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2008年8月21日 (木)

貿易統計と新興国経済減速の損得

今日、財務省から貿易統計が発表されました。金額ベースで、輸出が前年同月比+8.1%増の7兆6321億円、輸入が+18.2%増の7兆5410億円となり、差引きの貿易黒字は▲86.6%減の911億円と、先月に続いてほぼゼロとなっています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

財務省が21日発表した7月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた輸出超過額(貿易黒字)は前年同月比86.6%減の911億円となり、5カ月連続で前年を下回った。輸入額が原油価格の上昇を背景に、18.2%増の7兆5410億円に膨らんだ。輸出額は8.1%増の7兆6321億円。中国向け輸出が大きく伸び香港、マカオを除く対中輸出額が対米輸出額を戦後初めて上回った。
アジア向け輸出は12.7%増の3兆8567億円と、前月に引き続き過去最高を記録。増加は2002年3月以降、77カ月連続となった。このうち中国向けは16.8%増の1兆2864億円。軽油が引き続き伸びたほか、電子部品、鉄鋼なども寄与した。
米国向け輸出は11.5%減の1兆2763億円。大型乗用車などが落ち込んだ。EU向け輸出は4.1%増の1兆312億円。中型乗用車が回復し、電子部品なども伸びた。

昨今の商品市況の状況ですから、輸入や貿易収支の動向に私の興味はなく、ここ数ヶ月間一貫して輸出に注目していることはこのブログでも表明している通りです。もっとも、上に引用した新聞記事にあるように、対中国輸出が対米国を上回ったとか、二国間貿易の動向には大きな興味はありません。ということで、輸出の動向はいつも財務省の記者発表資料から取っているんですが、今夜のエントリーでは2000年1月以降のグラフを書いてみました。下の通りです。縦軸は前年同月比伸び率で、緑色の折れ線グラフが金額ベースの前年同月比増減、積上げの棒グラフのうち、赤い部分が数量の寄与度、青い部分が価格の寄与度です。

輸出の推移

上のグラフから明らかな通り、2001年から2002年にかけての前回の景気後退局面では数量に引っ張られる形で輸出が大きくマイナスに落ち込んでいるのが読み取れます。2004年後半から2005年の踊り場局面でも、マイナスにはなっていませんが、同じように輸出の伸びが大きく低下しています。少なくとも前月の統計データを見る限り、足元の貿易統計も前回の景気後退局面と同じようにマイナスに突っ込みそうな勢いだったんですが、7月の結果は市場の事前コンセンサスでは金額ベースで+5%増くらいだったところ、これをかなり上回ったと受け止められています。しかし、基調として輸出の減速は上のグラフからも確認されるところです。
二国間貿易の動向は大きな興味はないと書きつつも、今夜のエントリーの主眼に必要なので、もう少し詳しく地域別の輸出数量の前年同月比を見ると、米国向けが▲3.4%と4-5月の2ヶ月のみプラスに転じた他は、この1年以上に渡って一貫してマイナスを続けています。欧州向けも6月の▲16.7%減からの反動もあって、7月は+0.8%増と増加に転じましたが、4-6月の3ヶ月はマイナスを続けましたし、最近の経済指標を考え合わせても、しばらくは減少が続くと考えても不思議ではありません。注目すべきはアジア向けで、6月は+3.2%増と急減速したんですが、7月は+11.7%増と再び2桁を回復しました。新興国は先進国経済の景気後退や減速に従って、ゆるやかに景気をシンクロさせると私は考えていたんですが、今日発表された日本の貿易統計はこの私の考えをサポートしていないように見受けられます。
基本的な考え方としては、今週月曜日のエントリーで示したように、イラクの供給制約は別として、現在の資源高の商品市況は需要面では新興国需要が限界的に牽引していると私は考えていますので、新興国が先進国経済からデカップリングされて高成長を続ければ資源高は終わりません。日本の景気にはマイナスです。価格効果と呼ぶことが出来ます。しかし、新興国が高成長を続ければ日本からの輸出は堅調に推移します。所得効果と呼んでおきましょう。通常、多くの分野の経済学では価格効果よりも所得効果の方が大きいような気がするんですが、もちろん、それぞれの経済構造に従った弾性値に依存するものの、今回の日本の景気後退局面だけは所得効果のプラスよりも価格効果のダメージの方が大きいかもしれないと私は直感的に感じています。新興国経済が減速する所得効果のマイナスよりも、資源価格が低下する価格効果のプラスの方が大きいんではないかと感じているわけです。フォーマルに計測したわけでもなければ、何の根拠もありません。それはともかく、7月の貿易統計を見る限りは新興国の経済減速はもう少し先の話のような気がします。単にラグが長いだけかもしれません。単純に輸出が堅調だというだけでなく、日本経済の先行き見通しには、そんなに有り難くない話なのかもしれない可能性があります。

さて、経済の話題はこれくらいにして、オリンピックのソフトボール決勝が始まっています。日本の先発は今夜も鉄腕上野投手です。昨日、延長戦2試合21イニングス318球を投げてなお今夜のピッチャーサークルに上がります。

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