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2008年8月26日 (火)

電子マネーに関する日銀の調査リポート

先週、日銀から「最近の電子マネーの動向について」と題するリポートが発表されました。日銀の決裁機構局から出ていて、基本的には「決済システム等に関する調査論文」という位置付けになっています。私のこのブログでも、昨年2007年5月11日の「PASMO 定期券に買い替え、電子マネーについて考える」と題するエントリーで電子マネーについて取り上げ、少し興味がありますので読んでみました。まず、日銀のホームページにあるサマリーは以下の通りです。

2007年度の主要6電子マネー(IC型)の利用状況をみると、年度末発行枚数は8,000万枚を超え、同発行残高(未使用残高)も771億円となった。また、年度中の決済件数は810百万件、同決済金額は5,636億円と、それぞれ大幅に増加した。こうした利用増加の背景としては、新規電子マネーの発行や一部電子マネーにおける相互運用の開始、共用端末設置の拡充等が指摘できる。
上記電子マネーの発行残高・利用金額等は、従来からの主要な小口決済手段である現金やクレジットカード等との比較でみるかぎり、なお僅少な割合にとどまる。しかし、最近の利用の拡がりを踏まえれば、電子マネーは小口決済手段のひとつとして一定の位置を占めつつあるように窺われる。電子マネーが、今後活発な競争のもとで、安全性、効率性、利便性の向上を含め、どのような発展を遂げていくか、注目していく必要がある。

私がこのブログで電子マネーを取り上げたのは1年余り前の昨年でしたが、このリポートでも昨年2007年が「電子マネー元年」と称する向きも見られるとの表現で、事実上、昨年から本格的に電子マネーの導入が始まったと見ているようです。その上で、リポートでは電子的小口決済手段のうち、IC 型のものを電子マネーと呼んでいます。なお、電子的小口決済手段としては、決済のタイミングに従って、プリペイドの電子マネー、ポストペイのクレジットカード等、リアルタイム(即時)のデビットカードに分類し、世間的には電子マネーと見なされている QUICPay や iD などもクレジットカードとの連動も重視して、ポストペイのクレジットカード等に分類されています。なお、プリペイドの電子マネーはさらに2種類に分類されていて、WebMoney などのサーバ型と Edy 、Suica、PASMO、nanaco などの IC 型の、おそらく最狭義の電子マネーに分けられています。サービスではなく、決済の観点ですから妥当な分類だと思います。

小口決済手段の利用状況の比較

これらの小口決済手段の利用状況を比較したのが上の表です。一部の出典が BIS になっているのにやや不審を抱きますが、それは別として、昨年が「元年」だった電子マネーですから、カード発行枚数ではデビットカードやクレジットカードに及ばないものの、決済金額ではデビットカードに迫るものがありますし、決済件数ではすでにデビットカードを抜いて、将来的にはクレジットカードに迫る可能性が高いと考えられます。電車に乗るたびに Suica や PASMO なんかをタッチしているんですから、決済件数は膨大になります。逆に、ウチの子なんかは地下鉄に乗るたびに80円の決済をしているわけですから、1件当たりの決済金額はデビットカードやクレジットカードを永遠に抜けないような気がしてなりません。なお、電子マネー発行残高を発行枚数で割った、カード1枚当たりの残高は957円と計算されるようですが、リポートでも指摘しているように、退蔵カードが少なくないと考えられますし、実際に使う際に小銭のお釣りを受け取るのを避けるために、支払いの段になってチャージして、そのまま支払う例も少なくないでしょうから、単純にこの金額が少ないと受け取るのは不適当かもしれません。なお、退蔵に関しては、私なんかも、その気もないのに、長崎に来て Suica も PASMO も退蔵させるハメになりました。
経済的なインプリケーションを考えると、小額通貨の発行枚数に影響を与えることが考えられます。リポートにグラフがある通り、今世紀に入ってから、すなわち、電子マネーの普及の前から50円以下のコインの発行残高は減少傾向にあるんですが、この傾向が増幅される可能性は十分あります。さらに、この傾向が進めば、マネーストックと GDP の関係に影響を及ぼすことも考えられないでもありません。しかし、500兆円に上る日本経済の規模からすれば、微々たるモノでしょうし、すぐに大きな影響を考慮する必要はないように私は感じています。リポートの結論でも「決済システムや金融システム全体に大きな影響を与えるものではないとの暫定的評価が可能」としています。現時点での暫定的評価であれば私も同意見です。でも、もっと先の話になると、経済学でも取り上げる必要が生じるかもしれません。しかも、そんなに長い先ではない可能性もあります。
今後の問題として、リポートでは不正使用などを引き起こすセキュリティの問題とネットワークや改札機のダウンによるサービス障害の2点を指摘していますが、決済の観点から、プリペイド先の倒産による決済不能の事態は指摘されていません。消費者向けの小口決済ですから、事業会社の連鎖倒産などは想定されていないのかもしれません。最後に、リバタリアンの傾向ある私独自の観点としては、昨年2007年5月11日のエントリーでも指摘しましたが、政府や日銀も含めた公的機関の介入を出来るだけ回避することが重要そうな気がしています。そのうちに、クレジットカードにならって海外も含めた規格統一なんかを言い出す人が出て来て、ナントカ協議会を結成したのはいいんですが、役所や日銀などからの天下り受入れ機関と化したりすると、電子マネーのビジネスチャンスが十分に活かせないような気がしてなりません。特に、交通系を所掌している某省なんかは霞ヶ関の中でも天下り先の確保に熱心だと見なす向きも少なくないですし、やや心配な気がしないでもありません。民間の知恵を活かすべき分野だと思います。

長崎ローカルに着目すると、我が国の大部分の人には関係ありませんが、実は、長崎にも交通系のプリペイド電子マネーがあります。バスで始まって電車にも一部の車両で導入しています。長崎スマートカードというようです。Suica や PASMO と同じ交通系のプリペイド IC カードです。最近、生協で見せてもらいました。でも、買いませんでした。使っている人を見かけたことはありません。ソニーの FeliCa の技術を使っているそうです。電車に乗るとしょっちゅう宣伝していて、東京では「チャージ」と称する入金を「積増し」とアナウンスしているので、最初、やや田舎っぽい表現だと感じてしまいました。この田舎っぽさも買わない一因かもしれません。

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