日米金融政策の動向を探る
リーマン・ショック以降、TIBOR の上昇が止まりません。今週に入って0.9%を超える水準まで上がってしまいました。メディアでも注目し始めて、今日の朝日新聞などで取り上げられています。私のこのブログでも TIBOR のグラフはちょうど1週間前の12月4日に書きましたので、朝日新聞の記者の方にこのブログをお読みいただいているのかもしれません。冗談はさて置いて、朝日新聞の思いっ切り長期のグラフに触発されて、私も少し長めに書き直してみました。前のは9月からだったんですが、6月からに改め、直近までデータを延ばしてみました。以下の通りです。12月4日付けのエントリーと同じで TIBOR 3か月物のデータです。単位は言うまでもなくパーセントです。
東京銀行間金利の上昇の要因は日銀の金融政策にも求められるべきで、3か月のターム物の供給が1月以降になっているので、年末資金需要に応えられていない可能性があります。それを見るために、日米の中央銀行のバランスシートは以下のようになっています。ちょうど、昨夜のエントリーで示した国際決済銀行 (BIS) の四半期報の3つのグラフのうちの一番上のに当たるものです。日銀が営業毎旬報告として10日ごとに発表しているのに対して、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) は週ごとに発表していますので、横軸が一致せずグラフを分けてあります。上のパネルの黄色が日本で単位は兆円、下の水色が米国で兆ドルです。昨夜のエントリーの繰返しになりますが、日銀が渋っているのか、日本の金融情勢がいまだ逼迫していないのか、議論の分かれるところでしょう。でも、TIBOR がここまで上昇して来ているんですから、前者だと考えるエコノミストがいても不思議ではありません。中央銀行の資産拡大については自国通貨に対する影響、すなわち、特に大幅なバランスシート拡大を行って来た FED の場合は資産内容が悪化・毀損するとドルへの信認が低下する恐れを指摘する向きもありますが、少なくとも、日銀の場合は国庫納付金が減少してインプリシットに財政の悪化をもたらす可能性があるだけで、円への信認低下はなさそうな気がします。また、ここに来て、FED の方はバランスシート拡大も一段落して来ているように見受けられます。ノーベル賞を受賞したクルーグマン教授が "New York Times" や "Fortune" なんかのコラムで以前よく使っていた表現を借りると宿題を終えたのかもしれません。
ということで、政策金利の目標と実際の取引結果は以下のグラフの通りです。金利ですから、上下いずれのパネルのグラフも単位はパーセントで、赤の折れ線が目標値、青が実際の市場での取引金利です。左軸を見れば歴然ですが、上のパネルが日本、下が米国です。実際に市場で取引されている FF 金利は0.1%台前半まで下がっています。日本も12月に入ってから日銀が新たな貸出制度を設けて、市場で実際に取引されているコール金利は目標水準を下回って推移するようになっています。実は、上のグラフの日銀バランスシートは11月下旬までのものですので、12月に入って新たな貸出制度が出来てから日銀資産はそれ相応に拡大しているのかもしれません。バランスシートの拡大に伴ってコール金利が低下している可能性はあります。仮にもしそうだとすれば、日銀もせっせと宿題をやり始めた可能性があります。
最後に、今夜のエントリーとは何の関係もありませんが、クルーグマン教授のノーベル賞受賞記念講演がノーベル財団のホームページで公開されています。44分のビデオとともに、20枚余りのスライドもダウンロードできます。"New York Times" のコラムで繰り広げているようなブッシュ政権批判を入れるのかと思っていたんですが、さすがに上品にまとめている気がしないでもありません。
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