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2008年12月17日 (水)

FOMC Statement を読み解く

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) の連邦公開市場委員会 (FOMC) が閉幕しました。昨夜のエントリーでも取り上げましたが、結局、米国の金融政策はゼロ金利と量的緩和に突き進むようです。政策金利である FF レートは0-0.25%のレンジに引き下げられ、政府機関債や住宅ローン担保証券を大規模に買い入れてたりして、さらにバランスシートを拡大すると宣言しています。実態的に、FF レートは0.1%台まで低下しており、バランシスシートの大幅な拡大ですでに量的緩和に入っているのは明らかですから、FOMC でこれらの実態を追認したものと私は受け止めています。このブログでは、先週12月11日付けのエントリーなどで FED のバランスシートや市場での実勢取引の FF レートなどをグラフで示して来ましたので、今夜のエントリーでは、昨日の FOMC Statement を読み解きたいと思います。まず、とっても長くなりますが、FED のサイトから FOMC Statement の主要な部分を引用すると以下の通りです。

The Federal Open Market Committee decided today to establish a target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent.

Since the Committee's last meeting, labor market conditions have deteriorated, and the available data indicate that consumer spending, business investment, and industrial production have declined. Financial markets remain quite strained and credit conditions tight. Overall, the outlook for economic activity has weakened further.

Meanwhile, inflationary pressures have diminished appreciably. In light of the declines in the prices of energy and other commodities and the weaker prospects for economic activity, the Committee expects inflation to moderate further in coming quarters.

The Federal Reserve will employ all available tools to promote the resumption of sustainable economic growth and to preserve price stability. In particular, the Committee anticipates that weak economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for some time.

The focus of the Committee's policy going forward will be to support the functioning of financial markets and stimulate the economy through open market operations and other measures that sustain the size of the Federal Reserve's balance sheet at a high level. As previously announced, over the next few quarters the Federal Reserve will purchase large quantities of agency debt and mortgage-backed securities to provide support to the mortgage and housing markets, and it stands ready to expand its purchases of agency debt and mortgage-backed securities as conditions warrant. The Committee is also evaluating the potential benefits of purchasing longer-term Treasury securities. Early next year, the Federal Reserve will also implement the Term Asset-Backed Securities Loan Facility to facilitate the extension of credit to households and small businesses. The Federal Reserve will continue to consider ways of using its balance sheet to further support credit markets and economic activity.

まず、FF レートの誘導目標をレンジにしたことについては、スイス国立銀行などの例もありますが、基本的には、決済で一定の役割を果たしている MMF の元本割れによる取付けの防止と解釈すべきです。これも、すでに11月7日付けのこのブログのエントリーで論じていますが、日銀がやったようなホントのゼロ金利を米国で行うと、MMF の信託報酬などの運営コストが確保できずに元本割れを起こして取付けが殺到する可能性があります。米国における MMF は日本の MRF と同じように決済機能があり、決済にどの程度の比率を占めるかは知りませんが、少なくとも残高では米国で3-4%ありますから、MMF による決済が滞らないように配慮する必要があります。日本のようにまったくと言っていいほど MRF を決済に使わない国とは違います。ですから、ココロはゼロ金利に向いているとしても、米国でベタのゼロ金利は不可能です。でも、日銀スタッフや日銀に近いエコノミストなんかは「ゼロ金利ではない」という点を強調することと思います。そのあたりを理解した上で、いろんな論調を見ると新しい発見があるかもしれません。

'Helicopter Ben' confronts the challenge of a lifetime

多くのメディアやエコノミストが注目しているのは、最初のパラの金利引下げとともに、おそらく、5番めのパラの最初のセンテンスで、FED のバランスシートを高水準に維持して金融市場機能のサポートと景気刺激を行うと、量的緩和を宣言している部分なんだと思います。上のマンガの通りで、「ヘリコプター・ベン」とも「ケチャップ・ベン」とも揶揄されるベーナンキ FED 議長が貨幣をばらまいて、金利を下げています。なお、このマンガは "Financial Times" のサイトから引用しています。しかし、最初に書いた通り、金利も量的緩和も実態を追認したものに過ぎません。明示的にアナウンスする効果はあろうと思いますが、モノの分かっている市場参加者の間では大きなサプライズではあり得ないと私は思っていました。でも、NYダウも東証の日経平均も上げましたから、かなり分かっていない可能性はあります。
では、何を読むべきかというと、先に引用した FOMC Statement の中で青字にしておいた部分です。2か所あります。まず、最初の方は "to promote the resumption of sustainable economic growth and to preserve price stability" です。"resumption" ですから、すでに "sustainable economic growth" ではない状態に入っているわけで、さらに、"preserve price stability" と続きますから、物価安定が危ない状態になっていると FED が認識していることになります。前回、10月29日の FOMC Statement では "preserve" という語は入っていませんでした。誰がどう考えてもインフレが高進する恐れではなく、念頭にあるのはデフレです。バーナンキ FED 議長が「ヘリコプター・ベン」とか「ケッチャップ・ベン」とか呼ばれたのは、FED 理事だったころに日本のデフレに対してヘリコプターから紙幣をまいてでも通貨を供給し、買うものがないと反論した日銀スタッフに対しケチャップを買ってでも貨幣を供給するべき、と発言したらしいところから由来しているといわれています。もちろん、私がこれらの発言を直接確かめたわけではありません。言うまでもなく、経済の先々の目標は安定的な経済成長なんでしょうが、目先の話としてデフレ回避に重点が置かれていると解釈すべきです。この観点からは、ヘリコプターで貨幣をバラまくような通貨供給の増加は正しい金融政策であると私は考えています。しかし、私が接した情報の中では、この点を理解している日本のメディアやエコノミストは少なかったように感じました。諸外国では、先に引用した「ヘリコプター・ベン」のマンガを掲載した "Financial Times" のサイトの解説で触れられていたり、"New York Times" の "Reactions to the Fed's Rate Cut" と題するサイトで、クルーグマン教授が "liquidity trap" に言及していたりします。最後に、2番目の青字の点は、for some time とやや不明瞭かつ期間不明ながら、いわゆる時間軸効果が盛り込まれたことです。この点は国内でも、少なくともエコノミストの間では気付いている向きも多かったようです。

さて、明日から日銀の金融政策決定会合が始まります。数年前にモロにデフレに陥って金融政策の無策振りを世界に明らかにした我が国の金融政策当局はどのような決断をするんでしょうか。もしも、ホントに無策なら、日本が年末年始休みに入っている間に円相場が急騰することも考えられるかもしれません。それにしても、結果としてながら、近隣窮乏化政策みたいな金融政策の運営を早く終わりたいのは各国に共通しているような気がします。

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