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2008年10月30日 (木)

明日の日銀金融政策決定会合のポイントは何か?

日米欧の政策金利の推移本題の日銀に入る前に、すでに広く報道されていますが、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) が公開市場委員会 (FOMC) を開催し、50ベーシスの利下げを実施して、政策金利である FF レートを1%ちょうどに引き下げることを決定しました。左のグラフの通りです。なお、このグラフは 毎日新聞のサイトから引用しています。50ベーシスを超える大幅利下げもあり得るとの私の予想は外れました。悪しからず。いつもながら短い FOMC のステートメントを読むと、経済の現状認識について "The pace of economic activity appears to have slowed markedly, owing importantly to a decline in consumer expenditures." で書き始め、政策対応について "The Committee will monitor economic and financial developments carefully and will act as needed to promote sustainable economic growth and price stability." で締め括っています。当然ながら、多くのエコノミストやいわゆる FED ウォッチャーなどは、追加利下げに含みを持たせたものと解釈しています。当然です。しかしながら、NY の株式市場はで50ベーシスの利下げは織込み済みとして、昨日のダウ平均株価は下げて終わりました。

ということで、話を明日に開催される日銀の金融政策決定会合とその際に利下げに踏み切るかどうかに戻すと、ノーマティブなべき論は別の話ながら、結論として、私は日銀は金利を引き下げ、来年に入ればゼロ金利政策が復活する可能性が高いと考えています。ブッラクアウト期間に入る前の絶妙のタイミングで、先日の日経新聞に金利引下げが検討されている旨が報じられてから、昨日と今日の市場の株価や為替の動きを見る限り、かなりの程度に金利引下げが織り込まれています。明日の会議で金利引下げを実施しなかったとすれば、日銀は市場との対話を完全に失敗したことになります。もっと細かく私の予想を敷衍すると、通常通りに、昼休み明けの1時そこそこに金利引下げを含むステートメントが発表されると考えています。もしも、1時に発表されなければ、市場では金利引下げがない可能性を考慮して、ジリジリと株価が値を下げたり、為替が円高に振れたりするでしょうし、市場が閉じた後の3時過ぎにでも金利引下げなしとの発表があったりすれば、為替は一気に円高が進行し、3連休明けの株式市場も混乱するのではないかと思います。さらに付け加えれば、与謝野財政金融担当大臣の「国際協調の象徴的な意味」との発言などもあり、市場とともに政府によっても金利引下げの外堀は埋められています。もしも金利据置きなら、日銀はカッコなしの市場との対話に失敗することに加え、カッコ付きの「政府との対話」にも失敗することになります。日銀には金利引下げの選択肢しか残されていないように私には見受けられます。しかも、ここで金利を引き下げれば、来年に入るともう一段の金利引下げ、すなわち、ゼロ金利政策が視野に入ると考えるのは自然なことでしょう。しかし、ノーマティブなべき論としては、少し留保をつける必要があるかもしれませんが、私は事実上の決着がついていると考えているので深入りはしません。でも、1点だけ、米欧中央銀行の協調利下げにも加わらなかった日銀が、こういった追い込まれた形での金利引下げを実施するんですから、日銀への信認や白川総裁のリーダーシップが大きく揺らぐ可能性を指摘しておきたいと思います。大きく揺らいでも、あと4年半の総裁ポストは安泰なんですから、私個人としては疑問を感じます。3代15年に渡って日銀総裁がハズレだと、日本経済の本格的な復活も望み薄かもしれません。

Federal Reserve Assets

金利は決着がついたと私は考えているので、もう1点だけ、私の興味の対象を取り上げると、当座預金への付利の問題です。これは10月6日に FED が始めたのに追随するものですが、やり方をよく考えないと逆に金融引締め的に作用するリスクがあることを私は主張したいと思います。そもそも、FED が必要準備と過剰準備 (required and excess reserve) の双方に付利を行う背景には、日本で1997年の三洋証券の破綻の際に生じたような大規模なデフォルトこそ生じていませんが、米国において銀行間取引のリスクの高まりから銀行間での資金の流れが滞ったため、短期資金の流れを銀行間取引から一度連銀が準備預金という形で吸い上げて、その資金を連銀貸出しにより民間銀行に戻すという目的があります。しかし、それだけでは資金の流れが代替されたとしても流動性の拡大は生じませんから、10月6日の発表文にもある通り、Term Auction Facility (TAF) などの各種の流動性供給手段の拡大を同時に行っています。この結果、FED による流動性供給は大幅に増加し、バランスシートも急激に拡大しています。これを図示したのが上のグラフです。もっとも、これは準備預金への付利が始まる前の10月1日時点のものです。もちろん、その後、さらに拡大していることと考えられます。黄色の ML や紫色の AIG への資金貸出しが入っているのはご愛敬ですが、先ほどの TAF や通貨スワップをはじめとして、びっくりするようなバランスシート拡大が見られます。このグラフはアトランタ連銀の "macroblog" の10月7日、すなわち、FED が準備預金への付利を発表した翌日にアップされた、その名も "Why is the Fed Paying Interest on Excess Reserves?" と題するエントリーから引用しています。私が簡単に要約してしまいましたが、より詳しくはこのブログのエントリーを読むことをオススメします。なお、どうでもいいことですが、20年ほど前に私が FED の本部でリサーチアシスタントをしていたころは、FED には定冠詞を付けない風習だったんですが、現在のアトランタ連銀では定冠詞を付けているようです。
一応、FED の準備預金への付利に関する解説を終えて、日銀の当座預金への付利に目を転じます。なお、念のためですが、FED の準備預金と日銀の当座預金は同じ概念です。第1に、私の目に問題として映るのは政策金利の下限を制約する恐れです。当然ながら、銀行間のコール金利である政策金利は当座預金に付与される金利を下回ると意味をなさなくなります。これは日米ともに共通するんですが、ゼロ金利が視野に入りつつある日本では特に引締め的、あるいは緩和策の効果を減じる方向での期待形成につながる恐れが大きいと私は感じています。第2に、民間銀行が当座預金を増加させるインセンティブが大きくなる一方で、かなりの低い水準の金利の下では、同じ資産項目である貸出しが相対的なインセンティブを低下させるリスクがあります。非常に可能性は低いと思いますが、運用を誤れば、民間銀行の貸渋りや貸しはがしを助長して当座預金に積む方が優先される恐れすらあります。これも日米共通ですが、米国に比較して金利の絶対水準が低い日本でより大きなリスクと考えるべきです。第3に、当座預金への付利はあくまで資金の流れをインターバンクから中央銀行経由の貸出しにシフトするだけですから、まさに FED が実施しているような中央銀行のバランスシートの拡大が伴わなければ流動性の供給増加という実効が上がりません。現行では毎月1.2兆円の長期国債の買切りオペが実施されていますが、これをさらに増加させるか、FED のように新たな資金供給手段を開発しなければ、単なるマネッコで終わって何の効果もないことになります。

明日の日銀の金融政策決定会合について、少し前まで、世間的な注目は日銀が展望リポートで経済見通しをどこまで下方修正するかに集まっていたんですが、日経新聞の報道に合わせて金利引下げがアジェンダに上るようになりました。金利引下げはここ2-3日の動きで私は決着してしまったと考えています。もうひとつ、特段の注目を集めていない当座預金への付利についても、一介の地方大学の教授である私の理解くらいは、かなり best and brightest に近い日銀スタッフは認識していることと思いますが、一応、政策委員会の前日のタイミングで私なりの見方と意見を表明しておきます。先日から主張しているように、日銀がどこまでメゾスコピックな思考から離脱するかもひとつのポイントかもしれません。

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