米国のマインド調査はオバマ大統領就任で反転するか?
米国東部時間の昨日、1月のISM 製造業景況指数が発表されました。このブログで取り上げるのは初めてかもしれませんが、米国の製造業300社以上の購買担当役員にアンケート調査を実施して作成される指標で、主要経済指標の中では最も早く発表されることから、市場の注目度が高くなっています。50を上回るかどうかで景気を判断する DI と見なされています。これが50を下回っている時点では連邦準備制度理事会 (FED) が利上げしないとも言われています。ただし、歴史的に見て、ホントにそうだったのかどうかを検証したことはありません。昨日発表された結果は、12月からほぼ横ばいとの大方の予想に反して、やや上向きました。12月の指数も少し上方改定されました。今夜のエントリーでは、米国の企業のマインドを ISM 製造業景況指数から、消費者のマインドをミシガン大学の消費者信頼感指数から、それぞれデータを取ってプロットしてみました。一応、お断りしておきますが、消費者マインドであればコンファレンス・ボードの方がサンプル数も多くて、注目度が高いのはエコノミストの常識として知っているものの、アチラのデータは売り物で大学の研究者ごときには入手できないことを言い訳しておきます。
上のパネルが ISM 製造業景況指数で、New Orders、Production、Employment、Supplier Deliveries、Inventories の5項目を均等にウェイト付けして、「増加、減少、変わらず」をポイントとして集計したものが PMI、すなわち、購買部景気指数と呼ばれています。下はミシガン大学の消費者信頼感指数で、1966年の1-3月期を100とした指数です。ミシガン大学の Survey Research Center が発表しているんですが、私はいつもセントルイス連銀のサイトからデータを取っています。
データのバックグラウンドはこれくらいにして、上のグラフを見る限り、まだまだ ISM 製造業景況指数が大きく50を下回っているのは事実ですが、米国の企業・消費者ともに昨年末から今年年初を境にマインドが反転しつつあるような印象を受けないでもありません。実体経済に先行する指標ですので、とっても興味深いところです。実体経済に関する私の従来からの主張は、日本については今年の前半が、米国については今年1-3月期が、それぞれ、今回の景気後退局面の中でも大底で、もっとも暗い闇の中と評価しています。昨日発表された消費のデータでも明らかなように、少なくとも現時点では米国景気が上向く気配すらないと私は考えているんですが、米国の企業も消費者も案外と楽観的なのかもしれません。でも、よくよく考えてみると、これはオバマ効果ではないかという気もしないでもありません。何となくなんでしょうが、新しい大統領が就任して矢継ぎ早に政策を打ち出して、ややマインドが好転しつつある可能性があります。マインドはそのものズバリで「気」のものですから、これはこれで大いに結構なことだと私は受け止めています。逆に、定額給付金への反応に代表されるように、政策への信頼感がない日本よりかなりマシだという気すらします。
実体経済の景気がマインドに左右されるのは、科学的かつ実証的な経済学を標榜する私の考えにそぐわないような気もするんですが、他方、期待に働きかける経済政策の重要性も認識しているつもりですので、それなりに、マインドは重要だろうという気がします。実体経済から見ても、マインドから見ても、日本経済の回復は米国に遅れるんだろうという見通しがさらに強まったような気がします。
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