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2009年3月31日 (火)

悪化を続ける労働統計と底割れしない家計調査、それに大きく下方修正したアジア開発銀行の経済見通し

本日、総務省統計局から今年2月の失業率が、また、厚生労働省から同じく2月の有効求人倍率が、それぞれ発表されました。統計のヘッドラインとなる失業率は季節調整済みの計数で4.4%、有効求人倍率は同じく季節調整済みで0.59倍と、1月の結果に比べて大幅に悪化しました。新規求人数も減少が止まりません。昨日発表された鉱工業生産指数に先行きの明るさが見られるのと対照的な結果となりました。失業率は遅行系列として景気動向指数に採用されていますが、有効求人倍率は一致系列、新規求人数は先行系列ですから、総じて見れば労働市場は引き続き厳しいことに変わりありません。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

厚生労働省が31日朝発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は0.59倍となり、前月比0.08ポイント低下した。2003年2月以来、6年ぶりの低水準。低下幅は1974年12月(0.09ポイント低下)以来、34年2カ月ぶりの大きさだった。有効求人は前月に比べ6.7%減、有効求職者は4.9%増だった。
新規求人は前年同月比で30.1%減少した。産業別にみると、減少が大きかったのは製造業(61.3%減)や情報通信業(38.8%減)など。飲食店・宿泊業(25.7%減)と医療・福祉(6.9%減)は増加から減少に転じた。
総務省が31日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は4.4%となり、前月に比べ0.3ポイント上昇した。完全失業者数は前年同月比33万人増の299万人となり、4カ月連続で増加した。また就業者数は6265万人となり、前年同月より27万人減少、13カ月連続の減少となった。

次に、いつものグラフは以下の通りです。すべて季節調整済みの月次系列で、上のパネルから失業率、有効求人倍率、新規求人数のグラフです。いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。

労働統計の推移

グラフを見ての通りなんですが、2月の労働力調査では季節調整済み計数の前月差で見て、就業者数が▲22万人減、うち、非農林業就業者数は▲31万人減と大きく減少しました。結果として、雇用者数は▲17万人の減少、逆に、失業者数は+19万人増となり、失業率は前月の4.1%から4.4%に高まりました。失業者は引用した記事にもある通り、300万人近いんですが、雇用調整助成金制度を活用した休業者が2月時点で150万人近く存在し、うち 1/3 程度の約50万人は今年に入ってからの増加と言われていますから、この部分が失業していたとすれば失業率は軽く5%を上回っていたことになります。有効求人倍率は前月の0.67倍から0.59倍へと一気に悪化し、加えて、新規求人数は前月比2桁マイナスと激減しました。労働需要に回復の兆しは見えません。

産業別就業者数の増減

主要産業別に非農業就業者数の推移をプロットしたのが上のグラフです。原系列の前年同月差で、左軸の単位は万人です。従来から減少基調の建設業に加えて、2008年に入ってから製造業が大きくマイナスに転じ、2007年前半まで増加を示していた情報通信業もやや後退し、現在では医療・福祉が雇用を支えているのが実情です。非農業就業者数はマイナス基調を強めているように見えます。

家計調査の推移

この結果、家計消費も思わしくないんですが、最近の推移は上のグラフの通りです。消費水準指数、実質家計消費とも季節調整済みの2005年を100とする指数です。通常、注目されている家計消費は2月は前年同月比で▲3.5%減、上のグラフの季節調整済みで前月比+0.3%増となりました。私は統計としての信頼性にやや疑問があると考えていますので、家計調査をこのブログで取り上げるのは初めてかもしれません。しかし、いずれにせよ、現状では家計消費は何とか底割れしないで済んでいるのが実情で、労働需給が大きく緩和したままですから自律的な改善の兆しは見られません。定額給付金でどのような動きが出るのかを注視する必要があります。

Five-year average and forecasts of GDP growth, developing Asia

最後に、アジア開発銀行から「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook 2009 が発表されました。副題は Rebalancing Asia's Growth となっており、経済見通しは上のグラフの通りです。リポートの pp.26 から引用しています。上のグラフをクリックすると、別画面で詳細な表が現れます。詳細表はリポートの pp.296 のTable A1 です。今回のリポートでは2009年のアジア途上国の実質成長率を3.4%と見込んでおり、昨年9月の 2008 update の見通し7.2%からわずか半年で半減を超える下方修正となっています。特に、中国が7%に、インドも5%に成長率を低下させると見込んでいます。また、過度の対外依存を回避するために、以下の5点の政策提言を行っています。ただし、英文で300ページを超えるリポートですから、私も全部を読もうとは思っていません。

  • Strengthening domestic consumption requires policies which transfer more corporate savings to households, as well as policies which reduce the precautionary motive for savings among households.
  • Governments should give priority to enhancing the investment climate rather than quantitative expansion of investment.
  • A more active fiscal policy can mitigate weak external demand in the short run as well as lay the foundation for a more robust domestic demand beyond the short run.
  • Supply-side policies which promote small- and medium-sized enterprises and services industries will increase the relative importance of production that caters to domestic demand.
  • Policies pertaining to financial development and exchange rate will ease the adjustment of both supply and demand toward a more balanced structure.

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