲げたように、フリードマン教授の有名な言葉として、「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象である」というのがあります。これは根本では正しいと私は考えています。何らかの世界的な過剰なマネーがエネルギーや食料に向かっていて、これが商品市況の高騰につながっている部分があるからです。しかし、同時に、伝統的な経済学のツールである需要曲線と供給曲線を考えると、価格が上昇するのは需要曲線が右方シフトするか、供給曲線が左方シフトするか、あるいは、その両方の時ともいえます。米国が日本に比べて借金体質で消費支出が増加しやすく、需要が供給を超過しがちにあるという意味で、ややインフレ体質といえるかもしれませんが、他方で、欧州については供給面で労働市場の柔軟性に欠けるという意味で、やっぱり日本に比べてインフレになりやすい面があるような気がします。我が日本について考えると、昨今の構造改革の成果かどうかは意見の分かれるところですし、他の面も考え併せた評価はさらに分かれるところですが、少なくとも、インフレへの耐性という面では、労働市場が従来に比べて格段に柔軟化して来ており、さらに、需要面の圧力が小さいために、貨幣的な現象であるかどうかに関わりなく、米国や欧州と比べて日本ではインフレ圧力がかなり小さいんだろうと私は解釈しています。このような要因は別にしても、日本の物価上昇率が欧米よりも低いのは現実の統計データを見ても明らかだと思います。少なくとも我が国においては、エネルギー価格などの高騰に対して、政府に補助金を要求するがごとき意見が散見される一方で、ここ数ヶ月でパート労働法に伴う以上の賃金上昇の高まりは見られません。商品市況の高騰は割合と単純な資源国に対する所得移転、あるいは別の視点から、税金の増税のようなものと見なされていて、賃金の上昇からホームメードインフレにつながるルートは、控えめに言っても、現時点の日本では観察されないと私は考えています。ホンの少しだけでしょうが、欧州でこのルートが認識されつつあるので欧州中央銀行 (ECB) が利上げを実施したというところではないでしょうか。

繰返しになりますが、「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象である」というフリードマン教授の意見は現在でも十分に正しいと私は考えているんですが、新興国や途上国では現下のインフレに対する処方箋として、それぞれの国内の通貨政策だけでは十分ではないような気がします。私が7月4日付けのエントリーで主張したような日米欧の協調利上げの模索をはじめ、グローバルなコンテキストでのインフレに対する政策対応を少し考え直す時期に来ているのかもしれません。

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