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2008年8月25日 (月)

今週取りまとめられる総合経済対策に対する疑問

今週中に、政府は経済対策を取りまとめる予定と報道されています。規模については2-3兆円ではないかといわれていますが、8兆円規模の対策を要求する意見もあったりします。中身についての報道はいろいろあるんですが、資源高に対する対策が盛り込まれるとの報道をよく見かけます。よく分からないんですが、私が見た範囲でもっとも包括的な報道だったので、少し日付が古いものの、読売新聞のサイトから第2-3パラを引用すると以下の通りです。

対策に盛り込む事業規模は総額約8兆円で、中小企業の資金繰り対策や省エネルギー対策、燃料負担の大きい農漁業者への支援策を柱に据えた。政府は週明け以降、与党との協議を本格化させ、月末までに対策を最終決定する。
原案は、与謝野経済財政相が22日、福田首相や伊吹財務相らに提示した。中小企業や農漁業者向け支援のほか、高速道路料金の割引措置の拡大や、原油高をもたらした経済構造を改善するための資源外交の強化策などを盛り込んだ。フリーターの正規雇用化支援などの若年層向けの雇用対策、高齢者医療対策の拡充なども挙げている。

まず第1に、私が疑問を持つのは財政政策の効果です。特に、今回規模くらいの支出を拡大する需要積増し型の財政政策にどこまで効果があるか疑問です。今回の対策では2011年度のプライマリーバランス回復は堅持するようですが、その程度の規模では市場へのインパクトは少ないでしょうし、逆に、大規模に2011年目標を放棄するようなことにでもなれば市場は反対の評価を下しそうな気がします。いずれにせよ、財政政策は市場には人気がなく、欧米先進国の常識に従えば、マクロ経済政策の主流は金融政策に切り換わっています。もしも、財政政策が発動されても支出を拡大する需要積増し型ではなく、今年の米国のような減税が実施されるに過ぎません。財政支出の拡大による需要積増し型の政策の効果が小さいことの裏側には、私は基本的にリカード等価原理があると思っているんですが、いずれにせよ、非ケインズ型のマイナス効果も含めて、財政政策の効果の限界は10年前の小渕内閣でハッキリしたと私は考えています。特に、今回の景気後退局面は需要不足というよりも資源価格の高騰が原因ですから、財政政策の効果がさらに限定される恐れがあります。まだ、定率減税の復活などの消費者の所得を増加させる減税の方が効果的であると私は考えます。私も地方に赴任して、特に、長崎ではハコモノの公共事業が好きだと実感していますが、ハコモノが欲しいのか、ハコモノを作る工事が欲しいのか、国民は見極める目を養うことが重要です。私自身はハコモノを作るのであれば、その半分でもいいから減税する方が効果があるような気がします。
第2に、より重要なポイントとして、報じられている経済対策の内容が正しいとすれば、グローバル市場のダイナミズムを損ないかねない内容だと危惧しています。市場は資源の希少性を価格のシグナルにより発信して、各経済主体の合理的な経済活動を促すものであり、もしも、この均衡点が何らかの意味で望ましくないのであれば、経済政策により均衡を歪める場合もアリなんですが、マクロの失業の緩和などと違って、市場で決まっている現状の石油や穀物などの商品価格上昇を緩和する政策は市場経済の効率性を損なうリスクがあることを認識すべきです。石油を例に取れば、グローバル経済の中で、石油にこれだけの価格がついているということは、新興国などでこの価格の石油を使ってもなおペイする産業が存在するわけですから、この価格の石油を使ってはペイしない産業や企業は、厳しいですが、市場からの退場を促されていると考えるべきです。これらのペイしない産業や企業に対して、従来通りの価格に近い価格で石油を使ってもらおうとするのはムダ以外の何ものでもありません。高価格をつけているにふさわしい使い方がなされるべきです。政府の政策によって延々と安い石油を供給されなければ生き残れない産業や企業の保護に走っては産業調整や企業の淘汰が進まず、逆に、効率性の高い企業や産業の成長が妨げられて、ダイナミックなグローバル市場経済の効率性を損なう恐れがあります。繰返しになりますが、価格補填するよりも、所得保障のほうがマシだと私は考えています。

私は第1のポイントに対しては、ホントの需要不足に際して財政政策の必要性と有効性を否定しようとは思いませんが、第2のポイントはより重要で、市場経済の根幹に関わる問題だと思っています。この反対で、市場経済に抗して長々と100年近く実験したのがソ連の社会主義経済であったと私は考えています。ですから、現在の世界でも市場の価格に逆らうような政策が20-30年くらいはサステイナブルな可能性があるんですが、今の日本でこの種の市場価格を歪めるような政策は取るべきではないと言わざるを得ません。

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