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2008年8月28日 (木)

発展途上国の貧困は改善されたか?

昨夜に嘆いたようなタイミングの遅れを少しずつキャッチアップしたんですが、それでも、今夜のエントリーで取り上げるのは8月26日に世銀が貧困について発表したリポートだったりします。世銀が新しい基準で発展途上国の「貧困推計」を発表しました。日本語の記者発表資料もあります。
リポートには細かく推計方法やデータが示されているんですが、結果だけを示せば、旧来の貧困基準である1日当たり1米ドルに対して、物価水準を考慮した「国際比較プログラム(ICP) 2005年」により、1日当たり1.25米ドルに引き上げた結果、2004年に旧基準で9億8500万人と推定されていた貧困人口は2005年に新基準で14億人に増加しました。もっとも、新基準である1日1.25ドル未満で暮らす途上国の貧困人口は1981年には19億人(2人に1人)だったものが2005年には14億人(4人に1人)に減少しています。その地域別の分布は下のグラフの通りです。リポートの39ページの Figure 4 を引用しています。

Numbers of poor by region 1981-2005

グラフを見ると誰の目にも明らかなんですが、貧困削減がもっとも劇的に進んだのが東アジア・太平洋地域です。ピンク色の部分です。リポートの34ページの Table 8 に元データがあるんですが、東アジア・太平洋の1981年時点での新基準1日当たり1.25ドル未満の貧困人口は1087.6百万人、うち中国が835.1百万人だったのが、2005年には336.9百万人、うち中国207.7百万人に激減しています。大雑把に東アジア・太平洋全体で 1/3、特に中国は 1/4 に減少しています。この地域は人口も増加していますから、1981年には貧困人口の比率が約80%だったのが2005年には15-18%にまで低下しています。逆に、オレンジ色の部分のサハラ以南のアフリカでは1981年の202.0百万人から2005年には384.2百万人へ倍近くに増え、貧困人口比率も50%台で推移しています。黒っぽい一番下の部分の南アジアでも1981年の548.3百万人、うちインド420.5百万人から2005年には595.5百万人、うちインド455.8百万人とわずかながら増加しています。もっとも、インドを含む南アジアは今世紀に入ってからは減少に転じていますし、人口が増加している地域ですから、貧困人口比率は1981年の60%弱から2005年の40%強に低下しています。
こういった事実を考え合わせると、クルーグマン教授のように、東アジアの経済成長は生産要素集約的なもので全要素生産性の向上が見られないため、生産要素投入量の増加が低下するとともに成長も停滞するとの批判も当たっていないわけではありませんが、取りあえずは、事実として東アジアが経済成長を実現して貧困を削減したわけですから、広く世界的に適用すべきひとつの成長モデルであることは疑いがありません。おそらく、我が日本も40-50年前は今の東アジアの諸国と同じようなことをしていたわけで、中国をはじめとするこの地域の各国は、要素投入量の停滞に従って日本の昭和40年不況のような調整期を迎える可能性は十分ありますが、これらの調整をへながら経済発展を続けるんだろうと私は予想しています。

Number in Poverty and Poverty Rate: 1959 to 2007

次に、発展途上国から目を先進国、それも飛びっ切りの経済大国の米国に向けると、これも8月26日に商務省センサス局から2007年における「所得、貧困及び健康保険のカバレッジ」というリポートが発表されています。上のグラフはこのリポートの12ページの Figure 3 を引用しています。2つの折れ線グラフは、どちらも左軸で、上の折れ線が100万人単位の貧困人口、2007年で37.3百万人です。下の折れ線は貧困人口比率で、2007年は12.5%となっています。影を付けた部分は景気後退局面です。なお、当然ながら、世銀とセンサス局では貧困の定義が異なります。世銀の定義は1日1.25ドルと明瞭なんですが、センサス局の方はかなり複雑で、リポートの45ページにある付属資料 B に家族構成ごとの貧困ラインが示されています。例を示すと、独立した子供のいない4人家族で年収21,386ドルが貧困ラインとなります。少し前に日本で話題になった年収300万円はこの基準を超えているようですから、米国では貧困と見なされないのかもしれません。今世紀初頭のリセッションを経て、米国でも貧困人口が増加しているのが見て取れます。また、リポート9ページの Table 2 にはジニ係数が算出してあって、2007年は0.463と2006年の0.470からは低下していますが、日本なんかと比べてかなり高いのが確認できます。

世銀のリポートもセンサス局のリポートも、どちらも英文でそれ相応のページ数がありますし、推計方法やデータに関する詳細な記述が多いんですが、専門外の私でも図表を見ているだけで参考になります。

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