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2008年12月30日 (火)

青山の家に帰って朝日新聞を読む

我が家では朝日新聞を購読しています。私が子供のころからそうでした。亡くなった私の父親は、テレビは NHK 、新聞は朝日新聞、書物は岩波書店が信頼できると考えるタイプの人間でした。何となく、私も理解できる気もしないでもありません。日経新聞や産経新聞は一般紙ではないという見方もあり得ましょうから少し別にして、いわゆる全国紙の3大紙の中で考えるとすると、毎日新聞はデフレの時の論調がエコノミストとしては読むに堪えませんでしたし、読売新聞はジャイアンツ中心のスポーツ記事が論外ですから、消去法でも朝日新聞が残るのかもしれません。ですから、青山の家に戻って、帰宅の日から2-3日さかのぼったりしながら朝日新聞を熱心に読んでいます。

最近の記事で目についたのは、東京・渋谷地区の再開発をめぐって三菱東京UFJ銀行が暴力団と関係が深かった関係者に地上げ資金を提供していたことで、これはネットで確認する限り、朝日新聞しか報じていないように私は見ています。昨日にアップした江上剛さんの『統治崩壊』を読むきっかけになった報道でもあります。記事にはほぼ毎回のように簡単な図解入りで報じていたりします。リンクは以下の通りです。

2005年の人口と年齢別投票者数

次に目についたのは、「若者顧みぬ政治に異議 - ルポにっぽん」と題したルポです。上のグラフもこのルポから引用しています。人口ピラミッドに投票数を重ね合わせたグラフで、私が従来から主張しているように、現在の政治が投票率の高い、カギカッコ付きの「大票田」である高齢者層に偏っていることをルポルタージュしたものです。非常に正しい方向からの取材だと思いますので、何点か、私が印象に残ったインタビュー内容を引用したいと思います。引用元の記事は、もちろん、上にリンクを張ったのと同じです。

  1. 政治は投票率が高い高齢者にばかり、目を向けている。昨年の参院選は年金が争点になったが、財源となる保険料を払えない若者の増加は顧みられなかった。
  2. これからは頼る親も退職し、食べることに事欠く人が増える。私たちに残された時間は短いのです。こんな政治は早く崩壊してほしい。その方が再建も早い。
  3. 高齢者の意見ばかり反映される政治ではいけない。ワカモノ民主主義を築かなければ

私は年齢層の差に基づく、カギカッコ付きの「世代間戦争」を回避するために、高齢者に対して利己主義に基づく行動の自制を求めつつ、若年層に対してより積極的な政治参加を促して、両方から政治的なバイアスを是正したいとの立場なものですから、このルポはやや「世代間戦争」の雰囲気を煽りかねないと危惧するものですが、議論を始める方向としては基本的に正しいと考えています。高齢者の利己主義は議論が難しいように感じるんですが、最近では、若年層の投票率からみた政治意識は高まりつつあるように私は感じています。すなわち、下のグラフは財団法人明るい選挙推進協議会のホームページから衆議院議員選挙年齢別投票率の推移のグラフを引用していて、前回の総選挙では、元が低かったせいもあるんでしょうが、20代30代の投票率が他の世代に比べて大きく上がっています。高齢者に偏った政治のバイアスを是正するために、私は、この若年層の投票率が上昇している傾向に大きな期待を寄せています。

衆議院議員選挙年齢別投票率の推移

朝日新聞の記事としては、最後に、私の専門分野で、来年1月29日に内閣府が開催する景気動向指数研究会において、2007年10月が景気循環のピークと認定される見込みとの報道を見かけました。これも、ネットで見る限り、朝日新聞と日経新聞の報道しか見かけません。朝日新聞は「景気後退、07年11月から 内閣府が認定へ」と題した記事で、日経新聞は「景気の『山』は07年10月、内閣府判定へ 回復期、最長の69カ月」と題した記事です。私はすでに今月に入ってからも、何度かこのブログで日本の景気循環のピークについて触れていて、12月3日付けのエントリーで米国の NBER が2007年12月をピークとして米国経済が景気後退局面に入ったと認定したことを取り上げた際には、日本の景気後退局面入りは米国よりも1-2か月早いと書きましたし、12月18日付けのエントリーでは状態空間モデルを使って分析したペーパーに基づいて、勝手に2007年11月をピークと認定しています。内閣府の景気動向指数研究会が2007年10月のピーク認定であれば、私の実感や研究成果にほぼピッタリとフィットします。

ついでながら、朝日新聞から離れるんですが、国際通貨基金 (IMF) が財政政策に関するポジションペーパーを発表しました。"Fiscal Policy for the Crisis" なるタイトルで、サイトから pdf ファイルのリポートもダウンロードできます。金融システムの回復 (repair) から始まって、需要喚起策など、IMF が考える財政政策のあり方を論じている "IMF Staff Position Note" です。日本の麻生総理大臣流の財政政策は、これとは少し違うと感じないでもありません。

週刊ダイヤモンド表紙最後に、やや強引に朝日新聞とメディアつながりということで、右の画像は週刊ダイヤモンドの今週号、すなわち、来年2009年第1号の表紙です。このブログの11月18日付けのエントリーで取り上げたように、香西泰・宮川努・日本経済研究センター [編] になる『日本経済グローバル競争力の再生 - ヒト・モノ・カネの歪みの実証分析』(日本経済新聞社) を、私は今年のベスト経済書として上げておいたんですが、週刊ダイヤモンドの特集その2の2008年の『ベスト経済書』の38位に入っています。私の簡単な評が237ページに2行ほどで手短かに紹介されています。本学経済学部だけでも60人を超える教員がいる中で、選者の経済学者・経営学者・エコノミストのたった213人に私も入れていただいており、誠に光栄なことだと受け止めています。また、8月に長崎へ赴任してから、長崎ローカルのメディアにはテレビ・新聞ともいくつか出ましたが、全国メディアは初めてかもしれません。来年はもっとメディアへの露出を増やしたい気がしないでもありません。

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