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2008年12月12日 (金)

世界的な金融経済危機でアジア経済は大きく減速

昨日、アジア開発銀行 (ADB) が半年に1度の "Asia Economic Monitor, 2008 December" が発表されました。アジア途上国の成長見通しは2007年実績の9.0%から、今年2008年は6.9%、来年2009年は5.8%と大きくスローダウンすると予想しています。下の表は詳細な PDF のリポートの pp.30 から引用しています。下の3行は先進国の見通しになっていて、2009年は日米欧とも枕を並べてマイナス成長となっていますから、アジア途上国が5%超の成長を達成するのは大したもんだという気もしますが、5%台の成長率では大きく減速と称するべきなのでしょう。デカップリング論は完全に破綻したと言えます。

Annual GDP Growth Rate

現在の世界規模での金融経済危機のアジア経済への影響について、今回の "Asia Economic Monitor" では "Special Section" として、pp.46 から "Global Economic Crisis: Impact and Challenges for Emerging East Asia's Financial Systems" という章を設けて、Q&A 方式で論じています。銀行部門の資産の評価損の大きさがアジアでは欧米に比べて圧倒的に小さいことがアジア経済の強みのように取り上げられている一方で、マイナスの影響が大きいケースとして、(1) 証券市場への外国人参加比率が高い場合、(2) 銀行が短期の外貨借入れに依存している場合、(3) 経常収支赤字を抱えている場合、の3ケースではインパクトが大きいとしています。下のグラフは pp.51 から引用していますが、経常収支赤字と短期借入れと証券市場での外国人保有高の合計を "External vulnerability ratio" と定義して横軸に取り、縦軸の対米ドルで見た年初来の為替の減価率と相関があることが示されています。大雑把に言って、グラフの右下にあるほど苦しいわけで、外貨不足の恐れがある韓国経済の苦境は広く報じられている通りですし、私が3年間駐在したインドネシアも "External vulnerability ratio" は韓国以上に大きくなっているようです。

External Vulnerability and Currency Movements

なお、人によっては興味ないかもしれませんが、今回のリポートでは pp.76 以降に約3ページにわたって、"Chronology of a Crisis" として、昨年6月22日のベア・スターンズ証券の仕組み債への償還停止から始まる現在進行形の金融危機の日付順のイベントが取りまとめられています。シラッと今年の9月15日に "Investment bank Lehman Brothers declares bankruptcy." という記事が私の目に止まってしまいました。

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