日銀短観は景気の加速度的な悪化を確認
本日、日銀短観が発表されました。ほぼ事前の予想通りで、企業マインドの大幅な悪化と先行きのさらなる悪化懸念が明らかになりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどに関する記事を引用すると以下の通りです。
日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス24となり、2002年3月以来、6年9カ月ぶりの低水準となった。9月の前回調査(マイナス3)から21ポイント低下し、石油危機だった1975年2月と並ぶ過去2番目の悪化幅となった。金融危機によって企業の資金繰りが悪化しているほか、雇用や設備にも過剰感が広がっている。
企業の業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」との回答を引いた値。大企業製造業のDIの悪化は5四半期連続。悪化幅は日本の金融システム不安が深刻だった98年3月(19ポイント)を上回った。日銀は18、19日に金融政策決定会合を開くが、利下げや資金供給などの追加策が必要との声が強まる可能性がある。
要するに、下の表のように、何から何まで、製造業・非製造業別でも規模別でも、現時点も先行きも、どんどん業況判断は悪化しています。下の表は業況判断 DI の最近の変化で、単位は通常通り、「良い」から「悪い」を引いた差の%ポイントです。2009年3月については現時点での見通しです。
2008/9 | 2008/12 | 2009/3 | |
---|---|---|---|
全産業 | ▲14 | ▲24 | ▲38 |
大企業製造業 | ▲3 | ▲24 | ▲36 |
中堅企業製造業 | ▲8 | ▲24 | ▲45 |
中小企業製造業 | ▲17 | ▲29 | ▲48 |
大企業非製造業 | 1 | ▲9 | ▲14 |
中堅企業非製造業 | ▲12 | ▲21 | ▲32 |
中小企業非製造業 | ▲24 | ▲29 | ▲42 |
次に、下のグラフは同じく業況判断 DI をもう少し長めにプロットしたものです。左軸の単位は上の表と同じです。
過去の、例えば、バブル崩壊後の景気後退期でも今回ほど急激な落ち込みはなかったように私は記憶しています。最初に引用した記事によれば石油ショック以来ですから当然です。さらに、多くのエコノミストにショックだったであろうことは、来年3月期にはさらに業況判断が落ち込むように予想されていることです。業種別で大企業を見ると、現在の業況判断 DI のマイナスが最も大きい産業が自動車で、▲68と飛び抜けています。ダントツと言えます。海外市場に依存していることと、何らかのローンを組んで購入する比率の高い大型の高額商品ですので、世界的な景気後退と金融危機の影響をモロに受けていると考えられます。逆に、大企業製造業の中で12月時点でも業況判断 DI でプラスを維持しているのは鉄鋼と造船・重機等の2産業だけです。資源高の「余熱」が残っている産業でしょうから、今後、急速に悪化に向かう可能性を否定できません。
労働と資本の生産要素の不足・過剰感では、とうとう、雇用人員判断 DI が雇用過剰に転換しました。上のグラフの通りです。来年3月の見通しも入れているものですから、これまた、かなりスティープな上昇に見えます。いろんなメディアでも雇用不安に関する報道を見かけない日はなく、現状では報道ベースで非正規雇用中心の雇用調整のように見受けますが、この先の雇用動向が気にかかるところです。また、2008年度設備投資計画もソフトウェアを含み土地を除くベースではかろうじてプラスを維持していますが、これから先、本格的なストック調整局面に入る可能性は十分あると私は考えています。次回の3月調査で明らかになる2009年度の設備投資計画がどのような姿になるか大いに心配しています。
誠についでながら、上のグラフは夕刻に日銀長崎支店から発表された長崎短観の結果です。上のグラフで見られる通り、昨年10-12月期をピークに景気後退局面に入った後は、長崎もほぼ全国と同じ動向を示しているといえます。私はよく知らなかったんですが、日銀長崎支店では6月調査と12月調査では来年の新卒採用も調査していて、2009 年度の新卒採用計画は製造業が前年度比▲10.3%減、非製造業も同▲20.4%減なっていて、当然ながら、全産業でも同▲15.8%減となっています。ますます、学生諸君の就職が心配です。
最後に、今週の注目点は金融政策の動向です。今日から米国の連邦準備制度理事会 (FED) が連邦公開市場委員会 (FOMC) を異例の2日に延長して開催し、日銀も18-19日に金融政策決定会合を開催します。"Wall Street Journal" の記事で報じられているように、FED が政策金利をさらに引き下げて日銀が何もしないと日米の金利差が一気に縮まり、為替が円高に進むことから製造業の業況をさらに悪化させる要因となる可能性があります。
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