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2008年10月24日 (金)

未曾有の金融危機に必要な財政政策の視点とは?

金融危機の連鎖が止まらず、今日の東証日経平均株価も大きく下げ、バブル後最安値の水準に迫っています。先月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻などの際の9月15日付けで「未曾有の金融危機の始まりか?」と題するエントリーをこのブログにアップしましたが、どうも、ホントにそうらしい様相を呈して来ました。昨日のエントリーで書いたように、日本の場合は世界的な金融危機によるダメージが相対的に小さいと見られているだけに、円資産に買いが入る形で円高が進行して、結局、世界同時不況に陥ってしまっている気がします。従来から私が主張している通り、中国などの新興国の景気も決してデカップリングすることなく、先進国とともに減速の局面に入っているように見受けられます。私の直感的な印象では、それでもまだアジアは傷が浅い方で、東欧のダメージが大きくなっている気がします。その最大の原因は欧州と日本の景気後退の深さの差にあります。つまり、欧州よりも日本の方が相対的に景気後退の深さは浅いと見られます。私は従来から今回の日本の景気後退局面は浅くて長いと主張して来ましたが、私の予想に比べれば随分と深いものの、欧州に比較すればマシなのかもしれません。その反対側で、商品市況、特に原油は大きく下げており、半年足らず前のピークの半分にも満たない価格で取引されています。かなり前に、シンクタンクのエラいさんで、原油高への対策として円高推進を唱えた人を、私はとんでもない謬論であると指摘しましたが、この金融危機の中で原油価格が下がり円高が進行すれば、これに類似した新手の「トンデモ経済学」が出て来るかもしれません。私自身も反省して我が身を振り返ると、先月の麻生総理大臣就任の際に、財政拡大路線に疑問を呈しましたが、米国の連邦準備制度理事会 (FED) の前の議長を務めていたグリーンスパン氏も米国議会下院の公聴会で金融機関に対する規制が不十分だったとの過ちを認める発言をしたそうですし、コトこのような状況になったのであれば、金融政策で対応する通常の景気循環の限度を超えており、財政出動もやむを得ないのかと私も考えを修正しつつあります。
ただし、財政出動するとしても忘れてならない観点は、生産要素の移動性を高めることです。私がもっとも警戒するのは、かつての「日本列島改造論」のように、地方や中小企業などに財政資金をばらまいて、ヒト、モノ、カネを一定の産業や地域に張り付けておくような政策は避けるべきだと考えています。最近のもっとも顕著な好例は郵政民営化です。根本的な理念や最近の動向はともかく、郵政民営化により資金の流れが大きく変わり、2005年半ば以降、株価も上がれば景気もよくなったのは経験済みです。もっとも簡単にモビリティを上げられる資金の部分で大きな政策転換を経験しましたが、移動性の低い資本設備についても時間を通したダイナミックな立地転換を促進するような、また、労働資源についても地方間や産業間の移動が容易になるような政策が模索されるべきです。やや笑い話の領域かもしれませんが、人跡未踏の地域に定住の促進を含めて大規模な公共事業を行って首都を移転することもひょっとしたら一案にならないとも限りません。1930年代の米国のテネシー川流域開発を大規模にしたみたいなものです。実現性はともかく、何らかの頭の体操にはなりそうな気がします。要するに、もしも財政出動するとしても、現時点で苦しい産業や地域にそのまま生産要素を張り付けておくのを補助するようなバラマキではなく、まったく別の産業や地域に生産要素が流れるような財政資金の投入を考えるべきだと私は考えています。

実に、大恐慌以来、ほぼ100年に1度の経済の混乱期を目の当たりにすることが出来て、エコノミストとして幸運なのか不幸なか、私にはよく分かりませんが、経済政策当局の実力が試されているような気がしてなりません。

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