機械受注統計をどう見るか?
本日、内閣府から7月の機械受注統計が発表されました。民需の船舶と電力を除くコア機械受注と呼ばれる指標は前月比▲3.9%減と、▲4%程度を見込んでいた市場の事前コンセンサスにジャストミートしました。内閣府では基調判断を「弱含んでいる」に据え置いています。3月からずっとこのままだという気がします。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどに関する記事の最初の2パラだけを引用すると以下の通りです。
内閣府が11日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.9%減の1兆428億円となり、2カ月連続で減少。このうち製造業は10.4%減、非製造業は2.4%減だった。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額は4.7%減だった。
7月の受注実績(民需)の内訳をみると、製造業では15業種中8業種が減少し、特に造船業(前月比67.0%減)や石油・石炭製品工業(23.2%減)などで落ち込みが目立った。一方、船舶・電力を含めた非製造業全体では7.4%減。8業種中4業種が減少しており、運輸業(43.8%減)や通信業(22.9%減)などが落ち込んだ。
いつものコア機械受注のグラフは以下の通りです。左軸の単位は兆円、青い折れ線が毎月の季節調整済系列で、赤が後方6カ月移動平均です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近は私の勝手な判断で昨年2007年10月をピークとしています。
今日の機械受注統計だけでなく、業界団体から発表されている最近の工作機械受注や産業機械受注も含めて、マイナス傾向がはっきりしてきたように感じます。これらの統計データはいうまでもなく GDP の設備投資の先行指標ですから、私の直感では来年2009年年央から秋口くらいまでは設備投資の減少が続く可能性が高いように見受けられます。
上のグラフはコア機械受注で除かれている外需をプロットしたものです。コア機械受注と同じで、左軸の単位は兆円、青い折れ線が毎月の季節調整済系列で、赤が後方6カ月移動平均です。景気後退期の影の付け方も同じです。もちろん、輸出向けですから国内の設備投資の先行指標にはなりませんので、そんなに注目されないんですが、海外の経済動向を知る上で参考になりますし、コアに2四半期ほど先行する経験則もあります。まず、一見して分かるのは、コア機械受注が名目であるにもかかわらず、ここ2年間でほぼ1兆円の周辺で推移しているのに対して、外需は昨年までの景気拡大局面で以前の5000億円レベルから一気に倍増したことです。細かい仕向け地別は見ていませんが、新興国の力強い経済成長を反映している可能性を指摘しておきたいと思います。しかしながら、日米経済の景気後退局面入りと同時に、減少傾向がコア機械受注よりも鮮明になっています。繰返しになりますが、経験的に、機械受注の外需はコアに2四半期ほど先行しますので、GDP ベースの設備投資も来年年央から秋口くらいまでマイナスが続く可能性があります。
あえて明るい面を見出そうとすれば、ボリューム的には小さいんですが、、原動機や鉄道車両の受注が総じて好調を維持しています。商品市況の高騰の中でも相対的に影響の大きい原油価格上昇により、原子力発電や鉄道への需要シフトをもたらしつつある可能性が指摘できます。もちろん、ボリュームが小さいですから、原油高の影響をモロに受けている運輸や造船からの受注がほぼ半分近くに減少している今の段階では、設備投資の減少を押し止めるだけのパワーはないものと考えられますが、直接的なエネルギー代替需要だけでなくエネルギー効率の優れた機械への代替需要がこれから増加する可能性も十分あります。
フォーマルな分析なしにグラフのシェイプだけでモノを言うのは危険なことを承知しつつも、ついついやってしまうんですが、コア機械受注のグラフを見る限り、やっぱり、今回の景気後退は浅くて長い気がしています。
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