欧州の景気後退はどの機関が認定するのか?
一昨日、8月14日に欧州統計局 (Eurostat) から欧州の4-6月期のGDP成長率がユーロ圏で▲0.2%、ユーロに参加していない諸国を含めた EU27 でも▲0.1%とマイナス成長になったと発表されました。記者発表資料はコチラです。主要国では、ドイツが▲0.5%、フランスとイタリアが▲0.3%とマイナス成長を記録したほか、英国がプラスながら+0.2%、スペインも+0.1%と大幅に成長率が減速しています。
私は日米経済はともに昨年10-12月期をピークに景気後退局面に入ったと考えていて、実は、欧州経済についてはよく知らなかったりするんですが、欧州も景気後退局面に入っているとの観測も流れ始めています。しかし、"Wall Street Journal" のブログサイトのひとつである "Real Time Economics" の昨日の記事で、"Is There Anyone to Make Euro Zone's Recession Call?" と題して、ユーロ圏の景気局面や景気日付を判断する主体はどこか、と疑問を呈しています。
欧州経済のマイナス成長は、通貨統合前の1995年に現行方式で統計を取り始めてから初めてだそうです。確かに、1999年にユーロ圏が成立してから一貫して景気拡大局面が継続して来たんですが、景気は循環するものですから、景気後退局面がそろそろ来てもおかしくはありません。日米両国では景気局面や景気日付を判断する主体はハッキリしていて、米国では NBER 、日本では内閣府、すなわち政府です。欧州の政府に相当する機関は欧州委員会 (EC) ですが、"Real Time Economics" の記事によれば、"Calls to the European Commission, the European Union's executive arm, drew only shrugs." だそうです。肩をすくめて困惑の表情、といったところでしょうか。もちろん、欧州中央銀行 (ECB) や欧州統計局 (Eurostat) は明らかに違うと思います。
私は、大学での教育の方は日本経済論を担当する一方で、研究の方は景気循環に取り組もうと考えていて、大学に採用される折には状態空間表現したモデルをカルマン・フィルターで解いてGDPギャップを計測したペーパーなんかを提出したりしたんですが、ひょっとしたら、日本の2004年から2005年にかけての踊り場局面を景気後退と認定してくれた OECD の先行指標を頼りにしなければならないのかもしれません。でも、今月8月8日に発表された最新のリポートでは、上のグラフに見られるように、今世紀に入ってから OECD は長らくユーロ圏が景気後退局面にあると認定していて、ホンマかいな、と思わないでもありません。悩ましいところです。
阪神タイガースの選手の試合後のインタビューで頻出し、ごく一部に流行った「必死のパッチ」で取り組んだおかげで、何とか後期の教科書やシラバスの目途もついて、ややヒマにしている週末に、いかにもヒマな話題でした。一応、経済評論の日記に分類しておきます。
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