子供達がポケモン・カードゲームで遊ぶ
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我が家では朝日新聞を購読しています。私が子供のころからそうでした。亡くなった私の父親は、テレビは NHK 、新聞は朝日新聞、書物は岩波書店が信頼できると考えるタイプの人間でした。何となく、私も理解できる気もしないでもありません。日経新聞や産経新聞は一般紙ではないという見方もあり得ましょうから少し別にして、いわゆる全国紙の3大紙の中で考えるとすると、毎日新聞はデフレの時の論調がエコノミストとしては読むに堪えませんでしたし、読売新聞はジャイアンツ中心のスポーツ記事が論外ですから、消去法でも朝日新聞が残るのかもしれません。ですから、青山の家に戻って、帰宅の日から2-3日さかのぼったりしながら朝日新聞を熱心に読んでいます。
最近の記事で目についたのは、東京・渋谷地区の再開発をめぐって三菱東京UFJ銀行が暴力団と関係が深かった関係者に地上げ資金を提供していたことで、これはネットで確認する限り、朝日新聞しか報じていないように私は見ています。昨日にアップした江上剛さんの『統治崩壊』を読むきっかけになった報道でもあります。記事にはほぼ毎回のように簡単な図解入りで報じていたりします。リンクは以下の通りです。
次に目についたのは、「若者顧みぬ政治に異議 - ルポにっぽん」と題したルポです。上のグラフもこのルポから引用しています。人口ピラミッドに投票数を重ね合わせたグラフで、私が従来から主張しているように、現在の政治が投票率の高い、カギカッコ付きの「大票田」である高齢者層に偏っていることをルポルタージュしたものです。非常に正しい方向からの取材だと思いますので、何点か、私が印象に残ったインタビュー内容を引用したいと思います。引用元の記事は、もちろん、上にリンクを張ったのと同じです。
私は年齢層の差に基づく、カギカッコ付きの「世代間戦争」を回避するために、高齢者に対して利己主義に基づく行動の自制を求めつつ、若年層に対してより積極的な政治参加を促して、両方から政治的なバイアスを是正したいとの立場なものですから、このルポはやや「世代間戦争」の雰囲気を煽りかねないと危惧するものですが、議論を始める方向としては基本的に正しいと考えています。高齢者の利己主義は議論が難しいように感じるんですが、最近では、若年層の投票率からみた政治意識は高まりつつあるように私は感じています。すなわち、下のグラフは財団法人明るい選挙推進協議会のホームページから衆議院議員選挙年齢別投票率の推移のグラフを引用していて、前回の総選挙では、元が低かったせいもあるんでしょうが、20代30代の投票率が他の世代に比べて大きく上がっています。高齢者に偏った政治のバイアスを是正するために、私は、この若年層の投票率が上昇している傾向に大きな期待を寄せています。
朝日新聞の記事としては、最後に、私の専門分野で、来年1月29日に内閣府が開催する景気動向指数研究会において、2007年10月が景気循環のピークと認定される見込みとの報道を見かけました。これも、ネットで見る限り、朝日新聞と日経新聞の報道しか見かけません。朝日新聞は「景気後退、07年11月から 内閣府が認定へ」と題した記事で、日経新聞は「景気の『山』は07年10月、内閣府判定へ 回復期、最長の69カ月」と題した記事です。私はすでに今月に入ってからも、何度かこのブログで日本の景気循環のピークについて触れていて、12月3日付けのエントリーで米国の NBER が2007年12月をピークとして米国経済が景気後退局面に入ったと認定したことを取り上げた際には、日本の景気後退局面入りは米国よりも1-2か月早いと書きましたし、12月18日付けのエントリーでは状態空間モデルを使って分析したペーパーに基づいて、勝手に2007年11月をピークと認定しています。内閣府の景気動向指数研究会が2007年10月のピーク認定であれば、私の実感や研究成果にほぼピッタリとフィットします。
ついでながら、朝日新聞から離れるんですが、国際通貨基金 (IMF) が財政政策に関するポジションペーパーを発表しました。"Fiscal Policy for the Crisis" なるタイトルで、サイトから pdf ファイルのリポートもダウンロードできます。金融システムの回復 (repair) から始まって、需要喚起策など、IMF が考える財政政策のあり方を論じている "IMF Staff Position Note" です。日本の麻生総理大臣流の財政政策は、これとは少し違うと感じないでもありません。
最後に、やや強引に朝日新聞とメディアつながりということで、右の画像は週刊ダイヤモンドの今週号、すなわち、来年2009年第1号の表紙です。このブログの11月18日付けのエントリーで取り上げたように、香西泰・宮川努・日本経済研究センター [編] になる『日本経済グローバル競争力の再生 - ヒト・モノ・カネの歪みの実証分析』(日本経済新聞社) を、私は今年のベスト経済書として上げておいたんですが、週刊ダイヤモンドの特集その2の2008年の『ベスト経済書』の38位に入っています。私の簡単な評が237ページに2行ほどで手短かに紹介されています。本学経済学部だけでも60人を超える教員がいる中で、選者の経済学者・経営学者・エコノミストのたった213人に私も入れていただいており、誠に光栄なことだと受け止めています。また、8月に長崎へ赴任してから、長崎ローカルのメディアにはテレビ・新聞ともいくつか出ましたが、全国メディアは初めてかもしれません。来年はもっとメディアへの露出を増やしたい気がしないでもありません。
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今日はまだまだ営業日のところも多いようですが、役所では12月28日が御用納めですし、大学に至ってはとっくに冬休みに入っています。と言うことで、私はのんびりと読書なんぞをしていて、江上剛さんの『統治崩壊』(光文社)を読みました。図書館で借りた光文社刊の単行本で読みましたが、文庫本でも出版されているようです。大日朝日銀行という架空の銀行の物語です。第一勧銀出身の著者らしく、銀行内部の描写は優れている気がします。小説の舞台となっている銀行は大日銀行と朝日銀行の合併でできたとの設定で、合併銀行にありがちな派閥抗争を中心に、不正融資に対する危機管理を描き切った作品です。副題が "Governance Crush" となっていて、通常、「崩壊」に充てられる "Crash" ではないのは、何かに押し潰されたというニュアンスなのかもしれません。書下ろしではないので、全6章がある程度、章ごとに完結している印象があり読みやすかったような気がします。ガバナンスですから、エコノミストとしては株主と取締役の関係を想像しがちなんですが、株主はとっても意外な形で最後の最後に出て来ます。相変わらず、主人公はスーパーマンです。私が以前から関心を持っているトップ・マネジメントとミドル・マネジメントの関係やあり方などについても、それなりに参考になる部分がありました。
派閥抗争については、合併後の銀行は言うに及ばず、『課長・島耕作』シリーズでもたびたび出て来て、私のような派閥にも入れてもらえないような下っ端にはうかがい知ることもできませんが、企業の力学では必須のアイテムなのかもしれません。昨夜まで3晩にわたって放送されていた、今年の大河ドラマ「篤姫」でも、篤姫が嫁いだ第13代将軍徳川家定公の跡目争いで、紀州派と一橋派の派閥争いがあったりして、それなりの大きな組織では常に起こり得ることなのかもしれないと思ったりしています。それから、ガバナンスについては、いわゆるプリンシパルとエージェントの関係に還元して考えるのが本来ですが、その関係は単純ではありません。すなわち、第一義的にはプリンシパルたる株主とエージェントたる取締役の構図なんでしょうが、実はこの先があって、取締役と従業員の関係では、ひょっとしたら、取締役がプリンシパルになって、従業員がエージェントになるような重層的な関係も成り立つのかもしれません。と言うのは、民間企業ではなく、国家レベルの政府について考えてみると、第一義的なプリンシパルは主権の存する国民であって、その国民の直接投票で選ばれる国会議員がエージェントなんでしょうが、政府の中では、国会議員から選出されることの多い大臣がプリンシパルになって、我々公務員がエージェントとなる関係が重要になる気もするからです。官僚主導から官邸や政治家主導への流れはこのラインに沿ったものと言うことも出来ます。
いずれにせよ、すべての人にオススメ出来るわけではありませんが、スラスラと読める面白い本でした。久し振りに、ネタバレなしの読書感想文でした。
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東京に帰って来て、青山の我が家の周辺を歩き回ります。まず、区立図書館に行って、冬休みの時間潰しに読む本を何冊か借ります。しかし、子供達からリクエストのあった新刊本はないので、これだけは、いつもの丸の内オアゾにある丸善に行って買い求めます。帰り道で少し早めに地下鉄を降りて、青山通り周辺を歩きました。
8月に長崎に赴任してから、そんなに時間がたったわけではないんですが、細かなところで変化も見受けられます。まず、南青山3丁目の交差点にあったハーゲンダッツが閉店していました。9月下旬に閉店したらしい張り紙があり、お近くの店は赤坂見附店だと案内してありました。私の記憶が正しければ、日本での1号店ではなかったかと思います。我が家もちょくちょく利用していました。それから、紀ノ国屋インターナショナルが創業の地に戻って再オープンしていました。しばらく、青山通りの南側の店舗で営業していたんですが、骨董通りとの交差点近くの北側に戻ったようです。11月5日から営業とありました。コチラはあまり買い物した覚えはありません。
細かな点では、AVEX ビルにあった旧住友銀行の支店が少し渋谷よりに移転していました。何という名称の支店名かは知りませんが、もちろん、現在では三井住友銀行になっています。ここの青山通り沿いの支店には知り合いが勤務していたことがあります。もとが関西系の銀行ですから、関西系の人間がいても不思議ではありません。それから、青山通り沿いではないんですが、表参道の交差点から根津美術館に向かう幸通り沿いのごく狭い範囲のランドマークになっているプラダのビルの脇の方で工事が始まっていました。今日は日曜日なので工事はお休みだったみたいです。かなり地下を掘っている様子でした。
冬休みに入って東京に戻って来て、本を読んだり出歩いたりします。
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本格的な冬休みに入り、当然ながら、私は自宅のある東京と大学のある長崎の間を往復するわけですが、東京に戻るに当たっては飛行機で帰宅します。私はそんなに鉄道ファンではないので、長時間かけて鉄道で東京まで帰る気はしません。飛行機は常に全日空 (ANA) を利用しています。別に深い考えはないんですが、私が航空会社として ANA を選ぶポイントはポケモンジェットです。ポケモンジャンボとか、ピカチュウジェットとか、ポケモンとピカチュウ、そして、ジェットとジャンボの 2x2 の4通りの呼ばれ方があります。wikipedia ではポケモンジェットの項目が見えます。下の画像を引用した元ページです。私も我が家の子供達もポケモンは大好きです。スタジオ・ジブリの作品とともに、日本を代表するアニメ文化だと考えています。ですから、可能な範囲で、ブログやメールアドレスも pokemon を取るようにしています。もっとも、大学のメールアドレスは氏名に即した文字列でなければならず、pokemon での申請は却下されましたが、大学のホームページ・アドレスは pokemon にしました。
ポケモンジェットは東京・大阪から札幌や福岡・那覇の便に多いと言われていますので、東京・長崎便に就航しているかどうかは全く知りませんが、ANA に乗り続けていれば、少なくとも、羽田か長崎かどちらかの空港でポケモンジェットを間近に見る機会は確率的に増えます。と言うことで、早速、今度、東京に帰って来た際に、羽田空港で私の搭乗機の隣に見かけました。飛行機の機種は全く自信がありませんが、実に、まったく上の写真と絵柄は同じでした。すなわち、wikipedia のポケモンジェットのページにアップされている画像と同じ絵柄でしたから感激してしまいました。私から見えたのは上の方の進行方向に向かって左側です。アチコチに各種のモンスター・ボールがあしらわれている中で、尾翼に大きなピカチュウがいて、このピカチュウに始まって、後ろから前への順で、ラティオス・ラティアスにジラーチ、ゴンベ、アチャモからアタック・フォルムのデオキシスと続いて、その前の3匹は乗降のためのローディングアームで隠れていたんですが、大きな赤と青の耳でおうえんポケモンのプラスルとマイナンはすぐに分かりました。私の好きなポケモンが続きます。しかし、一番前にチラリと見えていた緑色のは分かりませんでしたから、手近の CA さんに聞きましたが知りませんでした。ポケモンジェットを見たいがために乗っている私のような乗客もいるんですから、もう少し勉強しておいて欲しい気もします。帰宅した後、ネットで調べてセレビィだと知りました。下の方の写真の逆側は見えなかったんですが、ニャースやキモリなどのおなじみのポケモンが並んでいるようです。尾翼のピカチュウは左右どちら側でも同じみたいです。
長崎便には就航していないような気もしますが、そのうちに、見るだけでなく、ポケモンジェットに乗ってみたい気がします。乗ったからといって、「それがどうした」という気もしますが、私の効用関数のポケモンに対する偏微係数は普通の人よりも大きなプラスなんだという気がします。「お出かけの日記」に分類しておきます。
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少なくともブログについては、ほぼ完全に冬休みモードに私は突入していたんですが、今日は役所の御用納めで、年内最後の営業日かつ閣議日でしたので、いくつか重要な経済指標が発表されましたから、簡単に取りまとめておきたいと思います。失業率や有効求人倍率などの労働統計、鉱工業生産、消費者物価です。半年くらい前の原油価格がバレル当たり140ドルを超えていた時期くらいまでは、注目度合いが今とはまったく逆で、消費者物価の注目度が最も高かったんですが、現在では雇用情勢が最大の関心事になっているような気がします。NHK の朝の連続テレビ小説「だんだん」を見た後の8時半のニュースはたった5分間なんですが、失業率と有効求人倍率の統計はしっかり流れていました。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
労働統計
厚労省が26日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は0.76倍と、前月を0.04ポイント下回った。前月を下回るのは10カ月連続で、2004年2月以来の低水準となる。有効求人倍率は公共職業安定所(ハローワーク)で職を探している人1人あたりに何件の求人があるかを示す指標。1倍割れの道府県が41まで拡大した。
また総務省が同日発表した11月の完全失業率(同)は前月比0.2ポイント上昇の3.9%で3カ月ぶりの悪化となった。男女別では男性が0.2ポイント悪化の4.1%、女性が0.3ポイント悪化の3.8%。完全失業者数は前年同月より10万人増の256万人。企業のリストラは正社員にも広がっており、失業率は一段と上昇する可能性が高い。厚労省は雇用情勢について「厳しい状況。今後も悪化が予想される」(職業安定局)としている。
鉱工業生産
経済産業省が26日発表した11月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は94.0となり、前月に比べて8.1%低下した。2カ月連続の低下で、マイナス幅は統計上さかのぼれる1953年2月以降で最大。12月以降も生産の減少が続く見通し。世界経済の急速な減速を受け、企業が戦後かつてないスピードで生産調整に向かっている。
11月の鉱工業生産の前月比低下幅は事前の市場予測(6.6%)を上回った。これまでの最大の低下幅は2001年1月の4.3%で、これを大きく超えた。
消費者物価
総務省が26日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の激しい生鮮食品を除くベースで101.6と、前年同月比1.0%上昇した。ガソリン価格が1年2カ月ぶりに前年を下回ったため、伸び率は10月の1.9%上昇から急低下。前月比も0.8%の低下と約4年ぶりの下げ幅となり、物価の伸びは急速に鈍ってきている。
前年同月比の上昇率が前月を下回ったのは3カ月連続。消費税の導入や税率引き上げの時期を除くと、0.9ポイントの低下は第二次オイルショック後の物価上昇が落ち着く段階にあった1981年4月以来の大きさとなった。
まず、労働統計のグラフは以下の通りです。上のパネルが失業率と有効求人倍率、下が新規求人数です。目盛りや単位は凡例にある通りですが、シャドー部は景気後退期を表しています。直近は私自身の研究成果に基づく判定に従って、2007年11月をピークと仮置きしています。詳細は12月18日付けのエントリーにあります。なお、内閣府が公表している景気動向指数の「個別系列の概要」によれば、新規求人数が先行系列に、有効求人倍率が一致系列に、完全失業率が逆サイクルの遅行系列に、それぞれ採用されています。ついでながら、鉱工業生産指数も一致系列に採用されています。
失業率が0.2%ポイント、有効求人倍率が0.04ポイント悪化し、新規求人数の減少傾向はもう2年近くも止まりません。完全失業者数が大幅に増えて、よく言われるように、「巷に失業者があふれる」ような状況には、少なくとも現時点ではなっていませんが、同じく今日発表された厚生労働省の「非正規労働者の雇止め等の状況について (12月報告)」によれば、非正規労働者の中途解除や期間満了などによる雇用調整のうち、本年10月から来年3月までに実施済み又は実施予定として、全国の労働局及び公共職業安定所で12月19日時点で把握できたものは、全国で1,415件、約85千人に上っています。先行指標である新規雇用者数も減少が続いていますし、雇用情勢は厳しさを増しつつあるとしか言いようがありません。
次に、上のグラフは鉱工業生産指数です。世間一般では労働情勢に注目が集まりがちですが、当然ながら、企業が非正規労働者に対する雇用調整を行っている背景には生産の減少があるわけで、11月の生産は季節調整済の前月比で▲8.1%の低下となりました。直接の原因としては、今週12月22日付けのこのブログのエントリーで取り上げた輸出の大幅減の影響であろうと私は考えています。なお、グラフには取り上げませんでしたが、在庫は大幅に積み上がり調整圧力が強まっています。鉱工業生産は市場の事前コンセンサスでは前月比で▲7%程度の低下と見通されていたんですが、▲8%を超え、さらに、製造工業予測指数は12月の▲8%に続いて、来年1月も▲2.1%の低下と大幅な減産予想となっています。この年末年始に工場の休止期間を長めに取る企業も多いと報じられており、この10-12月期に続いて来年1-3月期まで前期比で2桁減産の可能性が十分あると私は感じています。鉱工業はGDPの2割程度しか占めないとよく言われますが、それでも、その2割が2桁減産すると成長率に引き直して▲2%の下押し圧力となります。来年早々に発動されるであろう財政政策の効果などにもよりますが、今年の4-6月期と7-9月期に続いて、現在の10-12月期はもちろん、さらに来年1-3月期まで4四半期連続でGDPがマイナス成長となる可能性が示唆されていると私は受け止めています。やっぱり、今回の景気後退局面は長くて、しかも、かなり深いと考えるべきです。
雇用や生産と違って、物価はここ半年で上昇率も注目度も大きく下げましたが、別の観点から私は注目すべきだと考えています。今年の年央には原油価格がバレル140ドルを超えて、食料などの他の商品とともに物価を押し上げていましたが、今や、原油はピーク時の3割程度の水準での取引となっており、11月時点ではコア CPI の前年同月比に対するエネルギーの寄与度はほぼゼロまで低下しました。現時点では、まだ高水準の寄与度を続けている食料価格の動向次第という面もありますが、来年年央には消費者物価がマイナスをつけて、再びデフレに陥る確度も高くなっており、日銀がどのように対応するかが焦点だと、私は今年年央までとは逆の方向で注目しています。日銀の対応が後手に回ってデフレが長引くようだと、現在の景気後退局面がさらに深くて長くなるような気がします。
このブログのエントリーとしては、おそらく、今年最後の経済評論の日記になりそうな気もしますが、誠に寒々とした今日のお天気のような経済指標だった気がします。
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ここ2日くらい、この1年を振り返っていましたが、今日は図書館で借りた村上春樹さんの『うずまき猫のみつけかた』を読み終えましたので、大きく趣向を変えて読書感想文の日記です。一応、細かいことですが、今年新潮社から出版された新装版です。と言うのは、新潮文庫からも出ていて、内容は同じで買えばソチラの方が安いような気がするものの、新装版を見たかったので図書館に行って借りた次第です。
この本は、1990年代半ばに村上さんがボストン近くのケンブリッジに住んで米国のタフツ大学に在籍していた時のエッセイです。春にはボストン・マラソンを走り、年末には愛車を盗まれ、公園でリスを観察し、旅行先のジャマイカで泳ぎ、通販で楽しい「猫の腕時計」を買ったりと、大好評の絵日記風米国東部海岸滞在記です。でも、絵は安西水丸画伯のようです。別のソースでは長編小説『ねじまき鳥クロニクル』を書いていた時期だと解説されています。実は、私は村上ファンなので小説や翻訳はいくつか読んでいるんですが、エッセイは初めてでした。自分でも意外な気がします。ひょっとしたら、以前に読んでいて忘れているだけかもしれません。ものすごく確かな自信があるわけではありません。ちなみに、『ねじまき鳥クロニクル』は全部読んでいます。図書館に行って、いろいろと村上朝日堂シリーズなどのエッセイが置いてある中で、これを選んだのは米国の大学滞在中のユルいエッセイだったからです。でも、キャンパスライフはほとんど触れられていません。よく考えたら、毎日書いている私のブログでもキャンパスライフはほとんど出て来ませんから、そんなもんだと言う気がします。
このエッセイで有名なのは「小確幸」という新語ではないでしょうか。「小さくても確かな幸せ」という意味で、そのものズバリなんですが、不況の現在では身にしみるような気もします。ホームシックでもないんでしょうが、国内に比べてやや不安定に感じがちな外国生活を続けていると、こういった境地に達する可能性はあります。1990年代半ばはバブル崩壊後の時期だったことも関連するのかもしれません。この「小確幸」も含めて、タイトルのネコ関係も含めて、かなりユルいエッセイですから、冬休みあたりにノンビリ読むのにはうってつけです。ただし、もう12-3年前に出版されたエッセイの新装版ですから、米国最新情報を求めて読む向きには不適であることは言うまでもありません。
最後に急に話題を変えて、12月22日に環境省から「平成21年春の花粉総飛散量の予測(速報)について」が発表されました。スギ花粉前線の予測は上の地図の通りです。長崎や東京は2月10日から20日の間、例年通り、来年も建国記念日から始まってゴールデンウィークあたりで終息するようです。来年のスギ・ヒノキなどの花粉総飛散量は今年と比較して、関東・東北地方では同じかやや少なく、東海及び北陸から九州地方は多くなると予測されているようです。花粉症の人には気になるところかもしれません。
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昨日は漢字能力検定協会の「今年の漢字」から1年を振り返りましたが、今日は、"Economist" の風刺マンガから、今年を振り返りたいと思います。まず、そのものズバリで "The world this year" と題した記事があります。最初のキーワードは "global financial crisis" だったりします。もちろん、オバマ時期米国大統領や話題になった北京オリンピックの聖火リレーの記事や写真なんかもあります。また、11月には "The World in 2009" というタイトルの特集版も出版されています。なお、今夜、引用した風刺マンガには引用元の記事へリンクを張ってあり、クリックすれば別画面で引用元の記事が開くように設定してあるつもりです。
まず、上の画像を引用した記事のタイトルは "The bucks stop here" です。まあ、今年の米国経済はこんなカンジですかね。さらに、経済的にも軍事的にも世界で唯一の超大国となった米国ですから、米国だけに止まらず、世界各国が同じような経済状況なんだと思います。このマンガは地域的に米国に着目しているんですが、同じように、産業的に金融業界に着目して、金融機関がドミノ倒しになっているマンガも、やっぱり、"Economist" の "The World in 2009" の中の "No end of trouble" という記事に掲載されています。
歴史の教訓として、1929年12月の米国株価の大暴落に端を発する大恐慌では、世界がブロック経済化した挙句に近隣窮乏化政策に走って自由貿易の利益が失われ、最終的には戦争に行き着きました。経済政策のあり方が戦争につながる原因の一端を担ってしまったと私は考えています。ですから、金融政策や為替政策を近隣窮乏化政策のように運営することは経済政策として避けるべきであると12月17日と19日のエントリーで立て続けに取り上げましたし、自由貿易に対して保護主義を求める方向に傾くきらいのある政治的な方面からの意見にエコノミストが適切に対応することが重要だと考えています。今週号の "Economist" も私と同意見のようで、"Fare well, free trade" と題する記事では上のマンガが掲載されています。WTO 交渉にひとまとめにされ、金融動向に比較して、その他の話題として等閑視されがちですが、実は、貿易政策はこの時期にもっとも重要な政策課題の一つと私は考えています。なお、12月22日付けの「溜池通信 vol.407」にもこの記事が取り上げられていて、日本語の抄訳が読めます。
最後に、"Economist" から離れて、同じ英国のメディアということで、昨日付けの "Financial Times" の解説記事のマンガは上の通りです。タイトルは "What we will remember from 2008" で5点のマンガが組み込まれていますから、今年の5大ニュースの代わりなのかもしれません。単純に、左からリーマン・ブラザーズ証券、オバマ時期米国大統領、140ドルの石油価格、北京オリンピックとロシアのグルジア介入です。ロシアがグルジアに軍事介入した最後のニュースは経済に何の関係もないと考えられがちですが、実はそうではありません。天然ガスだか原油だかのパイプラインが注目されがちな一方、知る人ぞ知るで、グルジアは通貨をドルペッグしており、金融政策的には米国に追随する部分が少なくないことを知るエコノミストもいます。でも、私はグルジアの通貨の呼称を知らなかったりします。見落としている可能性は否定しませんが、少なくとも日本のメディアはこの国際金融の観点からの記事を私は見かけませんでした。自由貿易に基づく交易の利益の喪失から戦争に進む道は言うまでもありませんが、国際的に複雑に絡み合った経済や金融は政治や外交とは無関係ではあり得ません。
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言うまでもありませんが、今日は天皇誕生日です。どうでもいいことですが、在外公館では天皇誕生日の周辺に祝賀レセプションを開催する習わしになっています。一応、大使館では大使が天皇のご名代、次席の公使などが総理大臣の名代、私なんかの書記官が各大臣の名代という位置づけになっていたりするそうです。ですから、天皇誕生日に祝賀レセプションを行うのが毎年の恒例となっています。そのあたりは、もともとが外交官ではない私のような出向者には理解しかねる部分もありました。それはともかく、私がチリに赴任したのは割合と平成が始まったばかりでしたので、試行錯誤の最中だったような気がします。と言うのは、昭和のころは天皇誕生日は4月29日だったんですが、現在は12月23日であり、チリはキリスト教国ですから天皇誕生日の当日に祝賀レセプションを開くのは、クリスマスに近過ぎて人の集まりが悪くなるからです。いろいろと試してみた結果だと思うんですが、私が大使館勤務だったころは、12月上旬に開催していたような記憶があります。南半球のチリでは、真っ盛りではないものの、すでに夏が始まっている季節でもあります。ホワイト・クリスマスはあり得ません。
チリの天皇誕生日祝賀レセプションを離れて、今日は下の子がボーイスカウトの奉仕活動で皇居に行き、一般参賀の参列者に日の丸の小旗を配ります。上の写真の通りです。テレビのニュースなどで見かける日の丸の小旗は、ウチの子なんかが配っているんです。でも、皇居で日の丸の旗を打ち振って「天皇陛下万歳」を叫ぶのは、控えめに言っても、私は気乗りしません。
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このブログで取り上げたかどうか忘れてしまったんですが、毎年、漢字能力検定協会が一般からの全国公募を基に決定する今年の漢字は「変」に決まりました。なお、漢字能力検定協会のホームページによれば、トップの「変」以下の順位は以下の通りでした。
基本的には、「変」はオバマ米国次期大統領の選挙活動におけるモットーだった "change" に由来するんではないかと思っています。でも、知っている人も多いと思いますが、実は、英語で "change" といえば、日本語で「お釣り」の意味もあります。お店で買い物をする際のお釣りです。スペイン語も同じで、変化を表す "cambio" がそのままお釣りの意味になります。ですから、私は少し妙な感覚だったんですが、最後の大統領選挙後のオバマ次期大統領の勝利演説なんかを見ていると、"change" よりも "yes, we can" なんかが多用されているように見えなくもありません。下のビデオは C-SPAN が YouTube に投稿した大統領選挙直後の勝利宣言のフルスピーチですが、オバマ一家が登場した時から観衆は "yes, we can" を連呼していますし、オバマ次期大統領も "yes, we can" を観衆とやり取りする場面も見られます。
話が逸れてしまいましたが、漢字能力検定協会が毎年選定している「今年の漢字」の歴代一覧は以下の通りです。これも漢字能力検定協会のホームページから引用しています。
年 | 漢字 | 理由 |
1995 | 震 | 阪神・淡路大震災や、オウム真理教事件、金融機関などの崩壊などに“震えた”年。 |
1996 | 食 | O-157 食中毒事件や狂牛病の発生、税金と福祉を「食いもの」にした汚職事件の多発。 |
1997 | 倒 | 山一證券など大型倒産の続出や、サッカー日本代表が並いる強豪を倒してワールドカップ初出場決定。 |
1998 | 毒 | 和歌山のカレー毒物混入事件や、ダイオキシンや環境ホルモンなどが社会問題に。 |
1999 | 末 | 世紀末、1000年代の末。東海村の臨界事故や警察の不祥事など信じられない事件が続出して、「世も末」と実感。来年には「末広がり」を期待。 |
2000 | 金 | シドニーオリンピックでの金メダル。南北朝鮮統一に向けた“金・金”首脳会談の実現。新500円硬貨、2000円札の登場など。 |
2001 | 戦 | 米国同時多発テロ事件で世界情勢が一変して、対テロ戦争、炭そ菌との戦い、世界的な不況との戦いなど。 |
2002 | 帰 | 北朝鮮に拉致された方の帰国、日本経済がバブル以前の水準に戻ったこと、昔の歌や童謡のリバイバル大ヒットなど「原点回帰」の年。 |
2003 | 虎 | 阪神タイガースの18年ぶりのリーグ優勝、衆議院選挙へのマニフェスト初導入で政治家たちが声高に吠えたこと、「虎の尾をふむ」ようなイラク派遣問題など。 |
2004 | 災 | 台風、地震、豪雨、猛暑などの相次ぐ天災。イラクでの人質殺害や子供の殺人事件、美浜原発の蒸気噴出事故、自動車のリコール隠しなど、目を覆うような人災が多発。 「災い転じて福となす」との思いも込めて。 |
2005 | 愛 | 紀宮様のご成婚、「愛・地球博」の開催、各界で「アイちゃん」の愛称の女性が大活躍。残忍な少年犯罪など愛の足りない事件が多発したこと。「愛」の必要性と「愛」欠乏を実感した年。 |
2006 | 命 | 悠仁様のご誕生に日本中が祝福ムードに包まれた一方、いじめによる子どもの自殺、虐待、飲酒運転事故など、痛ましい事件が多発。ひとつしかない命の重み、大切さを痛感した年。 |
2007 | 偽 | 身近な食品から政界、スポーツ選手にまで、次々と「偽」が 発覚して、何を信じたら良いのか、わからなくなった一年。 |
2008 | 変 | 政治、経済をはじめ良くも悪くも変化の多かった一年。来年は世の中も自分達も新しく変わっていき希望のある社会にしていきたい。 |
エコノミストに関する漢字と私が勝手に認定したものを拾うと、上の方では今年2008年のランキングを10位までしか示しませんでしたが、11位以降に「落」とか「崩」なども入っていますし、7位の「株」なんかもピッタリです。もちろん、組み合わせて「株」が「落」ちたり、値「崩」れしたりした方なのは言うまでもありません。2005年の「愛」や2006年の「命」に比べて、2007年の「偽」あたりから景気が変調を来し、今年9月のリーマン・ショック以降は本格的な不況に突入したのが実感でしょうから、来年が「壊」とかにならないように願っています。
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本日、財務省から貿易統計が発表されました。輸出も輸入も大きく減少して、貿易収支は▲2234億円の赤字でした。輸出入別で見ても、国別で見ても、品目別で見ても、何から何まで前年同月比マイナスが並びました。世界同時不況の典型的な姿を示していると考えられます。下の表の通りです。下の表は、11月の貿易について、貿易相手別、輸出入別、金額・価格・数量別の前年同月比のパーセント表示ですが、ここまで見事にマイナスが並んで、しかも、その多くが2桁マイナスとなっています。
下のグラフは11月だけでなく、最近の貿易の推移です。上のパネルは輸出入と貿易収支の推移で、左軸の単位は10億円です。下のパネルは輸出だけを取り出したもので、価格と数量、そしてその合計たる金額の前年同月比の推移で、左軸の単位はパーセントです。直近の11月については、主として、輸出数量の落ち込みから輸出が減少し、貿易収支がマイナスに突っ込んでいる大きな要因になっているのが読み取れます。上下のパネルとも、左軸のマイナスの範囲を広げなければなりませんでした。
輸出の今後の見通しについては、円高が1ドル90円くらいまで進んでいる一方で、先日の日銀短観では事業計画の前提となっている想定為替レートが今年度下期102.61円でしたから、輸出採算が大幅に悪化しており、私が受け取った範囲でも12月の貿易収支も赤字とする同業者のリポートも見かけました。私は輸入については判然としないので貿易収支についてはイマイチ自信がありませんが、確実に言えるのは、来年1-3月期にかけて輸出は引き続き低迷し前年同月比でマイナスを続けるであろうことと、ついでながら、11月の鉱工業生産指数は前月比で5%を超えるマイナスをつけるだろうということです。
ついでながら、月例経済報告が閣僚会議にて決定されました。12月の景気判断は「景気は、悪化している」でした。景気悪化の判断は2002年2月以来、6年10か月振りです。総論では4点取り上げており、輸出、企業収益、個人消費とともに雇用情勢では「急速に悪化しつつある」となっています。当然です。
以前から繰り返している通り、今年10-12月期から来年1-3月期は景気後退局面の中でも、大底に近いもっとも闇の暗い期間です。経済ニュースはしばらく暗い話題が続くのかもしれません。
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今日は雨の日曜日で、適当にブラブラした後、正午過ぎに昼食に出かけようとしたら、テレビがニュースから高校駅伝の中継に切り換わり、駅伝には何の興味もないんですが、懐かしい京都の町並みが映し出されているので、ついつい見入ってしまいました。雨も本格的に降り始めたこともあり、今日は朝が遅かったので昼食も遅らせました。駅伝の先頭集団が我が母校の周辺に差しかかり、今出川通りから東山通りを曲がったあたりで出かけます。ようやく完成した年賀状も投函します。
昼食後、電車に乗って長崎駅前の大きな書店に行き、手帳を物色します。今年まで15年以上にわたって大判のデスク・ダイアリーを愛用し続けて来て、ここ何年かはトヨタからもらっていました。外国向けの赤い表紙の大判デスク・ダイアリーです。日本語は一切なく、曜日は英語、仏語、独語、西語の4カ国語で表示されていました。今年もトヨタの知り合いに連絡して送ってもらえなくもなかったんでしょうが、昨日のスポーツ新聞を見て、我がタイガースの安藤投手が契約更改して、年俸が目標の1億円を超えたとかで新車に買い替えるそうで、ベンツや何やの外車ではなく、プロ入りしてタイガースに入団する前に所属していたトヨタのレクサスを買うとのニュースを見かけました。世界不況で経営が苦境に陥っている古巣を助ける立派な心がけに感動し、レクサス1台だけでは焼け石に水だろうと思いつつ、さらに桁違いの少額ながら、手帳を送ってもらうのも、ついつい遠慮してしまいました。もちろん、今年は大学勤務ですから手帳やカレンダーを届けてくれる業者も役所とは段違いです。
来年は、長崎での授業とともに、少し東京に出かけて研究に励もうと考えているので、持ち運ぶのに便利なポケット・サイズの手帳を探します。久し振りに、大判ダイアリーをヤメにしました。ダイアリー部分の後にあるメモのページ数も最小限のものとし、住所録なんかは付属していません。今どきは住所や電話番号はパソコン管理でしょうから、手帳には不要です。年賀状を仕上げた際もほとんどパソコン作業です。手帳の表紙はいつものトヨタのに合わせて鮮やかな赤にします。その昔の私の職場では、名前が書いてなくても赤い表紙のダイアリーといえば私のに決まっていました。もっとも、高校駅伝のランナーの背景にチラリと見かけた我が母校のスクールカラーは濃青です。
先週で、今年最後の授業を終え、年内最終の教授会にも出席し、景気のピークを計測した状態空間モデルのペーパーも提出し、さらに、この週末に年賀状を投函して手帳も買いましたから、そろそろ、本格的な冬休み体制に入ります。
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昨日、政府経済見通しが閣議了解されました。今年度▲0.8%のマイナス成長の後、来年度もゼロ成長となっています。苦労してつじつまを合わせた跡がうかがえます。私自身も1990年代半ばのバブル崩壊後の経済見通しを担当したことがありますので、景気後退期に経済見通しを策定する苦労は理解しているつもりです。当時、「政府経済見通しで失業率3%台は出せない」という雰囲気がありましたから、今でも「マイナス成長は出せない」というプレッシャーは感じるんではないかと遠くから想像しています。明らかな景気後退期の政府経済見通しでゼロ成長を打ち出したということは、ココロはマイナス成長なんだろうと思います。ですから、今日、来年度予算の財務省原案が内示されましたが、報じられている国債発行額の33兆円はさらに膨らむ可能性が大きいと考えられます。
まず、2008-10年にかけての日本経済の成長率見通しです。国際機関から政府やシンクタンクなどの見通しを、私の目についた範囲で表に取りまとめています。最新のものを拾ったつもりですが、私が見た後に改定されているものもあるかもしれません。でも、大筋は変わらないと思っています。すべて実質GDPの前年比のパーセント表示ですから、いわゆる実質成長率を並べたんですが、アスタリスクを付した国際機関は暦年で、政府経済見通し以下の国内機関は年度になっています。ですから、正確にいうと1-3月期の扱いが違います。ヘッドラインは私の趣味で勝手にリポートから特徴的な表現を選定しています。一番左の機関名にはリポートの PDF ファイルにリンクが張ってあります。いつもの通り、PDF が何か分からない向きには諦めるしかないんですが、このブログの管理人を信用しているのであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別窓でリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 2008 | 2009 | 2010 | ヘッドライン |
---|---|---|---|---|
経済開発協力機構* (OECD) | +0.5 | ▲0.1 | +0.6 | Japan has not been at the epicentre of the financial crisis |
国際通貨基金* (IMF) | +0.5 | ▲0.2 | n.a. | In Japan, the support to growth from net exports is expected to decline |
アジア開発銀行* (ADB) | +0.5 | ▲0.2 | n.a. | The Japanese economy - hurt by declining external demand and still sluggish domestic consumption - has fallen into recession |
世界銀行* | +0.5 | ▲0.1 | +1.5 | A pronounced recession is believed to have begun in mid-2008 in Europe, Japan |
政府経済見通し | ▲0.8 | 0.0 | n.a. | 年度後半には民間需要の持ち直しなどから低迷を脱していく |
日本総研 | ▲1.1 | ▲0.7 | n.a. | 景気後退局面が長期化する見通し |
ニッセイ基礎研 | ▲0.9 | ▲0.8 | +0.8 | 日本の景気は2009年度下期に底打ちすると予想 |
大和総研 | ▲0.9 | ▲1.3 | n.a. | 日本経済の回復は2010 年度以降にずれ込む公算 |
みずほ総研 | ▲1.6 | ▲1.0 | n.a. | 世界経済が失速する中で、日本経済も2年連続のマイナス成長となることは免れないと予想 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲1.1 | ▲0.9 | n.a. | 2009年中は景気回復の動きが出てこない |
第一生命経済研 | ▲1.1 | ▲1.1 | +1.1 | 潜在成長ペースに戻るのは2010年4-6月期以降 |
三菱UFJ証券 | ▲1.0 | +0.2 | +2.0 | 内外の財政出動、金融緩和の効果で、09年度上期から回復へ |
ゼロ成長の政府経済見通しを除いて、来年度のプラスを打ち出しているのは三菱 UFJ 証券だけで、これを別にすれば、国際機関も国内シンクタンクもすべて来年ないし来年度はマイナス成長を見込んでいます。テクニカルな要因としては、2008年10-12月期ないし2009年1-3月期のマイナスのゲタを履くこともありますが、多くの機関で来年ないし来年度中に景気後退局面を本格的に脱する可能性は低いと見ていることも事実です。私も同感です。
単純な景気循環論から考えて、山が高ければ次の谷は深いし、逆に、谷を浅くするような経済政策が取られると次の山も低くなります。要因は同じでストック調整の程度に依存するからです。典型的に山の高かったバブル崩壊後のストック調整は1循環だけでは不足して、2-3循環を要しました。「10年不況」とか「15年の停滞」とか呼ばれているのはよく知られた通りです。ですから、私は従来からストック調整が景気後退期に可能な限り complete されるようにとの観点から、苦境にある産業や地域に生産要素を維持するのを助けるような経済政策ではなく、各経済主体による異時点間の最適化を促進するという意味でダイナミックな生産要素の再配分・再配置を可能にするような経済政策を提唱しています。しかし、社会的なセイフティネットが整備されていなければ、現在、大きく報じられているように、派遣労働者などの問題のような大きな痛みを伴いますから、悩ましいところであるのは確かです。少し脱線すると、雇用調整について、古くは日本では賃金における賞与などの占める比率が高く、価格=賃金で調整して雇用量で調整する部分は小さいと考えられていたんですが、最近時点では、米国と同じように、雇用量で調整する構造に変化したのかもしれません。このあたりは理論的というより、すぐれて実証的に解明されるべき課題でしょうから、私も可能であれば取り組みたいと考えています。いずれにせよ、モノである資本設備と違って、労働者はヒトですから、経済学においても扱いが違うのは当然で、繰返しになりますが、悩ましいところであることは確かです。
まったく関係ない観点ながら、財務省原案が朝早くに閣議決定され、昼間のうちに各省に内示されるのは、私が公務員になったころには考えられませんでした。組閣、予算、国会答弁などは夜の作業と相場が決まっていたんですが、時代がよくなりつつあることを実感します。
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昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合の結果、政策金利を20ベーシス引き下げて0.1%とし、長期国債の月間買入れ額を1.2兆円から1.4兆円に拡大、CP 現先オペの対象先として日本政策投資銀行の追加、すなわち、日本政策投資銀行が購入した CP を現先方式で買い取るなどの発表がありました。詳細は日銀発表文がアップロードされています。政策金利については、昨日の bloomberg のニュースサイトなどで、OIS (overnight indexed swap) から JPモルガンが算出した12月会合での利下げ織込み度合いは、一昨日17日午後の時点で50%を超えたことが報じられており、順当な結果と考えられます。ほかについても、ほぼ事前の報道通りの結果と私は考えています。
ということで、私の感想なんですが、第1に、9月半ばのリーマン・ショック以降、日銀はかなり追い込まれた形でなければ金融緩和をしない姿勢が見受けられます。今回も官房長官や財務大臣などの大合唱がありましたし、もちろん、連邦準備制度理事会 (FED) の金融緩和策に対応した面がにじみ出ています。やっぱり、白川総裁ではリーダーシップに欠けると見るエコノミストがいても不思議ではありません。第2に、量的緩和に属する対策がややショボく見えなくもありません。金利引下げ余地が限られているんですから、勝負は量的緩和と私は考えています。20ベーシスの金利引下げで大きな景気浮揚効果があると考えるエコノミストは少数派でしょうが、他方で、資金供給の方では、FED のように短期間でバランスシートを2.5倍に膨らませることも可能です。「中央銀行としてなし得る最大限の貢献」との文言がありますから、今後を注目したいと思いますが、言われなければやらない体質になっているのであれば期待薄かもしれません。今後のデータをチェックして、私の感想が間違っていることを期待しています。
今後の注目点は、白川総裁が著書で強調しているように、あくまで金利ターゲットにこだわるのか、資金供給量のターゲットに移行するのかです。別の表現をすれば、「中央銀行としてなし得る」の前半部分が金利ターゲットを意味し、後半の「最大限の貢献」を制約するのかどうかが見ものです。たぶん、制約するんだろうと私は考えています。でなければ、不要な形容詞です。その理解の上で、さらに追い込まれて本格的な量的緩和に移行するのが私の予想です。来年4月以降には量的緩和に追い込まれるというのが基本的なシナリオですが、あくまで金利の上げ下げが「中央銀行としてなし得る」範囲と白川総裁が考えて積極的な量的緩和に進まなければ、やむなく政府が実施することになります。そうなると、実績のある政策としては財務省の為替介入ということになります。もしそうだとすれば、政府と日銀が協調して、というより、日銀がやってくれないので政府が仕方なく、に近い姿になる可能性があります。先日も書きましたが、近隣窮乏化政策みたいで、やや下品であるのもさることながら、その後の景気循環の方向性を部分的なりとも決めかねない可能性があって、私は気乗りしません。昨年10-12月期にピークを迎えた今回の景気拡大が輸出主導だったのは、日米の景気拡大ペースの差も大いにありますが、為替介入により景気拡大を本格化させたことも何らかの影響を及ぼした可能性があります。
中川財務・金融大臣のように今回の日銀の政策決定を「満額回答」に近く評価する向きもありますが、私自身はもう少し待ってから評価したいと考えています。タイトルを感想とはしたものの、何だか、とてもまとまりないエントリーでした。今日、閣議了解された政府経済見通しについては、日を改めて取り上げたいと思います。
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12月3日付けのエントリーで取り上げたように、NBER は米国の景気のピークを昨年12月と認定しました。その1週間後の12月10日のエントリーで、日本でも来年1月29日に内閣府が景気動向指数研究会を開催して景気の山の判定を行う旨を、チラリと触れたところですが、私も大いに触発されて、極めて短期間のやっつけでペーパーを仕上げました。一応、授業以外の研究でも大学教授らしいこともしていたりします。私の大学の研究室のホームページにアップしてあります。年度末くらいに刊行される本学の研究所年報に掲載される予定です。タイトルはそのまんまなんですが、「今次景気循環のピークに関する考察 - 状態空間モデルを用いた産出ギャップによるアプローチ」としました。分かる人にしか分からないんですが、産出ギャップを状態空間表現してカルマン・フィルターで解いています。これだけで理解できれば、もうそれ以上に聞く必要もないでしょうし、これで理解できなければ、理解するまでにかなり時間を要します。でも、これで終わっては余りにも不親切なので、少し解説すると、割と単純に、univariate な Hodrick-Prescott フィルターに対して、賃金と産出の2変数に基づく bivariate な状態空間モデルです。フィリップス・カーブで賃金と失業率の関係を表現し、さらに、失業率と産出の関係をオークン係数で表現することにより、賃金と産出をつないで産出ギャップを状態空間表現したモデルを理論的に構築し、推計できる形に解析的に変形した後に、カルマン・フィルターを使って最尤法で itarative に解いています。推計結果は以下のグラフの通りです。Hodrick-Prescott フィルターの結果と状態空間モデルの結果が合わせてプロットしてあります。左軸の単位は、大雑把に、現実と潜在の鉱工業生産指数の前年同月比伸び率の乖離幅の decimal です。いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。
まず、月次のデータですので推計結果がギザギザするのは仕方ありません。それから、ペーパーではいろいろとカレンダーのせいにして言い訳しています。賃金は冬季賞与は12月支給が圧倒的なんですが、夏季賞与は年によっては6月と7月で比率が違うこともありますし、今年の2月がうるう年でジャンプしている可能性もあります。そのあたりが推計結果が美しくない原因です。でも、何とか無理やりに、2007年12月から産出ギャップがマイナスを記録しましたので、2007年11月を景気の山と認定しています。しかし、最大の疑問は、そもそも産出ギャップの符号が景気循環の山谷に対応しているかどうかが疑わしい点です。よく知られたように、私のペーパーなんかよりもずっと権威のある内閣府や日銀で算出されたGDPギャップは2005年くらいまでマイナスのままだったりしました。例えば、シカゴ連銀が公表している CFNAI のように負値の閾値 (critical value) が存在するのかもしれません。いずれにせよ、繰返しになりますが、私の大学の研究室のホームページにアップしてありますから、ご興味ある方はこのブログのサイドにある私の大学の研究室へのリンクをたどれば、pdf ファイルがダウンロード出来ると思います。言うまでもありませんが、私は全くオススメしません。
最後に、12月6日のエントリーで取り上げた "Time" 誌の "Person of the Year" が発表されました。言うまでもなく、米国大統領選挙のあった今年の顔は、上の通り、オバマ米国次期大統領です。なお、画像は共同通信の 47NEWS のサイトから引用しています。
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米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) の連邦公開市場委員会 (FOMC) が閉幕しました。昨夜のエントリーでも取り上げましたが、結局、米国の金融政策はゼロ金利と量的緩和に突き進むようです。政策金利である FF レートは0-0.25%のレンジに引き下げられ、政府機関債や住宅ローン担保証券を大規模に買い入れてたりして、さらにバランスシートを拡大すると宣言しています。実態的に、FF レートは0.1%台まで低下しており、バランシスシートの大幅な拡大ですでに量的緩和に入っているのは明らかですから、FOMC でこれらの実態を追認したものと私は受け止めています。このブログでは、先週12月11日付けのエントリーなどで FED のバランスシートや市場での実勢取引の FF レートなどをグラフで示して来ましたので、今夜のエントリーでは、昨日の FOMC Statement を読み解きたいと思います。まず、とっても長くなりますが、FED のサイトから FOMC Statement の主要な部分を引用すると以下の通りです。
The Federal Open Market Committee decided today to establish a target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent.
Since the Committee's last meeting, labor market conditions have deteriorated, and the available data indicate that consumer spending, business investment, and industrial production have declined. Financial markets remain quite strained and credit conditions tight. Overall, the outlook for economic activity has weakened further.
Meanwhile, inflationary pressures have diminished appreciably. In light of the declines in the prices of energy and other commodities and the weaker prospects for economic activity, the Committee expects inflation to moderate further in coming quarters.
The Federal Reserve will employ all available tools to promote the resumption of sustainable economic growth and to preserve price stability. In particular, the Committee anticipates that weak economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for some time.
The focus of the Committee's policy going forward will be to support the functioning of financial markets and stimulate the economy through open market operations and other measures that sustain the size of the Federal Reserve's balance sheet at a high level. As previously announced, over the next few quarters the Federal Reserve will purchase large quantities of agency debt and mortgage-backed securities to provide support to the mortgage and housing markets, and it stands ready to expand its purchases of agency debt and mortgage-backed securities as conditions warrant. The Committee is also evaluating the potential benefits of purchasing longer-term Treasury securities. Early next year, the Federal Reserve will also implement the Term Asset-Backed Securities Loan Facility to facilitate the extension of credit to households and small businesses. The Federal Reserve will continue to consider ways of using its balance sheet to further support credit markets and economic activity.
まず、FF レートの誘導目標をレンジにしたことについては、スイス国立銀行などの例もありますが、基本的には、決済で一定の役割を果たしている MMF の元本割れによる取付けの防止と解釈すべきです。これも、すでに11月7日付けのこのブログのエントリーで論じていますが、日銀がやったようなホントのゼロ金利を米国で行うと、MMF の信託報酬などの運営コストが確保できずに元本割れを起こして取付けが殺到する可能性があります。米国における MMF は日本の MRF と同じように決済機能があり、決済にどの程度の比率を占めるかは知りませんが、少なくとも残高では米国で3-4%ありますから、MMF による決済が滞らないように配慮する必要があります。日本のようにまったくと言っていいほど MRF を決済に使わない国とは違います。ですから、ココロはゼロ金利に向いているとしても、米国でベタのゼロ金利は不可能です。でも、日銀スタッフや日銀に近いエコノミストなんかは「ゼロ金利ではない」という点を強調することと思います。そのあたりを理解した上で、いろんな論調を見ると新しい発見があるかもしれません。
多くのメディアやエコノミストが注目しているのは、最初のパラの金利引下げとともに、おそらく、5番めのパラの最初のセンテンスで、FED のバランスシートを高水準に維持して金融市場機能のサポートと景気刺激を行うと、量的緩和を宣言している部分なんだと思います。上のマンガの通りで、「ヘリコプター・ベン」とも「ケチャップ・ベン」とも揶揄されるベーナンキ FED 議長が貨幣をばらまいて、金利を下げています。なお、このマンガは "Financial Times" のサイトから引用しています。しかし、最初に書いた通り、金利も量的緩和も実態を追認したものに過ぎません。明示的にアナウンスする効果はあろうと思いますが、モノの分かっている市場参加者の間では大きなサプライズではあり得ないと私は思っていました。でも、NYダウも東証の日経平均も上げましたから、かなり分かっていない可能性はあります。
では、何を読むべきかというと、先に引用した FOMC Statement の中で青字にしておいた部分です。2か所あります。まず、最初の方は "to promote the resumption of sustainable economic growth and to preserve price stability" です。"resumption" ですから、すでに "sustainable economic growth" ではない状態に入っているわけで、さらに、"preserve price stability" と続きますから、物価安定が危ない状態になっていると FED が認識していることになります。前回、10月29日の FOMC Statement では "preserve" という語は入っていませんでした。誰がどう考えてもインフレが高進する恐れではなく、念頭にあるのはデフレです。バーナンキ FED 議長が「ヘリコプター・ベン」とか「ケッチャップ・ベン」とか呼ばれたのは、FED 理事だったころに日本のデフレに対してヘリコプターから紙幣をまいてでも通貨を供給し、買うものがないと反論した日銀スタッフに対しケチャップを買ってでも貨幣を供給するべき、と発言したらしいところから由来しているといわれています。もちろん、私がこれらの発言を直接確かめたわけではありません。言うまでもなく、経済の先々の目標は安定的な経済成長なんでしょうが、目先の話としてデフレ回避に重点が置かれていると解釈すべきです。この観点からは、ヘリコプターで貨幣をバラまくような通貨供給の増加は正しい金融政策であると私は考えています。しかし、私が接した情報の中では、この点を理解している日本のメディアやエコノミストは少なかったように感じました。諸外国では、先に引用した「ヘリコプター・ベン」のマンガを掲載した "Financial Times" のサイトの解説で触れられていたり、"New York Times" の "Reactions to the Fed's Rate Cut" と題するサイトで、クルーグマン教授が "liquidity trap" に言及していたりします。最後に、2番目の青字の点は、for some time とやや不明瞭かつ期間不明ながら、いわゆる時間軸効果が盛り込まれたことです。この点は国内でも、少なくともエコノミストの間では気付いている向きも多かったようです。
さて、明日から日銀の金融政策決定会合が始まります。数年前にモロにデフレに陥って金融政策の無策振りを世界に明らかにした我が国の金融政策当局はどのような決断をするんでしょうか。もしも、ホントに無策なら、日本が年末年始休みに入っている間に円相場が急騰することも考えられるかもしれません。それにしても、結果としてながら、近隣窮乏化政策みたいな金融政策の運営を早く終わりたいのは各国に共通しているような気がします。
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昨夜のエントリーの最後に書いたように、今週の注目点は日米の金融政策の動向です。両国とも金融政策当局が金融政策の決定会合を開催します。まず、昨日から今日にかけて連邦準備制度理事会 (FED) が連邦公開市場委員会 (FOMC) を開催している米国について、昨夜と一部は重複しますが、"Wall Street Journal" から私の興味を引いた最近の記事を引用します。日付順に並べたつもりです。
明朝には FOMC の結果がメディアやネットで流れていることと思います。日米金融政策当局の相対的なポジションという意味では、当然ながら、次の注目点である今週後半18-19日の日銀の金融政策決定会合も見逃せません。
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本日、日銀短観が発表されました。ほぼ事前の予想通りで、企業マインドの大幅な悪化と先行きのさらなる悪化懸念が明らかになりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどに関する記事を引用すると以下の通りです。
日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス24となり、2002年3月以来、6年9カ月ぶりの低水準となった。9月の前回調査(マイナス3)から21ポイント低下し、石油危機だった1975年2月と並ぶ過去2番目の悪化幅となった。金融危機によって企業の資金繰りが悪化しているほか、雇用や設備にも過剰感が広がっている。
企業の業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」との回答を引いた値。大企業製造業のDIの悪化は5四半期連続。悪化幅は日本の金融システム不安が深刻だった98年3月(19ポイント)を上回った。日銀は18、19日に金融政策決定会合を開くが、利下げや資金供給などの追加策が必要との声が強まる可能性がある。
要するに、下の表のように、何から何まで、製造業・非製造業別でも規模別でも、現時点も先行きも、どんどん業況判断は悪化しています。下の表は業況判断 DI の最近の変化で、単位は通常通り、「良い」から「悪い」を引いた差の%ポイントです。2009年3月については現時点での見通しです。
2008/9 | 2008/12 | 2009/3 | |
---|---|---|---|
全産業 | ▲14 | ▲24 | ▲38 |
大企業製造業 | ▲3 | ▲24 | ▲36 |
中堅企業製造業 | ▲8 | ▲24 | ▲45 |
中小企業製造業 | ▲17 | ▲29 | ▲48 |
大企業非製造業 | 1 | ▲9 | ▲14 |
中堅企業非製造業 | ▲12 | ▲21 | ▲32 |
中小企業非製造業 | ▲24 | ▲29 | ▲42 |
次に、下のグラフは同じく業況判断 DI をもう少し長めにプロットしたものです。左軸の単位は上の表と同じです。
過去の、例えば、バブル崩壊後の景気後退期でも今回ほど急激な落ち込みはなかったように私は記憶しています。最初に引用した記事によれば石油ショック以来ですから当然です。さらに、多くのエコノミストにショックだったであろうことは、来年3月期にはさらに業況判断が落ち込むように予想されていることです。業種別で大企業を見ると、現在の業況判断 DI のマイナスが最も大きい産業が自動車で、▲68と飛び抜けています。ダントツと言えます。海外市場に依存していることと、何らかのローンを組んで購入する比率の高い大型の高額商品ですので、世界的な景気後退と金融危機の影響をモロに受けていると考えられます。逆に、大企業製造業の中で12月時点でも業況判断 DI でプラスを維持しているのは鉄鋼と造船・重機等の2産業だけです。資源高の「余熱」が残っている産業でしょうから、今後、急速に悪化に向かう可能性を否定できません。
労働と資本の生産要素の不足・過剰感では、とうとう、雇用人員判断 DI が雇用過剰に転換しました。上のグラフの通りです。来年3月の見通しも入れているものですから、これまた、かなりスティープな上昇に見えます。いろんなメディアでも雇用不安に関する報道を見かけない日はなく、現状では報道ベースで非正規雇用中心の雇用調整のように見受けますが、この先の雇用動向が気にかかるところです。また、2008年度設備投資計画もソフトウェアを含み土地を除くベースではかろうじてプラスを維持していますが、これから先、本格的なストック調整局面に入る可能性は十分あると私は考えています。次回の3月調査で明らかになる2009年度の設備投資計画がどのような姿になるか大いに心配しています。
誠についでながら、上のグラフは夕刻に日銀長崎支店から発表された長崎短観の結果です。上のグラフで見られる通り、昨年10-12月期をピークに景気後退局面に入った後は、長崎もほぼ全国と同じ動向を示しているといえます。私はよく知らなかったんですが、日銀長崎支店では6月調査と12月調査では来年の新卒採用も調査していて、2009 年度の新卒採用計画は製造業が前年度比▲10.3%減、非製造業も同▲20.4%減なっていて、当然ながら、全産業でも同▲15.8%減となっています。ますます、学生諸君の就職が心配です。
最後に、今週の注目点は金融政策の動向です。今日から米国の連邦準備制度理事会 (FED) が連邦公開市場委員会 (FOMC) を異例の2日に延長して開催し、日銀も18-19日に金融政策決定会合を開催します。"Wall Street Journal" の記事で報じられているように、FED が政策金利をさらに引き下げて日銀が何もしないと日米の金利差が一気に縮まり、為替が円高に進むことから製造業の業況をさらに悪化させる要因となる可能性があります。
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今夜、最終回の NHK 大河ドラマ「篤姫」を見終えました。何と、70分のスペシャル拡大版でした。そもそも、私は青山の家ではチャンネル権がなく、「篤姫」を見始めたのが長崎に来てからでしたので、大雑把には幕末の江戸開城のあたりから明治初期にかけての歴史は一般教養として分からなくもないものの、ドラマに描かれている人間模様については、いまだにトンと理解できない部分が残ります。しかし、11月3日付けのエントリーにも書いたように、ストーリーや何やよりも主演女優さんの好みでテレビを見ていますので、宮崎あおいさんに大いに満足しています。
言うまでもなく、天璋院篤姫の出身は明治維新の原動力の一端を担った薩摩ですが、文の分野の私には武のイメージが強い薩摩はどうも理解不能な部分がある気がしています。我が分野の大先輩とも言える調所広郷に対する仕打ちなんかも、そんなに詳しいわけではありませんが、「篤姫」にも悪役で出て来ましたし、何となく、違和感があるのも事実です。でも、同じように、私のお給料の元である官僚制の礎を築いた大久保利通も薩摩出身だったりします。幕末から明治の動乱期には、このような勢力も歴史の必要から生じたものなんでしょう。私はエコノミストであって、ヒストリアンではないので、よく分からなかったりします。
それにしても、今夜の70分のスペシャル拡大版では、天璋院篤姫の母親が薩摩から上京したり、小松帯刀が死んだり、西郷隆盛や静寛院和宮が訪ねてきたりした際などに、いろいろと以前に放映した名シーンであろうと想像するセピア色の回顧シーンもふんだんに取り入れられており、ほとんど前半 2/3 を見ていない私には新鮮だったりしました。最後の方の徳川家達の婚約の祝いで大奥にいた多くの女性が集まり、記念写真を撮るシーンも驚きだったりしました。西南の役で西郷が死んだことや大久保の暗殺などは歴史そのものでしょうが、ドラマのどこまで史実に即しているのかどうか、私には知りようもありませんが、ドラマらしいいい構成なのかもしれません。
チャンネル権が私にあるかどうか不明ですが、年末に青山に帰宅してから「篤姫」の総集編を可能な範囲で見てみたい気がします。
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そろそろ季節になりましたので、この週末に年賀状の準備をしています。出来れば、来週末くらいには出したいと考えています。書くことは新年のご挨拶や住所氏名と決まっていますので、適当な画像を探します。ここ数年、営業用と親戚・知人向けを分けているので、2種類探します。営業用は簡単に決めます。要するに、下の通り、大学のロゴとタイプの組合せです。上の方が正式ロゴとタイプの組合せで、下は略式ロゴです。やや迷ったんですが、カラーはひとつにしようと考えて、上の方にします。なお、どうでもいいことですが、下の方の略式ロゴはアイコンに変換して、サイドにリンクを置いてある私の大学のホームページのファビコンにしています。
ということで、営業用が決まりましたので、親戚・知人向けのも横長のヘッダに使える画像をネットで検索します。いろいろありましたが、来年の干支である丑の画像は横長の適当なものがなく、結局、下のような七福神にしました。いっぱい探したので、どこのサイトかは忘れて、ちゃんと確認していないような気もしますが、個人使用に限ればフリーなんだろうと勝手に思ってます。
最後に、今年の年賀状のフォントはメイリオにしました。Windows Vista の標準フォントになっています。そんなにシャープな印象は受けないんですが、読みやすいと感じました。この年末年始に時間があれば、このブログのサイトも少し css をいじってメイリオに変更してみようかと考えなくもありません。
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米国上院でビッグスリーの支援法案が廃案となり、大統領府が金融支援法の援用を模索していると報じられています。私は長らく公務員をして来ましたので、システミックリスクやそれに近い経済崩壊とメディアが呼びそうな状態を避ける方のバイアスが強いんだろうと思いますが、このブログでも何度か表明したように、リーマン・ブラザーズ証券は救済すべきだったと考えていますし、ビッグスリーも基本的には同様です。まず、いくつか、私は見た範囲でビッグスリーの救済に関して論じているサイトは以下の通りです。事実関係の報道よりも解説めいたものが中心です。コトがコトですから、英文サイトが多いのは当然です。私が見た順ですから、大雑把に古い順だと思いますが、そんなに順番は気にしていません。ナンバーを振ってあるのは、後ほど引用するときに便利だからというだけの趣旨で、特に重要性などを表現しているつもりはありません。クリックすれば、別画面で開くようにリンクが張ってあるつもりです。
最初の日経新聞のサイトの経済羅針盤は双日総研の吉崎副所長、2番目の "Financial Times" のオピニオンはスティグリッツ教授が書いています。ふたつ飛ばして、最後のリンクは米国のオバマ次期大統領が自動車産業の救済法案が上院で不調に終わったことに失望するとして発表したステートメントです。"Washington Post" だけでなく、いろんな米国のメディアでキャリーされていると思います。
私も米国の破産法制を熟知しているわけではないんですが、大雑把に、ビッグスリーに限らず連邦破産法の第11条にファイルすると、よく言われるレガシーコスト、すなわち、退職者に対する医療や年金などのコストを切り離すことが出来ます。日本では政府が管掌しているような社会保障の枠組みを米国では企業が運営している場合が少なくありません。大雑把には、日本の企業の健康保険組合の枠組みを退職者や年金に拡大したものと私は理解しています。さらに、株式が紙くずになるのは当然ですが、社債も棒引きされます。しかし、実物資産は残ります。このあたりの理解について十分な自信はありませんが、上の1番目と2番目の解説でも触れられています。少なくとも、自動車会社の場合は生産設備などの実物資産が残るのは、同じく連邦破産法第11条にファイルしたリーマン・ブラザーズ証券などのような金融機関との大きな違いであることは確かです。問題は、最初のコラムにあるように、破産した会社の自動車を消費者が買うかどうか、なんですが、これについては4番目の記事に、今夏実施された CNW Research の調査結果が紹介されていて、6000人の消費者を対象にした調査によると80%が買わないと回答したそうです。特に、アブナいのは2度目の破綻になるクライアスラーであるとも付記されています。
実は、私も日本の景気後退の深さの判断とともにビッグスリーの救済についても考えを変えつつあり、大きな金融機関に端を発するシステミックリスクに近い大規模な経済の混乱状態を避けるためには、"too big to fail" の観点も含めて、基本的には救済の方が合理的であろうと考えているものの、連邦破産法第11条へのファイルも選択肢となり得る可能性は認めます。すなわち、私が従来から主張しているように、生産要素配分を現状で固定化するよりも、マイクロな経済主体における異時点間での最適化行動のコストを最小化するという意味で、ダイナミックに資本や労働を再配置することが可能となる政策を推奨する立場に合致していると考えるからです。少し分かりにくい表現だったかもしれませんが、実例を上げると、日本でいえば郵政民営化や三角合併の解禁をはじめとする M&A の円滑化、米国ではこれに加えて移民の受入れなどが生産要素の再配置に貢献することは明らかで、連邦破産法第11条にファイルすることにより業界の再編も可能になるかもしれません。米国の航空業界などの例もあります。最後に、世論の観点からすると、米国において金融機関にせよ自動車会社にせよ民間企業を救済するのは、日本における増税に通じるものがあって、はなはだ不人気な政策であると考えられているようですが、実はそうでもないとの調査結果もあります。"Wall Street Journal" の記事では、Wall Street Journal/NBC News が12月5-8日に実施した世論調査によれば救済賛成が46%、反対が42%だったようです。サイトではいくつか典型的な市民の声などが紹介されています。
米国の連邦破産法制や自動車産業に対する産業政策などは、はなはだ不案内で専門外ながら、一応、やや現状維持バイアスがかかっている可能性を自覚しつつ、簡単にメモを取りまとめておきます。結論は出ないかもしれませんが、もう少し考えます。
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昨日、アジア開発銀行 (ADB) が半年に1度の "Asia Economic Monitor, 2008 December" が発表されました。アジア途上国の成長見通しは2007年実績の9.0%から、今年2008年は6.9%、来年2009年は5.8%と大きくスローダウンすると予想しています。下の表は詳細な PDF のリポートの pp.30 から引用しています。下の3行は先進国の見通しになっていて、2009年は日米欧とも枕を並べてマイナス成長となっていますから、アジア途上国が5%超の成長を達成するのは大したもんだという気もしますが、5%台の成長率では大きく減速と称するべきなのでしょう。デカップリング論は完全に破綻したと言えます。
現在の世界規模での金融経済危機のアジア経済への影響について、今回の "Asia Economic Monitor" では "Special Section" として、pp.46 から "Global Economic Crisis: Impact and Challenges for Emerging East Asia's Financial Systems" という章を設けて、Q&A 方式で論じています。銀行部門の資産の評価損の大きさがアジアでは欧米に比べて圧倒的に小さいことがアジア経済の強みのように取り上げられている一方で、マイナスの影響が大きいケースとして、(1) 証券市場への外国人参加比率が高い場合、(2) 銀行が短期の外貨借入れに依存している場合、(3) 経常収支赤字を抱えている場合、の3ケースではインパクトが大きいとしています。下のグラフは pp.51 から引用していますが、経常収支赤字と短期借入れと証券市場での外国人保有高の合計を "External vulnerability ratio" と定義して横軸に取り、縦軸の対米ドルで見た年初来の為替の減価率と相関があることが示されています。大雑把に言って、グラフの右下にあるほど苦しいわけで、外貨不足の恐れがある韓国経済の苦境は広く報じられている通りですし、私が3年間駐在したインドネシアも "External vulnerability ratio" は韓国以上に大きくなっているようです。
なお、人によっては興味ないかもしれませんが、今回のリポートでは pp.76 以降に約3ページにわたって、"Chronology of a Crisis" として、昨年6月22日のベア・スターンズ証券の仕組み債への償還停止から始まる現在進行形の金融危機の日付順のイベントが取りまとめられています。シラッと今年の9月15日に "Investment bank Lehman Brothers declares bankruptcy." という記事が私の目に止まってしまいました。
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リーマン・ショック以降、TIBOR の上昇が止まりません。今週に入って0.9%を超える水準まで上がってしまいました。メディアでも注目し始めて、今日の朝日新聞などで取り上げられています。私のこのブログでも TIBOR のグラフはちょうど1週間前の12月4日に書きましたので、朝日新聞の記者の方にこのブログをお読みいただいているのかもしれません。冗談はさて置いて、朝日新聞の思いっ切り長期のグラフに触発されて、私も少し長めに書き直してみました。前のは9月からだったんですが、6月からに改め、直近までデータを延ばしてみました。以下の通りです。12月4日付けのエントリーと同じで TIBOR 3か月物のデータです。単位は言うまでもなくパーセントです。
東京銀行間金利の上昇の要因は日銀の金融政策にも求められるべきで、3か月のターム物の供給が1月以降になっているので、年末資金需要に応えられていない可能性があります。それを見るために、日米の中央銀行のバランスシートは以下のようになっています。ちょうど、昨夜のエントリーで示した国際決済銀行 (BIS) の四半期報の3つのグラフのうちの一番上のに当たるものです。日銀が営業毎旬報告として10日ごとに発表しているのに対して、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) は週ごとに発表していますので、横軸が一致せずグラフを分けてあります。上のパネルの黄色が日本で単位は兆円、下の水色が米国で兆ドルです。昨夜のエントリーの繰返しになりますが、日銀が渋っているのか、日本の金融情勢がいまだ逼迫していないのか、議論の分かれるところでしょう。でも、TIBOR がここまで上昇して来ているんですから、前者だと考えるエコノミストがいても不思議ではありません。中央銀行の資産拡大については自国通貨に対する影響、すなわち、特に大幅なバランスシート拡大を行って来た FED の場合は資産内容が悪化・毀損するとドルへの信認が低下する恐れを指摘する向きもありますが、少なくとも、日銀の場合は国庫納付金が減少してインプリシットに財政の悪化をもたらす可能性があるだけで、円への信認低下はなさそうな気がします。また、ここに来て、FED の方はバランスシート拡大も一段落して来ているように見受けられます。ノーベル賞を受賞したクルーグマン教授が "New York Times" や "Fortune" なんかのコラムで以前よく使っていた表現を借りると宿題を終えたのかもしれません。
ということで、政策金利の目標と実際の取引結果は以下のグラフの通りです。金利ですから、上下いずれのパネルのグラフも単位はパーセントで、赤の折れ線が目標値、青が実際の市場での取引金利です。左軸を見れば歴然ですが、上のパネルが日本、下が米国です。実際に市場で取引されている FF 金利は0.1%台前半まで下がっています。日本も12月に入ってから日銀が新たな貸出制度を設けて、市場で実際に取引されているコール金利は目標水準を下回って推移するようになっています。実は、上のグラフの日銀バランスシートは11月下旬までのものですので、12月に入って新たな貸出制度が出来てから日銀資産はそれ相応に拡大しているのかもしれません。バランスシートの拡大に伴ってコール金利が低下している可能性はあります。仮にもしそうだとすれば、日銀もせっせと宿題をやり始めた可能性があります。
最後に、今夜のエントリーとは何の関係もありませんが、クルーグマン教授のノーベル賞受賞記念講演がノーベル財団のホームページで公開されています。44分のビデオとともに、20枚余りのスライドもダウンロードできます。"New York Times" のコラムで繰り広げているようなブッシュ政権批判を入れるのかと思っていたんですが、さすがに上品にまとめている気がしないでもありません。
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今日も内閣府から機械受注統計が発表されました。ヘッドラインの統計について、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
内閣府が10日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は8997億円と、前月に比べて4.4%減った。減少は2カ月ぶり。世界的な景気後退を受けて、自動車など輸出が多い産業からの受注が減った。当面の設備投資は低い水準にとどまりそうだ。
10月の実績は日経グループのQUICKが民間調査機関27社に聞いた事前予測の平均値(前月比4.2%減)とほぼ同じだった。内閣府は基調判断を3カ月連続で「減少している」とした。
グラフは2枚あります。上のパネルは機械受注統計のうち、電力と船舶を除く民需、いわゆるコア機械受注と呼ばれる指標の推移です。右軸の単位は兆円です。青が季節調整済みの系列で、赤は後方6カ月移動平均です。影を付けた部分は景気後退期で、直近のピークはいつもの通り昨年10月と仮置きしています。明らかに減少傾向にあるのが見て取れます。中身を見ても、日経新聞の記事の引用にもある通り主力輸出セクターが軒並みマイナスになっています。誰がどう考えても、この先、設備投資が上向く気配はありません。それどころか、後で船舶に関連して書くように、資源高の余韻を引きずっている部分もあり、さらに下降線をたどる可能性が大きいと考えるべきです。来年、あるいは来年度中は現在の景気後退局面が続くと考えられる有力な根拠でしょう。
で、上のグラフの下の方のパネルは機械受注のうちの船舶に関するデータで、影を付けた景気後退期については上のパネルと同じなんですが、赤い折れ線が船舶の受注残高で、単位は右軸の兆円、青は手持ち月数で受注残高を最近3カ月の販売額で割ったものです。単位は左軸の月数です。別の観点から、下のパネルのグラフについて、先月11月10日付けのエントリーを微妙に訂正します。すなわち、「受注の手持ち月数がたくさんあれば大丈夫というのは間違い」と書いた結論部分は基本的に正しいと考えているんですが、現在、船舶の受注手持ち月数が上昇しているのは、私はもっぱら販売不振だと考えていたところ、実は、データを調べてみると確かに受注残高も増加していることが判明しました。販売不振だけが受注手持ち月数の上昇をもたらしているわけではなく、受注の増加もあることを確認したわけです。でも、今日発表されたの機械受注や先週12月4日に取り上げた法人企業統計調査などを見ていても、輸送機械や電機などの日本の主力輸出産業が設備投資抑制を鮮明にする一方で、エネルギー高に支えられていた素材産業などがまだ設備投資を増加させる傾向も残っており、私の同業者エコノミストは「余熱」と称したりしていますので、船舶の受注が増加しているのもこの「余熱」の一種と考えられます。米国エネルギー省の短期予測によれば、2008年、2009年と世界の石油消費はこの30年で初めて2年連続で減少すると予想されていますから、遅かれ早かれ、原油などの資源高の影響は剥落するものと私は考えています。従って、資源高とともに2002年後半から始まった船舶の受注残高の増加も終焉する可能性が高いと考えるべきです。もちろん、素材産業などの設備投資も同じです。悪くすると、造船業は前世紀末までのカギカッコ付きの「構造不況業種」に舞い戻るかもしれません。造船業が基幹産業の一つである長崎経済の先行きは決して楽観できません。
さて次に、12月8日に国際決済銀行 (BIS) が四半期報を発表しました。リーマン・ショック後初めての四半期報ですので少し注目しましたが、実は、ほとんど読んでいません。そこで、PDF で提供されているリポートからいくつか目についたグラフだけを上に掲げました。一番上のパネルは主要先進国中央銀行の資産です。何度もこのブログで指摘しているように、リーマン・ショックを境に流動性供給のために各国中央銀行はバランスシートを急拡大させています。日銀のバランスシート拡大のピッチが各国中央銀行と比べて緩やかなのは、日銀がケチッていると見るのか、日本の状況が各国よりもマシだから、その必要がないと考えるのか、見方は分かれるような気がします。真ん中のパネルは2000年以降のキャリートレードです。日本円とスイス・フランを原資に豪ドルとNZドルに投資された分のようです。日銀副総裁の西村教授が「東京の主婦」と呼んだものです。でも、2000年1月1日を100とした指数でピークはせいぜい250くらいのものだったのかと、改めて、キャリートレードで騒いでいたころを懐かしんでいます。キャリートレードが巻き戻して円高が進んだのは確かですが、「東京の主婦」はチューリッヒの小鬼ほどのパワーがあったかどうかは議論が分かれそうな気がしないでもありません。最後のパネルはブレーク・イーブンで計測したインフレ率です。よく知られた通り、物価連動債と名目金利債との利回りの差で、期待インフレ率の代理変数と考えられています。グラフをよく見ると、日本だけ rhs = right hand side とされていて、夏ころからブレーク・イーブンで計測される期待インフレ率はマイナスを記録しており、市場参加者は日本が再びデフレに陥ることを予想しているようです。
最後に、世銀の経済見通し "Grobal Economic Prospect 2009" が発表されました。世界各地域の成長率は上のグラフの通りで、日本は2008年+0.5%成長に大きく鈍化した後、2009年は▲0.1%のマイナス成長、2010年になって+1.5%成長に戻ると予想されています。この時期の国際機関の経済見通しについては、経済開発協力機構 (OECD) の経済見通し "Economic Outlook" を私は圧倒的に重視していますので、世銀の経済見通しは軽く触れるにとどめます。
報道で知ったんですが、来年1月29日に内閣府で景気動向指数研究会が開催され、景気の山の判定を行うようです。私の感触では昨年の10月か11月が山ではなかったかと思っていますが、どのような結果が出るのか注目しています。
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今日は内閣府からGDP統計改定値と景気動向指数が発表されました。GDP統計は7-9月期、景気動向指数は10月の速報です。GDP統計改定値はエコノミストの業界で2次QEと呼ばれている指標です。今回はGDPの確報値に合わせて過去にさかのぼって改定されています。まず、GDP改定値の計数は以下の通りです。基本的に、名目GDPが名目値であることを除いて、季節調整済みの実質値の前期比伸び率をパーセント表示したもので年率化はしていません。ただし、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度で、GDPデフレータだけ前年同期比伸び率となっていますが、いずれも単位はパーセントです。作表の際には正確を期しているつもりですが、転記ミスがあり得ますので、より正確な計数は内閣府のホームページを参照するようオススメします。
需要項目 | 2007/ 7-9 | 2007/ 10-12 | 2008/ 1-3 | 2008/ 4-6 | 2008/7-9 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産GDP | +0.5 | +0.5 | +0.6 | ▲1.0 | ▲0.1 | ▲0.5 |
民間消費 | +0.0 | +0.0 | +0.9 | ▲0.7 | +0.3 | +0.3 |
民間住宅 | ▲8.7 | ▲10.1 | +4.7 | ▲2.6 | +4.0 | +3.9 |
民間設備 | +2.4 | +0.2 | +0.3 | ▲2.1 | ▲1.7 | ▲2.0 |
民間在庫 * | +0.0 | +0.1 | ▲0.3 | +0.0 | +0.0 | ▲0.2 |
公的需要 | ▲0.8 | +1.8 | ▲1.3 | ▲0.9 | +0.1 | ▲0.3 |
外需 * | +0.5 | +0.3 | +0.5 | ▲0.0 | ▲0.2 | ▲0.2 |
国内総所得GDI | +0.4 | ▲0.2 | ▲0.0 | ▲1.5 | ▲0.6 | ▲1.0 |
名目GDP | +0.3 | ▲0.2 | ▲0.4 | ▲1.4 | ▲0.5 | ▲0.7 |
雇用者所得 | +0.7 | +0.0 | +0.0 | ▲0.9 | ▲0.2 | ▲0.2 |
GDPデフレータ | ▲0.5 | ▲1.3 | ▲1.4 | ▲1.5 | ▲1.6 | ▲1.6 |
続いて、グラフなんですが、上のパネルは折れ線グラフで示したGDP前期比伸び率に対する各コンポーネントの寄与度を積み上げ棒グラフにしたもので左軸のパーセント表示、下のパネルは実質値の国内総生産 (GDP) と国内総所得 (GDI) の実額の折れ線グラフ、そして、その差額の交易利得の実額の棒グラフです。下のパネルの単位はいずれも兆円で、GDP と GDI は左軸、交易利得は右軸です。各グラフの色分けは凡例にある通りです。交易利得は現在2000年である基準年からさかのぼるに従ってプラス幅が大きくなり、離れるに従ってマイナス幅を大きくする統計的な特徴があるんですが、それにしても、最近時点での交易利得のマイナス幅が約30兆円と大きいのが見て取れます。しかし、これも原油価格の大幅な下落などにより、そろそろ一息つきそうな予感はします。
先週12月5日付けのエントリーでは「消費と設備投資が下方改定され、在庫投資は上方改定される」と書いたんですが、消費はほぼ変わらずで、設備投資は下方改定されたにもかかわらず、在庫は下方改定されました。鉱工業生産や法人企業統計調査などを見る限りは在庫投資が下方改定されることは考えられないんですが、GDP確報の発表に合わせた季節調整指数の改定の影響か、流通段階にある在庫の考慮なのか、私にはよく分からない何らかの技術的な要因で在庫投資が下方改定されています。従来から、私は売行き不振に起因する後ろ向きの売残り在庫が積み上がって来ていて、在庫調整が本格的に始まるとドカンと在庫が大きくマイナスに転じる可能性を指摘していましたが、ひょっとしたら、この心配は減じたのかもしれません。よく分かりません。いずれにせよ、1次QEから2次QEに大きく下方改定された要因のかなりの部分は在庫で説明できるような気がします。
次に、景気動向指数です。上のグラフの通りです。青い折れ線が一致系列、赤が先行系列です。影を付けた部分は景気後退期で、直近はいつもの通り昨年10月のピークと仮置きしています。景気動向指数は今年4月から以前の DI に代わって CI が採用されるようになり、方向感だけでなく量感も読み取れるようになりました。そこで、上のグラフに現れるうち、1990年以降の景気後退期における山谷とその間の CI 一致系列の下落幅を比較すると、以下のような表が出来ます。なお、この表の山と谷はあくまで CI 一致系列におけるものであり、いわゆる景気循環日付とは微妙にズレを生じています。
山 | 谷 | 下落幅 |
---|---|---|
1991年1月 103.5 | 1993年12月 79.9 | ▲23.6 |
1997年5月 95.8 | 1998年10月 84.0 | ▲11.8 |
2000年12月 95.4 | 2002年1月 84.0 | ▲11.4 |
2007年10月 105.5 | ?年?月 ? | ▲? |
バブル後の景気後退局面では CI 一致系列はさすがに▲23.6ポイント下げましたが、1990年代終わりと2000年代に入ってからの2回の景気後退局面では▲11ポイントほどの下げ幅で止まっていました。現在の景気後退局面では、一致系列は直近の2008年10月に97.6を記録しましたので、ピークの昨年10月からすでに▲7.9ポイント下げていますし、実は、先行系列に至っては、2007年6月の99.1から2008年10月の85.0まで、早くも▲14.1ポイントも下げています。従来から、私は今回の我が国における景気後退局面は浅くて長いと主張して来たんですが、このあたりで大きく主張を変更します。この先、現在の雇用情勢などを考え合わせると、来年ないし来年度いっぱいは景気が反転する兆しもなく、このまま景気後退が長引くことが十分に予想されます。今回の景気後退局面は長いのはいうまでもありませんが、決して浅くはありません。バブル後の景気後退と比べるのは時期尚早な気もしますが、やっぱり、深くて長い景気後退であると考えを変えます。
今夜はいつもの通りの火曜日で帰宅が遅くなったんですが、GDP統計という重要指標が発表されたのに加え、景気動向指数などに従って、来週の日銀短観を待たずに私の今次景気後退局面に対する考えを大きく変更しましたので、少し時間をかけて図表も入れて長くなってしまいました。
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12月5日金曜日に発表された11月の米国の雇用統計は大幅な悪化を示しました。非農業部門雇用者数は季節調整値で▲55.3万人減と、事前予想の▲33万人減を大幅に超え、第1次石油ショック以降の最大を記録しました。さらに、8-10月の雇用者数も改定され、この期間に職を失った人は改定前のほぼ倍だったことが明らかにされました。失業率も同じく季節調整値で6.7%と前月より0.2%ポイント悪化し、これも十数年振りのことです。市場の事前コンセンサスの6.8%にほぼミートしました。特に、企業・専門サービスのうちの一時雇用が大きく減少しており、これは雇用の先行指標と考えられているだけに、先行きも雇用の軟調が続くと予想されます。今夜は少し長めに1980年からの米国雇用統計をプロットしたのが下のグラフです。いずれも季節調整値で、上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差、左軸の単位は千人です。下のパネルは失業率、単位はパーセントです。影を付けた部分は景気後退期です。直近は昨年12月がピークに修正してあります。
しかし、他方で、11月28日の感謝祭の翌日、いわゆるブラック・フライデイ以降サイバー・マンデイまでのクリスマス商戦の序盤は、全米小売業協会 (NRF) の記者発表に従えば、4日間でインターネット販売も含めて全米の小売店を訪れた買い物客数は172百万人を超え、前年同期の147百万人より大幅に増加し、いわゆる客単価も平均 $372.57 と昨年の $347.55 よりも7.2%増となっています。この結果、この期間における支出総額も410億ドルに上るとしています。要するに、クリスマス商戦の出足は絶好調なわけです。この要因としては、報じられているように、小売店の値引きに顧客が殺到したとか、この4日間に予定の買い物を終えた割合が昨年の36.4%から39.3%に上昇して、ショッピングを前倒しした結果、とか、それぞれ真実なんでしょうが、報道されずに忘れられている要因がひとつだけありますので、私のこのブログで指摘しておきたいと思います。それはガソリン価格の低下です。下のグラフは米国エネルギー省が公表しているガソリン価格、ガロン当たりセントのデータです。今年に入ってから、週ごとのデータをプロットしてみると、年央にガロン4ドルを超えていたガソリン価格が先週12月1日の時点では1.81ドルまで低下しています。米国労働省の2007年家計支出統計によれば、平均で家計の税引き後所得 $60,858 のうち、ガソリンとモーターオイルに支出されたのは $2,384 に上りますから、モーターオイルはよく分からないながら、平均的な家計でガソリン支出は所得の4%近くに達します。今年は特に年央には原油価格がバレル当たり150ドル近くまで上昇したため、ガソリン価格もガロン4ドルを上回って推移しており、月によってはラクに所得の5%を超えていたと考えられますから、クリスマス商戦に入る11月末から12月初にかけて、年央に比べて家計所得の2-3%くらいの余裕が出来たとしても不思議ではありません。でも、少なくとも、上で引用した NRF の記者発表の数字は、私の想定する範囲を超えていますので、小売店の値引きや消費者の前倒し購入も大いに効果があったと考えられます。と言うことは、たとえ出足が絶好調であったとしてもサステイナビリティには疑問が残り、終盤のクリスマス商戦が失速する可能性も大いにあり得ます。
いずれにせよ、原油価格はすでにバレル40ドル近辺まで下落して来ており、半年でバレル100ドルほど低下したことになりますが、当然ながら、この先半年でもう100ドル下落する余地はなく、ガソリン価格下落によって家計の実質所得が増加する効果も限定的でしょうから、雇用情勢の悪化に従って消費もラグを伴いつつ減退する可能性は高いと考えるべきです。
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昨日の雪混じりの雨のお天気とは打って変わって、今日はこの季節にしてはいい陽気だったので午後から外を出歩いていました。まず、手袋を買いに行きます。昨日出かける時にあらゆる荷物をチェックしたんですが、なぜか手袋が見つかりませんでした。昨日の夕方なんかは、ホントに寒くて手がかじかんでしまい、その昔にやっていたんですが、零下30度だか40度だかの世界ではバナナでクギが打てます、というコマーシャルを思い出して、自分の指でクギが打てるんではないかと思ってしまいました。もともと、私はポケットに手を入れて暖を取るよりも、手袋の方があらゆる意味で、すなわち、お行儀やファッション的には言うまでもなく、両手を使えますから機能的にも、安全面からも優れていると考えています。と言うことで、適当な手袋を買い求めます。
買い物を済ませて適当にアチコチ散歩したり、喫茶店に入って読書したりした後、少し早めにケンタッキー・フライドチキンに入って夕食にしました。長崎に単身赴任してからも、それまでの習慣でスーパーの惣菜なんかを買って帰って家で夕食にしていたんですが、結果として、大量のプラスチック・トレーなんかのゴミを出すことになり、ボチボチ、外食も取り入れています。電停から歩いて宿舎に帰る途中のお店に入ってチャンポンやお好み焼きで済ませることが多いんですが、今日は週末で時間もありお天気もよくて少し足を延ばしました。お店に入ると、3つあるカウンターのうち、1つはクリスマス向けのパーティバレルなんかの予約専用になっています。12月に入って1週間が過ぎて、喫茶店に入った時も BGM はクリスマスソングばっかりでしたし、街はクリスマスの雰囲気があふれています。少し早い時間帯だったので席はガラガラでした。と、私の前にカウンターに並んでいた50半ばのオジサンが少し向こうの席に座っていたんですが、やおら割箸を取り出してフライドチキンを食べ始めます。お行儀やファッション的には少し疑問を感じなくもないですが、お箸に慣れた日本人としては機能的には非常に優れたアイデアだと感心してしまいました。長崎に来てから、ケンタッキー・フライドチキンに入って食事をしたことは2-3度ありますが、いつも油で手がベトベトして困っていましたので、次の機会があれば私もマネしてみたいと思います。
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昨夜のエントリーを「世界中どこでもみんな不景気なんです。」で締めくくった後に、米国の雇用統計が発表されました。詳しくは日を改めて取り上げますが、誠に不景気極まりない統計でした。いくつか、外国メディアのサイトから記事ページをリンク付きでリストアップすると以下の通りです。
米国の雇用統計について、上と同じ "Wall Street Journal" のサイトから失業率と非農業部門雇用者数の前月差をプロットしたグラフを引用すると以下の通りです。なお、いつもの "New York Times" に掲載されている "Labor Picture in November" は引用しませんが、リンクを張っておきます。
米国に次いで不景気なニュースはドイツです。ドイツの中央銀行であるドイツ連銀が来年とさ来年のドイツ経済見通しを発表しました。来年の経済成長率は▲0.8%と予想されています。ほかの主要な経済指標の見通しは以下の表の通りです。詳細なドイツ語のリポートから引用しています。一番上の BIP (real) が実質成長率、ドイツ語の Bruttoinlandsprodukt の省略形です。1行置いて、GDPコンポーネントです。大雑把に雰囲気なりとも理解できる人が多いことを願っています。労働市場 Arbeitsmarkt の欄の Erwerbstätige が雇用者数の増減率で、2009-2010年とも▲0.5%の減少を見込み、1行置いて失業率 Arbeitslosenquote は2009年8.1%、2010年8.5%と上昇を続けると予想されています。物価上昇率はヘッドラインが Verbraucherpreise で、2009年は0.8%に急低下した後、2010年には1.4%と考えているようです。次の行の "ohne Energie" はもちろんエネルギーを除く物価上昇率です。リポートを読むと、ヘッドラインの物価上昇率はエネルギー価格の動向次第で来年年央にはマイナスを付けることも想定しているようです。
一応、私は国際派エコノミストを自称していますので、母国語である日本語のほかに英語とスペイン語を理解するマルチリンガルなんですが、ドイツ語とフランス語は電子辞書を片手に読めるだけです。まだフランス語の方がマシで一般紙も必要に応じて読んだりしなくもないですが、ドイツ語は経済分野に限られます。でも、マシな方のフランス語でも会話はムリがあり、パリで道に迷った時はお掃除のオバサンとスペイン語で会話して窮地を脱したこともあります。さらに、ジャカルタに3年間いたんですが、インドネシアやマレーシアで使われているマレー語はサッパリで、ごく普通の日常会話に限られます。経済分野の意思疎通すらムリです。3年も住んでいたにもかかわらず、マレー語は住んだこともないフランス語やドイツ語以下だったりします。ですから、以前にはこのブログでも2007年5月9日付けのエントリーでフランスの "Le Monde" からアフガニスタンの記事を、また、2007年9月26日付けのエントリーではチリの "El Mercurio" からペルーのフジモリ元大統領に関する記事を、それぞれ引用したこともありますが、インドネシアのメディアから引用したことはありません。今日はヒマにしている週末ですので、単なる趣味でドイツ語メディアからも引用することにします。ついては、"Handelsblatt" のサイトから、このドイツ連銀の経済見通しに関連する記事のヘッドライン部分の最初のパラだけを引用すると以下の通りです。
Die Perspektiven für die deutsche Wirtschaft trüben sich rapide ein: Mit dem neuerlichen Einbruch der Auftragseingänge in der deutschen Industrie rechnen Ökonomen für das kommende Jahr mit der schwersten Rezession seit dem zweiten Weltkrieg. Die Bundesbank erwartet einen Rückgang des Bruttoinlandsprodukts (BIP) um 0,8 Prozent.
どうでもいいことですが、英語圏以外では、小数点はコンマで表現する場合が多いと改めて思い知らされます。フランス語でもスペイン語でもドイツ語でも、多くの大陸欧州国の言語では、少なくとも、私が接する限りの経済分野の成長率や失業率や金利などのパーセント表示の際の小数点はコンマです。それから、ドイツ語の新聞は先ほども引用した経済系に強い "Handelsblatt" を見る場合が多くで、ドイツ情報はこれでほぼ十分でしょう。後は、ドイツ連銀が本拠を置くフランクフルトの "Frankfurter Allgemeine Zeitung" を時々見るくらいです。しかし、フランス語の新聞については私も引用したことのある "Le Monde" や "Le Figaro" なんかが日本では有名なんですが、実は、この2紙はやや保守系で政治記事ばかりが多くて、経済系の "Les Echos" なんかも見る必要がありそうな気がします。なお、"Les Echos" は「レス・エコーズ」と発音したりすると、ものすごくフランス人にバカにされます。「レゼコー」と読みましょう。最後に、英国は "Financial Times" だけで新聞は十分と私は考えていて、日本の新聞で取り上げられた範囲で他の新聞のサイトに行くことにしていますが、週刊誌の "The Economist" だけはほぼ毎週のようにチェックしています。風刺の利いたマンガや日本では見かけないグラフなんかの画像を収集していたりします。おそらく私の感触では、インターネット上の英語情報は日本語情報と比べて量の点では2桁か3桁上を行くと思いますので、積極的に活用しています。
さて、米国の雇用統計やドイツ連銀の経済見通しから始まって、書いているうちに、小数点の打ち方から大きく方向転換したついでに、最後は、週末らしい軽い話題を取り上げます。と言うことで、"Time" 誌年末恒例の "Person of the Year 2008" の投票が始まっています。12月19日発売の12月29日号で発表される予定だそうです。上の画像を見て、「オヤ」と思うのは、米国の大統領選挙で共和党の副大統領候補になったアラスカ州のペイリン知事が2人いることではないでしょうか。おそらく、下段真ん中がホンモノのペイリン知事で、上段左の女性はティナ・フェイさんではないかと私は考えています。そんなに大きな自信があるわけではありません。と言うのも、フェイさんはペイリン知事のモノマネで一気に有名になりました。元々はコメディで活躍する女優さんです。どうしてオバマ米国次期大統領や英国のブラウン首相なんかといっしょにこの写真に収まっているかと言うと、今日の時点でトップテンが敬称略で以下のようになっているからです。
軽く想像されるように、ダントツのトップはオバマ米国次期大統領です。2位のメルトン博士と6位につけているベンター博士はナントカ細胞とかゲノム解読の分野の権威で、エコノミストである私の守備範囲外もいいところですからよく知りません。さらに、4位のフェルプス選手と10位のボルト選手は北京オリンピックの水泳と陸上短距離の金メダリスト、8位のピッケンズ氏はテキサスの石油王で大富豪、程度の知識しか私にはありません。後はフェイさんを除いて政治家で、ダントツのオバマ次期大統領と5位のクリントン次期国務長官、7位のペイリン知事、9位のムガベ大統領となっています。特に解説の必要もありませんが、今年選挙のあったジンバブエのムガベ大統領はネガティブな意味で有名なんだろうと私は考えています。と言うことで、なぜかホンモノのペイリン知事の7位に対して、モノマネの方のフェイさんが3位に入って、逆転現象が見られます。あるいは、投票に参加した米国人以外の読者なども含めるべきかもしれませんが、このあたりの米国人の感性は私には理解しかねるところがあります。
昨日から冬本番の寒さに襲われた長崎で、外出するのも億劫になってしまい、ついつい長く書き連ねてしまいました。一応、書出しのトピックに従って経済評論の日記に分類しておきます。
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昨日発表された法人企業統計調査により、ほぼ7-9月期の統計指標が出そろいましたので、来週火曜日12月9日にGDP統計改定値、エコノミストの業界でいうところの2次QEが発表されます。1次QEでは季節調整済みの前期比▲0.1%、前期比年率▲0.4%のマイナス成長だったんですが、この7-9月期の最後の月である9月はリーマン・ショックがありましたし、月を追うごとに景気後退色が強まっていますから、控え目に言っても上方改定されることはあり得ません。どこまで下方修正されるかがポイントになります。
この2次QEについて、シンクタンクや金融機関各社の予想がほぼ出そろいました。金融機関などでは顧客向けに出しているニューズレターで公表する形式の機関もありますし、私もメールなんかに添付してもらっているリポートもあるんですが、いつもの通り、ネットに PDF ファイルなどでオープンに公表している機関に限って取り上げています。下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートが別画面で開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールされてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。なお、リポートは2次QEだけでなく、法人企業統計調査も同時に取り上げている機関があります。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
---|---|---|
日本総研 | ▲0.3% (▲1.0%) | 設備投資が前期比▲1.7%から同▲2.5%に下方修正 |
みずほ総研 | ▲0.3% (▲1.2%) | 設備投資を中心に下方修正 |
三菱UFJ証券 | ▲0.2% (▲0.7%) | 08年7-9月期の実質成長率は下方修正され、年率▲0.7%に |
第一生命経済研 | ▲0.3% (▲1.1%) | 前期比年率▲1.1%に下方修正の見込み |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.2% (▲0.9%) | 小幅に下方修正 |
ニッセイ基礎研 | ▲0.5% (▲1.5%) | 年率1%を超えるマイナス成長に下方修正 |
このブログで取り上げたすべての機関が7-9月期2次QEはマイナス成長と予想しています。昨日の法人企業統計調査の結果を受けて、設備投資が下方修正され、在庫投資が上方改定されるとの見方が多いような気がします。1次QEの発表前の予想を取り上げた11月14日のエントリーをアップした時点では、在庫投資の押上げによって1次QEもプラス成長の結果になると考えていた機関もあったんですが、1次QEが発表された後の2次QEではさすがに見かけません。各機関の予想にそんなに大きな違いは見られず、大雑把に見て、消費と設備投資が下方修正され、在庫投資が上方改定されるのはほぼ共通しているように見受けられます。内需・外需ともにマイナスの寄与度を示すであろう点も一致しています。要するに、国内外ともに景気後退色が強まっているわけです。
ですから、欧州中央銀行 (ECB) もイングランド銀行も大幅な利下げに踏み切っています。ECB は75ベーシス引き下げて2.5%に、イングランド銀行は100ベーシス引き下げて2.0%にしました。日米欧の政策金利の推移は上の通りです。なお、このグラフは朝日新聞のサイトから引用しています。グラフにはないんですが、スウェーデン中央銀行に至っては175ベーシス引き下げて2.0%としました。世界中どこでもみんな不景気なんです。
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やっぱり、火曜日に夜間の講義で帰りが遅くなって、水曜日に教授会があったりすると、ズルズルとトピックを取り上げるのが遅れてしまいますので、このあたりで、stocktaking として、いくつかの話題を取り上げておきます。
まず、軽く財政政策なんですが、このブログで何度も同じことを書いています。最初は、9月22日付けの「麻生総理大臣の財政政策上のインプリケーションは何か?」と題するエントリー、次は、11月5日付けの「社会保障国民会議の最終報告は大きな政府への第一歩か?」、そして、11月19日付けの「日本の社会保障はどのくらい高齢者に手厚いのか?」と続くシリーズで、麻生総理大臣就任の財政的なインプリケーションは大きな政府と行き過ぎた高齢者優遇政策です。私は今回の世界同時不況の下で、短期的には財政出動を容認するとしても、過去の日本の景気後退と比較しても、いわんや、現在の世界各国の景気状況と比較しても、現在の日本の景気後退はそれほど大きなものではないと認識していますので、今回のシーリングの「堅持」から「維持」になり、なし崩し的に財政を拡大するのには懐疑的です。特に、シラッと社会保障の2200億円削減まで反故にされるのは大きな疑問を持たざるを得ません。社会保障費は少なくとも半分が高齢者に回るわけで、少なくともその部分について景気拡大効果は全くないと私は考えています。
次に、金融政策については、ほとんどのメディアやエコノミストが一昨日の日銀の決定を正しく理解していないような気がします。今回の適格担保をシングル A からトリプル BBB に引き下げたり、1998-99年当時に実施された「臨時貸出制度」の企業債務へのリファイナンスの手直しなどは、私が10月30日付けの「明日の日銀金融政策決定会合のポイントは何か?」で主張したように、超過準備に対する付利の裏側で流動性供給のための中央銀行のバランスシート拡大、明示的でないながら量的緩和の始まりにほかなりません。これらの新しい措置を超過準備に対する付利と合わせて理解し、実態的な量的緩和と捉えているエコノミストは日本には少ないように私には見受けられます。おそらく、超過準備に対する付利が銀行間取引から中央銀行の当座預金を通じた資金供給にバイパスするための手段であることを理解していないのが背景だと考えられます。上のグラフは全銀協が発表している TIBOR 3か月物金利なんですが、9月中旬のリーマン・ショックまで0.85%を少し上回るくらいだったのが、9月中旬以降ジリジリと上昇し、日銀が10月31日に金利引下げに踏み切るまで続きました。日銀の金利引下げによって一気に TIBOR も下がりましたが、12月に入ってから元の黙阿弥で0.9%水準に急激に近づいています。サードパーティーに対するリスクプレミアムがここまで大きくなって、銀行間取引が忌避されるようになると、短期資金を銀行間で融通するのではなく、超過準備に付利することにより中央銀行へ吸い上げてから市中に供給する、というのが米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) の考え方をマネたやり方の基本ですが、銀行間取引をバイパスするだけでは単なる代替に止まって、市中への流動性供給が増えないわけですから、反対側で、というか、コッソリと、というか、中央銀行がバランスシートを拡大する必要があるわけです。FED には今年に入るまでターム物のファシリティが乏しかったですから、TAF などを新たに作ってターム物の流動性を供給しています。私は日銀は FED と違ってターム物のオペ手段はかなり充実していると考えていたんですが、やっぱり、足りないとの判断で、実際に、TIBOR が1か月の間に急上昇してしまって、10月末の金利引下げの効果が吹っ飛んでしまったものですから、新たなターム物の流動性供給手段を作り出して、FED と同じように、中央銀行がバランスシートを拡大するという、ある意味で「洗練」された実態上の量的緩和が始まったと考えるべきです。ある意味で、超過準備への付利から来た必然的な結果とも言えます。逆に見ると、一昨年までやっていたような露骨かつ明示的な当座預金残高を操作対象にする量的緩和には消極的と考えるべきなのかもしれません。はたまた、これは露骨かつ明示的な量的緩和への地ならしなのかもしれません。そのあたりの日銀の真意を探るのは公開情報で勝負するエコノミストでなく、別の情報源にアクセスできるジャーナリストあたりの活躍の場ではないかと考えないでもありません。
他方、米国でも金融政策にちょっとした異変が生じています。上のグラフは米国の政策金利である FF 金利の9月以降の推移なんですが、ともに年率のパーセントで赤が誘導目標で青が実勢金利です。現在の誘導目標は1%なのに、市場で実勢取引されている金利はこれを大きく下回っています。しかも、FED は必要準備と超過準備の双方に付利しているんですが、その付利の金利さえ下回っています。付利の金利水準は政策金利の下限を画するものと私は考えていましたが、米国では現状そうなっていません。どうしてかと言うと、FED はあくまで depository institutions に対して、その準備預金に付利するのに対して、フレディマックやファニーメイなどの GSE や国際機関などは NY 連銀に口座を持っていて、準備預金を保有しているにもかかわらず、depository institutions ではないので準備預金に対して付利してもらえないそうです。FED は実態上の量的緩和に入っていることは、私のこのブログでも取り上げていますが、米ドルの流動性がかなり大規模に供給されていることから、FF 金利が誘導目標をかなり下回って推移するのを FED 自身が許容しているのは明らかです。FED がここまで低下した FF 金利を許容するのであれば、日銀の政策金利はもともとが0.3%ですから、量的緩和に入るとともに、誘導目標としてではなく、市場の実勢金利を許容する形でゼロ金利に入ることもあり得るんではないかと私は考えています。もっとも、国際機関が日銀の当座預金勘定を持っているとは思いませんし、国内の政府系の公庫などが保有しているかどうかも知りませんが、かなり、カギカッコ付きの「洗練」された方法によってゼロ金利や量的緩和を実行することも可能ではないかと考え始めています。これまた、明示せずとも超過準備への付利水準である0.1%を下回ってゼロ金利を実行し、露骨に何兆円とアナウンスしなくても量的緩和に移行できることに気付いているエコノミストも少なそうな気がしないでもありません。もっとも、明示した方が効果的であるかどうかは別問題ですが、少なくとも、市場との対話において地ならしにはなりそうな気がしないでもありません。
軽く財政政策を見て、金融政策をしっかり考えた後、最後に、タイトルでも「オマケ」と明記した米国の自動車会社ビッグスリーの救済です。上の表は "Wall Street Journal" のサイトから引用しています。私は10月12日付けのエントリーで「リーマン・ブラザーズ証券は救済すべきだったと考えている」と書きましたが、ビッグスリーも救済すべきだと考えています。CEO たちも反省して自家用ジェットではなく、500マイルの道のりを自動車で議会まで来たようですし、上の表にもある通り、年棒1ドルを宣言しているんですから、何とかするべきであろうと考えています。でも、悪くすると、オバマ政権発足までに GM なんかは資金繰りに窮する可能性もあると言われています。その昔1955年にウィルソン CEO が "What is good for General Motors is good for America" と称したのは、少なくとも現時点では正しそうな気がします。
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本日、財務省から7-9月期の法人企業統計調査の結果が発表されました。3期連続の減収減益で設備投資もふるわず、典型的な景気後退期の企業の姿を見せていると私は考えています。まず、統計のヘッドラインなどに関して日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
財務省が4日発表した2008年7-9月期の法人企業統計によると、企業の経常利益は前年同期に比べ22.5%減り、10兆3034億円になった。減益幅は約7年ぶりの大きさ。世界的な景気減速による売り上げの減少や原材料高が企業収益を圧迫した。設備投資も13.0%減と大幅に悪化。資源高と世界経済の落ち込みで、景気のけん引役だった企業部門が腰折れ状態にある。
売上高は前年同期比0.2%減で、3期連続の減収減益となった。財務省は「世界経済の減速を背景に我が国経済も弱まっている」としている。
まず、設備投資の推移を見ると以下の通りです。引用した記事にもある通り、前年同期比で▲13.0%減と2桁減少を記録しています。しかも、私はこの先さらに設備投資が減少する可能性が十分あると考えています。と言うのは、すでに資源高は終了したにもかかわらず、素材関連産業がまだ設備投資を増加させているからです。特に、石油石炭は+54.8%増、金属製品は+16.3%増、化学でも+11.4%増を記録しています。単純に、ラグがあると見るべきなのだと受け止めていますが、これらの素材関連産業が資源高の終了に伴って生産や設備を調整すれば、設備投資はさらに減少する余地があると言えます。全体として、デフレータ次第なんですが、来週の12月9日に公表されるGDP改定値、いわゆる2次QEの設備投資はわずかに下方改定されるかどうか、下方改定されるとしてもごくわずかな小幅改定になると私は見込んでいます。なお、下のグラフは法人企業統計で集計されたソフトウェアを除く設備投資額、単位は兆円です。
次に、企業活動の結果としての売上と利益について典型的な景気後退期の企業の姿を見ることが出来ます。下のグラフの通りです。いずれも前年同期比の伸び率、左軸の単位はパーセントで、水色の折れ線が売上、赤が営業利益、緑が経常利益です。影を付けた部分は景気後退期で、直近はいつもの通り昨年10月をピークと仮置きしています。最初に書いた通り、売上、営業利益・経常利益とも3期連続の減収減益を記録しました。法人企業統計は資本金1000万円以上という、それ相応の規模の企業の集計結果ですから、法人化されてもいない家族経営の零細企業の状況はもっと厳しいんだろうと考えられます。
最後に、まったくついでながら、労働分配率の推移です。下の赤い折れ線グラフの通りです。単位はもちろんパーセントです。1980年以降のかなり長い期間を取っていますが、季節調整をかけてありませんので、ラインがジグザグしています。影を付けた部分は上のグラフとおなじ景気後退期です。直近の仮置きも上と同じです。少し長めに取ったのは、今までの景気拡大局面で、しかも、その最終盤で労働分配率が上昇したのはバブル景気の時だけだったということを確かめたかったからです。昨年までの景気拡大期は、結局、労働分配率を高めることなく終了してしまいましたが、バブル景気以外はおおむねそうだった気がします。バブル景気の際は景気拡大期の最終盤で労働分配率が上昇したものですから、バブル崩壊直後の景気後退期には75%を超える水準まで達してしまい、その後も長く雇用過剰感が払しょくされませんでした。今回も、景気後退局面が長期化すれば、労働分配率の上昇を背景にリストラ圧力が高まる可能性に注意することが必要だと私は考えています。労働分配率の上昇はよほど力強い景気拡大のバックアップを得ていない限り、実は、雇用者には好ましくないことであることを理解してほしいと思います。
いずれにせよ、繰返しになりますが、本日発表された法人企業統計調査の結果はいかなる観点から見ても、典型的に景気後退期に見られる法人企業の姿だという気がします。
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誠にもって遅まきながらという気はしますが、一昨日、全米経済研究所 (NBER) が、"NBER Announces December 2007 Peak in Economic Activity" として、昨年12月をピークとして米国経済が景気後退局面に入ったと認定しました。印刷用に配慮しているのか、PDF ファイルでも入手可能です。どちらも FAQ がついていたりします。日本のメディアでも日経新聞のサイトなんかでも報じられているのを見かけました。前回の谷が2001年11月でしたから、ほぼ6年、正確には73カ月の拡張期を終えたことになります。なお、遅まきながらと書きましたが、日本の場合はもっと遅くて、景気日付の認定に2年ほどかかってしまう場合もめずらしくありません。最終の第13循環における2000年10月のピークと2002年1月の谷も、実は、いまだに暫定だったりします。
NBER の景気日付委員会の議長はスタンフォード大学のホール教授で、雇用統計からは2007年12月、家計調査からは2007年11月、実質工業生産と卸売統計からは2008年6月がそれぞれ月次のピークであったとし、結局は、雇用統計を重視して2007年12月がピークだったと結論しています。私は昨年10月を米国景気のピークと仮置きしていたんですが、少し早かったようです。日本については、私自身は昨年12月より少し早い10月か11月がピークであったと考えていますので、今回の景気の山は日本が米国にやや先んじた可能性が高いということになります。
上のグラフの通り、米国史上で最も長いと記録されている景気後退局面は、いわゆる大恐慌期に1929年8月をピークとして43か月続いた例がありますが、第2次世界大戦後に限れば、第1次石油危機の後、1973年11月をピークとして16か月、また、1980年代初頭のレーガン政権期にインフレ抑制のために猛烈な金融引締めを実施した際、1981年7月をピークに同じく16か月、というのが最長の景気後退と記録されています。今回はすでに12か月続いており、私の感触では来年前半がもっとも闇の深い大底で、来年いっぱいは景気が回復に転ずる可能性は決して大きくないでしょうから、おそらく、現在の景気後退局面は米国における戦後最長の景気後退として記録にとどまることはほぼ間違いありません。何年か後に歴史家がブッシュ大統領をどのように評価するか、興味深いものがあります。なお、上のグラフは "Wall Street Journal" のサイトから引用しています。
以下は、上にリンクを張っておいた NBER の発表文です。ただし、FAQ は割愛してあります。
Determination of the December 2007 Peak
in Economic Activity
The Business Cycle Dating Committee of the National Bureau of Economic Research met by conference call on Friday, November 28. The committee maintains a chronology of the beginning and ending dates (months and quarters) of U.S. recessions. The committee determined that a peak in economic activity occurred in the U.S. economy in December 2007. The peak marks the end of the expansion that began in November 2001 and the beginning of a recession. The expansion lasted 73 months; the previous expansion of the 1990s lasted 120 months.
A recession is a significant decline in economic activity spread across the economy, lasting more than a few months, normally visible in production, employment, real income, and other indicators. A recession begins when the economy reaches a peak of activity and ends when the economy reaches its trough. Between trough and peak, the economy is in an expansion.
Because a recession is a broad contraction of the economy, not confined to one sector, the committee emphasizes economy-wide measures of economic activity. The committee believes that domestic production and employment are the primary conceptual measures of economic activity.
The committee views the payroll employment measure, which is based on a large survey of employers, as the most reliable comprehensive estimate of employment. This series reached a peak in December 2007 and has declined every month since then.
The committee believes that the two most reliable comprehensive estimates of aggregate domestic production are normally the quarterly estimate of real Gross Domestic Product and the quarterly estimate of real Gross Domestic Income, both produced by the Bureau of Economic Analysis. In concept, the two should be the same, because sales of products generate income for producers and workers equal to the value of the sales. However, because the measurement on the product and income sides proceeds somewhat independently, the two actual measures differ by a statistical discrepancy. The product-side estimates fell slightly in 2007Q4, rose slightly in 2008Q1, rose again in 2008Q2, and fell slightly in 2008Q3. The income-side estimates reached their peak in 2007Q3, fell slightly in 2007Q4 and 2008Q1, rose slightly in 2008Q2 to a level below its peak in 2007Q3, and fell again in 2008Q3. Thus, the currently available estimates of quarterly aggregate real domestic production do not speak clearly about the date of a peak in activity.
Other series considered by the committee - including real personal income less transfer payments, real manufacturing and wholesale-retail trade sales, industrial production, and employment estimates based on the household survey - all reached peaks between November 2007 and June 2008.
The committee determined that the decline in economic activity in 2008 met the standard for a recession, as set forth in the second paragraph of this document. All evidence other than the ambiguous movements of the quarterly product-side measure of domestic production confirmed that conclusion. Many of these indicators, including monthly data on the largest component of GDP, consumption, have declined sharply in recent months.
The committee’s primary role is to maintain a monthly chronology of the business cycle. For this purpose, the committee mainly relies on monthly indicators. It also considers quarterly indicators and maintains a quarterly chronology. In its deliberations, the committee relied on a number of monthly and quarterly economic indicators published by government agencies. The Appendix to this announcement lists these indicators and their sources. The Appendix also describes the calculations required to reproduce the series that the NBER committee examined in its deliberations.
The Month of the Peak
The committee identified December 2007 as the peak month, after determining that the subsequent decline in economic activity was large enough to qualify as a recession.
Payroll employment, the number of filled jobs in the economy based on the Bureau of Labor Statistics’ large survey of employers, reached a peak in December 2007 and has declined in every month since then. An alternative measure of employment, measured by the BLS's household survey, reached a peak in November 2007, declined early in 2008, expanded temporarily in April to a level below its November 2007 peak, and has declined in every month since April 2008. For a discussion of the difference between payroll and household survey employment measures, see Mary Bowler and Teresa L. Morisi, “Understanding the Employment Measures from the CPS and CES Surveys," Monthly Labor Review, February 2006, pp. 23-38.
The committee uses real personal income less transfer payments from the Bureau of Economic Analysis as a monthly measure of output. The deduction of transfer payments places the data closer to the desired measure, real gross domestic income. To adjust personal income less transfer payments from nominal to real terms (that is, to remove the effects of price changes), the committee uses the deflator for gross domestic product. Because this deflator is only available quarterly, the committee interpolates the published series to approximate a monthly price index for GDP. The resulting monthly measure of real personal income less transfers is an imperfect measure of monthly real output because of definitional differences between personal income less transfers and gross national income and because we use the interpolated price index. Our measure of real personal income less transfers peaked in December 2007, displayed a zig-zag pattern from then until June 2008 at levels slightly below the December 2007 peak, and has generally declined since June.
Real manufacturing and wholesale-retail trade sales from the Census Department is another monthly indicator of output. It is an imperfect measure of the production of goods and services for at least three reasons. First, it covers only goods and not services. Second, it does not deduct the sales of imported goods. Because the real value of imports declined substantially over the relevant period, the measure understates the growth of output. Third, the government does not publish a price index corresponding to the coverage of the measure. The committee uses the same interpolated GDP deflator as discussed above. Real manufacturing and wholesale-retail trade sales reached a well-defined peak in June 2008.
The last monthly measure of production is the Federal Reserve Board’s index of industrial production. This measure has quite restricted coverage - it includes manufacturing, mining, and utilities but excludes all services and government. Industrial production peaked in January 2008, fell through May 2008, rose slightly in June and July, and then fell substantially from July to September. It rose somewhat in October with the resumption of oil production disturbed by hurricanes in the previous month. The October value of the industrial production index remained a substantial 4.7 percent below its value in January 2008.
The committee noted that the behavior of the quarterly estimates of aggregate production was not inconsistent with a peak in late 2007. The income-side estimate of output reached its peak in the third quarter of 2007. The product-side estimate reached a temporary peak in the same quarter,
but rose to a higher level in the second quarter of 2008.
The Quarter of the Peak
The committee determined that the peak quarter of economic activity was the fourth quarter of 2007. When the monthly peak occurs in the last month of a quarter, the NBER’s long-standing procedures dates the quarterly peak either in the quarter containing the monthly peak or in the subsequent quarter. Thus, the committee could have dated the quarterly peak in 2008Q1 if it had determined that economic activity was higher in that quarter than in 2007Q4. However, the committee determined that this was not the case. Most notably, both payroll employment and the income-side estimate of domestic production were lower in 2008Q1 than in 2007Q4, and the product-side estimate of domestic production was only slightly higher. The committee found that the peak quarter was the one containing the peak month, 2007Q4.
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Although the indicators described above are the most important measures considered by the NBER in developing its business cycle chronology, there is no fixed rule about which other measures may contribute information to the process in any particular episode.
Committee members are: Robert Hall, Stanford University (chair); Martin Feldstein, Harvard University and NBER President Emeritus; Jeffrey Frankel, Harvard University; Robert Gordon, Northwestern University; James Poterba, MIT and NBER President; David Romer, University of California, Berkeley; and Victor Zarnowitz, the Conference Board. Christina Romer of the University of California, Berkeley, resigned from the committee on November 25, 2008, and did not participate in its deliberations of November 28.
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昨日、『現代用語の基礎知識』選になるユーキャン新語・流行語大賞の発表がありました。大賞が「アラフォー」とエド・はるみさんの「グ~!」で、審査員特別賞が北京オリンピックの準決勝や決勝などを1人で投げ抜いた上野投手の「上野の413球」にそれぞれ授賞されました。より詳しくは2008 ユーキャン新語・流行語大賞のホームページがあります。
私はエコノミストとして、「サブプライム」がどこまで認知されているかにも興味があったんですが、トップテンの選からは漏れたようです。福田前総理の「あなたとは違うんです」はトップテンに入りましたが、受賞は辞退らしいです。当然でしょう。ブームを反映して「蟹工船」がトップテンに入っています。でも、アラサーとか、アラフォーとかは昔からアパレル業界で使われていた用語で新語ではありませんし、単なる一発ギャグの「グ~!」が大賞かね、という気もしないでもありません。
私が少し前に見たノミネートの60語の中に、「上野の413球」以外に、女子ソフトボールの決勝を解説していた宇津木妙子前監督の叫び「よし、よし、よーし!」とか、「神様、仏様、上野様」なんかが入っていて、業界別に見た今年の新語・流行語では、北京オリンピック女子ソフトボールの圧勝に見えました。我がエコノミスト業界はこの方面では認知度が低いのかもしれません。
最後に、全米経済研究所 (NBER) が、"NBER Announces December 2007 Peak in Economic Activity" として、昨年12月をピークとして米国経済が景気後退局面に入ったことを認定しました。日を改めて取り上げたいと思います。
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先週、中小企業金融に関係する商工中金と日本政策金融公庫から相次いで中小企業の景況に関する調査リポートが発表されました。東京で官庁エコノミストをしていた時には、少し前までの景気拡大局面がグローバル化された製造業大企業にリードされていたこともあり、中小企業の情報には関心が高くなかったんですが、長崎に来て中小企業の占めるウェイトが少なくないのを目の当たりにして、私の関心も少し違って来たりしています。まず、調査結果のページは以下の通りで、PDF ファイルのリポートへのリンクもあります。
繰返しになりますが、少し前までの景気拡大局面の特徴は、グローバル市場を最大限活用した大企業製造業がリードしていて、見方を変えれば、輸出に大きな比重があった外需依存型の成長であったとも言えます。そして、現在の景気後退局面の特徴はこれの裏返しで、グローバル市場の縮小に対応したものであることに加えて、金融市場のひっ迫からの資金調達の困難が加わっています。すなわち、輸出の比率が高くて、高額の商品でローンを組む必要があるもの、典型的には自動車などの売行きが他の商品に比べて大きく落ち込んでいるわけです。従って、少なくとも現時点で、比率は不明ながら、小売サービスなど大企業の下請けではないという意味で独立系かつ非製造業の中小企業よりも、大企業製造業の下請けとなっている製造業系の中小企業の景況感がより悪化しているんではないかと私は想像していました。
といった私の基本的な認識を基に、まず、商工中金のリポートを見ると、景況判断指数は下のグラフの通りです。太くて黒い折れ線が製造業、紺色で細いのが非製造業です。グラフにも明示してあるように、11月調査で製造業が32.2、非製造業が37.5、全体で35.1となっていて、おおむね、私の考えをサポートしているように見受けられますが、それにしても、非製造業の景況判断もかなり悪くなっていることが見て取れます。
そして、景気後退が小売業などの非製造業などに幅広く波及するかどうかは雇用にかなり依存します。9月調査の日銀短観の時点では、調査票記入の一部がリーマン・ショックの前だったこともあり、雇用不足感が残っていましたが、中小企業に目を転ずると、商工中金の調査では11月調査から、政策金融公庫の調査では9月調査から雇用の過剰感が現れ始めています。まず、商工中金の雇用状況 DI のグラフは以下の通りです。
次に、政策金融公庫の従業員判断 DI も以下の通りです。いずれも、影を付けた部分は景気後退期ですが、私が書いたグラフだけは直近のピークを昨年10月と仮置きしています。いつもと同じです。
従来からの私の主張である「今回の景気後退局面は浅くて長い」は、震源地が米国の住宅価格という実物資産である以上、価格調整に長期間を要する一方で、日本企業の体力が相当に回復し、ヒト・モノ・カネのムダをなくした筋肉質の効率的な経営になっている、すなわち、雇用や設備の過剰感が払拭され、有利子負債が大幅に減少していることから浅くて済むことを、ひとつの大きな根拠にしていたんですが、後者はかなり怪しくなりそうです。特に、ローンを組む大型商品でグローバル市場での売上げを伸ばして来た自動車などで、非正規雇用のかなりの削減を進めているとの報道もありますし、下請けの中小企業も同じような経営上の困難に直面しているのであれば、この先、雇用が悪化して所得が伸びず、景気後退の波が小売りサービスなどの非製造業に及ぶようになれば、今回の景気後退は長い上に深くなる可能性を排除できません。我が国の雇用を考える上で、中小企業の占める比率は大きなものがあることは言うまでもありません。
雇用の質的な面とも考え得る賃金については、もはや、賃金が上がらなくなったのには慣れてしまいましたが、量的な雇用の動向は製造業での減産がどれくらいまで続くのかにも大きく依存しますが、企業経営の先行き見通しが最大のポイントです。その意味で、今月中旬に公表される12月調査の日銀短観に現れる企業マインドに注目したいと思います。日銀短観を見た上で、私も「今回の景気後退局面は浅くて長い」としている考えを大きく変えるかもしれません。
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