"Economist" の風刺マンガで1年を振り返る
昨日は漢字能力検定協会の「今年の漢字」から1年を振り返りましたが、今日は、"Economist" の風刺マンガから、今年を振り返りたいと思います。まず、そのものズバリで "The world this year" と題した記事があります。最初のキーワードは "global financial crisis" だったりします。もちろん、オバマ時期米国大統領や話題になった北京オリンピックの聖火リレーの記事や写真なんかもあります。また、11月には "The World in 2009" というタイトルの特集版も出版されています。なお、今夜、引用した風刺マンガには引用元の記事へリンクを張ってあり、クリックすれば別画面で引用元の記事が開くように設定してあるつもりです。
まず、上の画像を引用した記事のタイトルは "The bucks stop here" です。まあ、今年の米国経済はこんなカンジですかね。さらに、経済的にも軍事的にも世界で唯一の超大国となった米国ですから、米国だけに止まらず、世界各国が同じような経済状況なんだと思います。このマンガは地域的に米国に着目しているんですが、同じように、産業的に金融業界に着目して、金融機関がドミノ倒しになっているマンガも、やっぱり、"Economist" の "The World in 2009" の中の "No end of trouble" という記事に掲載されています。
歴史の教訓として、1929年12月の米国株価の大暴落に端を発する大恐慌では、世界がブロック経済化した挙句に近隣窮乏化政策に走って自由貿易の利益が失われ、最終的には戦争に行き着きました。経済政策のあり方が戦争につながる原因の一端を担ってしまったと私は考えています。ですから、金融政策や為替政策を近隣窮乏化政策のように運営することは経済政策として避けるべきであると12月17日と19日のエントリーで立て続けに取り上げましたし、自由貿易に対して保護主義を求める方向に傾くきらいのある政治的な方面からの意見にエコノミストが適切に対応することが重要だと考えています。今週号の "Economist" も私と同意見のようで、"Fare well, free trade" と題する記事では上のマンガが掲載されています。WTO 交渉にひとまとめにされ、金融動向に比較して、その他の話題として等閑視されがちですが、実は、貿易政策はこの時期にもっとも重要な政策課題の一つと私は考えています。なお、12月22日付けの「溜池通信 vol.407」にもこの記事が取り上げられていて、日本語の抄訳が読めます。
最後に、"Economist" から離れて、同じ英国のメディアということで、昨日付けの "Financial Times" の解説記事のマンガは上の通りです。タイトルは "What we will remember from 2008" で5点のマンガが組み込まれていますから、今年の5大ニュースの代わりなのかもしれません。単純に、左からリーマン・ブラザーズ証券、オバマ時期米国大統領、140ドルの石油価格、北京オリンピックとロシアのグルジア介入です。ロシアがグルジアに軍事介入した最後のニュースは経済に何の関係もないと考えられがちですが、実はそうではありません。天然ガスだか原油だかのパイプラインが注目されがちな一方、知る人ぞ知るで、グルジアは通貨をドルペッグしており、金融政策的には米国に追随する部分が少なくないことを知るエコノミストもいます。でも、私はグルジアの通貨の呼称を知らなかったりします。見落としている可能性は否定しませんが、少なくとも日本のメディアはこの国際金融の観点からの記事を私は見かけませんでした。自由貿易に基づく交易の利益の喪失から戦争に進む道は言うまでもありませんが、国際的に複雑に絡み合った経済や金融は政治や外交とは無関係ではあり得ません。
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