4-6月期GDP速報(1次QE)は景気後退を裏付ける
本日、内閣府から4-6月期のGDP速報、エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている統計データが発表されました。大方のエコノミストの予想通り、ヘッドラインの実質成長率は前期比▲0.6%減と4四半期振りのマイナス成長、年率換算では▲2.4%減となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
内閣府が13日朝発表した4-6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算で2.4%減だった。内需の柱である個人消費や設備投資の落ち込みが響いた。米景気の減速を背景に輸出も減速し、2007年4-6月期以来、4四半期ぶりのマイナス成長になった。
内需は0.6%減と低迷した。主要項目の個人消費は0.5%減少。生活必需品の相次ぐ値上げが消費者心理を冷やしたほか、1-3月期がうるう年で例年より1日多かった反動も重しになった。設備投資は0.2%減、住宅投資も3.4%減少した。民間在庫の寄与度はマイナス0.0%で、GDP成長率のうち内需の寄与度はマイナス0.6%だった。
これまで景気をけん引してきた輸出は前期比2.3%減少した。控除項目の輸入も2.8%減ったが、外需全体の成長率への寄与度はプラス0.0%まで低下した。
需要項目 | 2007/ 4-6 | 2007/ 7-9 | 2007/ 10-12 | 2008/ 1-3 | 2008/ 4-6 |
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国内総生産GDP | ▲0.4 | +0.2 | +0.6 | +0.8 | ▲0.6 |
民間消費 | +0.3 | +0.0 | +0.3 | +0.7 | ▲0.5 |
民間住宅 | ▲4.3 | ▲7.3 | ▲9.8 | +4.3 | ▲3.4 |
民間設備 | ▲2.1 | +0.6 | +1.1 | ▲0.1 | ▲0.2 |
民間在庫 * | ▲0.2 | ▲0.0 | +0.0 | ▲0.1 | ▲0.0 |
公的需要 | ▲0.2 | ▲0.4 | +0.8 | ▲0.2 | ▲0.9 |
外需 * | +0.1 | +0.5 | +0.3 | +0.4 | +0.0 |
国内総所得GDI | ▲0.7 | +0.0 | ▲0.1 | +0.2 | ▲1.0 |
名目GDP | +1.1 | +0.7 | ▲0.5 | +0.1 | +0.3 |
雇用者所得 | +0.4 | +0.2 | ▲0.1 | +0.3 | ▲0.5 |
GDPデフレータ | ▲0.5 | ▲0.6 | ▲1.3 | ▲1.5 | ▲1.6 |
需要項目別の前期比伸び率は上の表の通りです。名目GDP以外は実質の季節調整済み系列で、前年同期比のGDPデフレータ以外は前期比です。ただし、民間在庫と外需は寄与度表示となっています。なお、今回から注目すべき系列として国内総所得GDIを入れました。後で触れますが、大雑把にGDPの伸び率とGDIの伸び率の差が交易利得の寄与度になります。最近時点ではGDIがかなりGDPを下回っているのが読み取れます。先週8月8日付けのエントリーで取り上げた通り、ほぼすべての需要項目でマイナスを記録しています。外需の寄与度だけが予想に反してプラスのゼロだったんですが、その分というわけでもないんでしょうが、民間住宅が息切れ激しくマイナスになりましたから、ヘッドラインのGDP成長率は年率換算で▲2%台半ばと、ほぼ事前の予想通りになりました。景気後退局面入りを強く裏付ける内容でした。
8月8日付けのエントリーでも書いたように、私は今回の4-6月期1次QEのデータもさることながら、1-3月期の民間設備投資がどちらに改定されるかも大いに注目していたんですが、やっぱりと言うか何と言うか、前回の1-3月期の2次QEで+0.2%とギリギリのプラスだったのが上の表の通り▲0.1%のマイナスに改定されました。民間設備投資の前期比伸び率のグラフは上の通りで、いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。足元で景気後退局面にあるとする私の見方が正しければ、この先3-5四半期後には前期比で▲5%くらいの大きなマイナスを記録する可能性が十分あるんですが、現在の資源高で企業収益が悪化している局面ではもっと大きなマイナス幅を記録することも考えられます。
資源高との関係で注目すべきなのが交易利得の寄与度です。上のグラフは、青い折れ線グラフが前期比で見たGDPの実質成長率で、赤いラインが同じくGDI国内総所得、緑色の棒グラフが交易利得の寄与度です。2005-6年にかけてと最近3四半期くらいは赤いラインが青いラインを下回っていて、緑色の棒グラフが下に大きく突き出ているのが見て取れます。大雑把に、GDPとGDIの差が交易利得で、おそらく、GDPよりもGDIの方が国内の景気実感を正確に表現しているような気がします。さらに、交易利得の寄与度は原油価格が高騰した2005年は年間を通して▲0.3-0.4%くらいの寄与度だったんですが、WTI がバレル100ドルをうかがったり、突破したりした昨年末の2007年10-12月期以降の最近3四半期では、ならしてみれば▲0.5%を超えます。もっとも、最近時点では原油価格もかなり下落して来ていますから、これについては別途日を改めて取り上げたいと思います。
先行きについての私の見方は8月8日付けのエントリーから変化ありません。原油をはじめとする商品市況については日を改めて取り上げるとして、個人消費については物価上昇による実質所得の動向、設備投資については資源高による企業収益と海外経済の動向、最後に、GDP統計上は思ったほど後向きの在庫の積上りが見られませんので、今後、在庫が大きくマイナスになる可能性があり注視したいと思います。
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