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2009年1月30日 (金)

本日発表された経済指標について

本日は月末最終営業日の閣議日ということで、いくつかの経済指標が発表されました。現在の景気局面において、私が重視しているという意味で、今夜のエントリーで取り上げる順に、労働統計、鉱工業生産、消費者物価です。まず、労働関係のグラフは以下の通りです。

労働統計

2つのグラフのうち、上のパネルは赤い折れ線が失業率で左目盛りの単位はパーセントです。青は有効求人倍率で右目盛りの単位は倍です。下のパネルは新規求人数で、左軸の単位は万人です。上下とも季節調整済の計数で、シャドー部は景気後退期です。昨日の内閣府の認定に従って、2007年10月を直近のピークとしています。
11月ころから次のグラフで取り上げる生産が大幅に落ち込み始めて、雇用も派遣や期間工などの非正規労働者を中心に「派遣切り」とか、「雇い止め」と呼ばれる状況を呈して、大幅に悪化して来ているのは連日のように報じられている通りです。12月の失業率は11月の3.9%から4.4%にジャンプしました。就業者数が前月差で▲18万人減少する一方で、失業者数は+34万人増加しています。四捨五入の関係で合致しませんが、差引きで労働力人口は+15万人増加しており、そろそろ、生活が苦しくなって労働市場への参入が増加し始めているものの、就業が難しいという状況と想像されます。有効求人倍率も11月の0.76倍から12月は0.72倍と急速に悪化しています。下のパネルの新規求人数は12月は単月でかなり上向いているように見られますが、グラフにはないものの、有効求人数は減少を続けています。
特に雇用が崩壊しているのは、派遣や期間工などの非正規労働の部分なんですが、今日、厚生労働省から「非正規労働者の雇止め等の状況について」の1月の速報が発表されました。これによると、昨年10月から本年3月までに実施済み又は実施予定として、非正規労働者の期間満了や解雇による雇用調整は1,806事業所、約12.5万人となっています。就業形態別の割合をみると、派遣が68.7%、期間工などが18.6%、請負が8.4%となっています。次に取り上げる生産現場の情勢も含めて、当面、労働市場が改善する兆しは見当たりません。

鉱工業生産

次に、鉱工業生産です、12月の月次データが発表されて10-12月期の4半期データも利用可能となりましたので、在庫循環図も書いてみました。上のパネルは月次と4半期の鉱工業生産指数で、季節調整済の計数です。シャドー部は景気後退期です。下のパネルは4半期指数で描いた在庫循環図で、縦軸が出荷の前年同期比、横軸が在庫の前年同期比で、単位はともにパーセントです。赤の破線は45度線のつもりです。緑色の左向きの矢印で示した1999年の1-3月期から始まって、時計回りにほぼ2周近く循環して、上向き矢印の2008年10-12月期まで達しました。まだ、出荷が大幅に落ち込んで後ろ向きの在庫が積み上がっている局面です。
上のパネルで見ても一目瞭然ですが、バンジー・ジャンプのように生産は落ち込んでいます。12月の単月で▲9.6%減となりました。さらに暗いニュースは、製造工業だけを対象にしている生産予測指数を見ると1月が前月比で▲9.1%減と12月並みの減少に続いて、2月も▲4.7%となっていて、下げ止まる気配すら見えないことです。これを単純に鉱工業全体に当てはめると、もしも、3月が2月と同水準としても、1-3月期は▲20%を超える前期比マイナスとなります。3月もマイナスを記録することはほぼ確実ですから、今年1-3月期には生産の減少が加速することになります。従来からの私の主張の通り、実は、この1-3月期から、ひょっとしたら、4-6月期くらいまでが景気後退局面の中でも最も暗い大底であると考えるべきです。もっとも、さらに、7-9月期がもっと暗かったりして底割れが生じれば、年末にはデフレ・スパイラルを懸念する見方が出るような気がします。いずれにせよ、生産と雇用の調整に目途がつくまで、かなりの時間を要する可能性があります。この生産の落ち込みを考慮すると、非正規雇用にとどまらず、製造業においては正規職員の雇用調整が早ければ1-3月期から始まる可能性が十分あると覚悟するべきです。ついでながら、四半期データを見ると、昨年10-12月期は前期比で▲11.9%の低下となりましたので、鉱工業はGDPの2割強とはいっても、単純にシェアを当てはめるだけでもGDP成長率を▲3%近く押し下げることになります。4-6月期、7-9月期に続いて、10-12月期も3四半期連続でマイナス成長を記録することは確実です。

消費者物価

最後に、昨年年央に比べて大きく注目度を低下させた消費者物価のグラフは上の通りです。9月には全国のコア消費者物価が前年同月比で+2.3%の上昇と日銀の「物価上昇の理解」の上限を超えていたのが、10月+1.9%、11月+1.0%、とうとう12月には+0.2%まで上昇幅を縮小し、年央を待たずにデフレ入りが完全に視野に入りました。先週1月23日付けのエントリーでも主張した通り、このまま本年末を迎えて成長率がプラスに転換せず、物価もマイナスの状態が続くと、本格的なデフレ・スパイラルの可能性が生じかねません。日銀の金融政策の正念場だという気がします。

日経新聞の web サイトを見ると、経済ニュースとしてアップロードされた順番は、以下の通りです。半年ほど前までは消費者物価の注目度が高かったんですが、現在では労働・雇用に注目が集まっています。しかし、繰返しになりますが、生産の先行きを考えると、少なくとも製造業においては、正規職員まで雇用調整が及ぶ可能性を覚悟する必要がありそうな気がしてなりません。

  1. 11:26 失業率

  2. 12:50 鉱工業生産

  3. 16:55 消費者物価

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