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2008年11月13日 (木)

原油価格は上がるのか、下がるのか?

約3か月前の8月18日付けのこのブログのエントリーで「商品市況の先行きをどう見るか?」と題して、原油価格を中心に商品市況は低下に向かうと見通しましたが、実際に、NY 市場の指標となる WTI 価格が激しい勢いで下落しています。一時はバレル当たり145ドル近辺に上昇していたものが、直近では60ドル周辺で取引されています。ほぼ昨年年初の水準まで低下したことになります。もっとも、5年くらい前までは25-30ドルの水準でしたから、これでもまだ高いといえなくもありません。まず、最近2年間の原油価格のグラフは以下の通りです。WEB 上のサービスで描いています。

原油価格の推移

原油価格が大きく低下したのは、実物面で、先進国の景気後退のみならず、中国をはじめとする新興国でも景気が減速し、世界的な景気の停滞から原油に対する需要が低迷しているところに加え、産油国側でも OPEC などで減産に関する足並みがそろわず、需給が緩和していることが基本的な理由です。もちろん、原油を資産として捉え資金が流入したことも、原油価格を引き上げる一因でしたので、現状では、世界的な金融危機による流動性不足から、原油に流れていた資金が逆流している面もあります。ホンの少し先に視点を移すと、これも8月18日付けのエントリーで取り上げた通り、大統領就任後16カ月でのイラク撤兵を公約に掲げたオバマ上院議員が米国大統領選挙に圧勝し、米国のイラク撤兵が大きく現実化に向けて進み始めています。今年年央に原油価格がピークであった時でさえ、イラクが原油増産に踏み切ればかなりの程度に供給不足は解決するとの見方も根強く、米国のオバマ次期大統領の来年1月の就任は原油需給に対する緩和要因であることは確かです。目先の原油価格について、唯一値上がりする可能性があるのはドル為替の下落ですが、少なくとも、我が国にとってはドルの下落以上に円が増価するでしょうから、ドル建てで原油価格が上昇したとしても、国内向けの円建てでの原油価格には影響はほとんどないものと考えられます。

それでは、この先も原油価格が下がり続け、5年前のバレル当たり25-30ドルのレンジに戻るのかというと、そうは考えられません。昨日、国際エネルギー機関 (IEA) から「世界エネルギー見通し2008」"World Energy Outlook 2008" が発表され、2030年にはバレル当たり200ドルを超える可能性が指摘されています。基本的には、原油開発に対する投資が不足して供給不安がある一方で、中国をはじめとする新興国のエネルギーに対する根強い需要が価格を押し上げるものと想定されています。以下では、IEA の記者発表資料からいくつかグラフを紹介します。

World primary energy demand in the Reference Scenario

まず、上のグラフの通り、世界のエネルギー需要は今後も拡大を続けます。上のグラフの縦軸の単位は Mtoe (million tons of oil equivalence)、すなわち、石油換算の100万トンです。石油に対する需要は今後もコンスタントに増加を続けますし、特に、今世紀に入ってからの石炭に対する需要が大きく高まっている点が注目されます。茶色い部分です。明らかに、世界の工場となった中国における石炭需要が大きな部分を占めています。

Change in oil demand by region in the Reference Scenario, 2007-2030

エネルギーを石油に限っても、中国は石油消費を増加させると IEA では予測しています。上のグラフは、2007年から2030年にかけて、石油需要の地域別の増減を示しています。先進国で構成される OECD 諸国が軒並み石油に対する需要を2007年から2030年の23年間で減少するのに対し、途上国や新興国では増加が予想され、特に、インド、中東、そしてどこよりも中国で大きな石油需要の増加が見込まれています。横軸の単位 mb/d は1日当たり100万バレルです。

World oil production in the Reference Scenario

これらの需要の増加に対して、供給は非常に心もとない状態が続いています。上のグラフは石油の供給元に関して、日量100万バレル単位で示されていますが、黄色の液化天然ガスが増えるのはともかく、青の部分の既存油田の供給量はすでに下降局面に入っており、将来にわたっては、水色の部分の未開発あるいは未発見の油田に頼らねばならない状態です。

これらのエネルギー見通しを踏まえて、IEA では産油国などに対して原油供給に対する適正な水準での投資を呼びかけるとともに、消費国に対して代替エネルギーの開発などを要請しています。地球温暖化対策への配慮が盛り込まれていることは言うまでもありません。

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