来週発表される日銀短観は過去最悪水準か?
来週水曜日4月1日に3月調査の日銀短観が発表されます。12月調査の結果はこのブログでも12月15日付けのエントリーで取り上げ、ヘッドラインの大企業製造業の業況判断DIが▲24、大企業非製造業が▲9でしたが、3月調査ではこれが大幅に悪化すると見込まれています。まず、日経新聞のサイトから日銀短観の予想に関する記事を引用すると以下の通りです。
民間エコノミストの間で企業の景況感や景気の先行きに厳しい見方が広がっている。日銀が4月1日に公表する3月の企業短期経済観測調査(短観)について日経グループのQUICKが民間予測を集計したところ、大企業製造業の業況判断指数(DI)予測の中心値はマイナス54と、第1次石油危機で景気が低迷した1975年5月以来の低水準に悪化する見通し。09年度の成長率予測は平均でマイナス4.3%と戦後最大の落ち込みが見込まれる。日本経済は回復のきっかけをつかみにくい状況が続きそうだ。
予測はQUICKが集計する「コンセンサス・マクロ」の一環で、日銀短観については25社の中心値を算出した。
この日銀短観について、GDP統計などでチェックしているシンクタンクや金融機関各社のリポートから下の表を取りまとめました。金融機関などでは顧客向けに出しているニューズレターでクローズに公表する形式の機関もありますし、私もメールなんかに添付してもらっているリポートもあるんですが、いつもの通り、ネットに PDF ファイルなどでオープンに公表している機関に限って取り上げています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールされてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 | ヘッドライン |
---|---|---|
日本総研 | ▲56 ▲26 | 内外景気後退の深刻化を背景に、企業マインドが大幅に悪化 |
みずほ総研 | ▲65 ▲28 | 製造業の業況判断DIが過去最悪の水準に |
三菱UFJ証券 | ▲50 ▲29 | 業況判断DIの大幅な悪化が続く。ただし、先行き見通しは改善に |
第一生命経済研 | ▲50 ▲20 | 業況の大幅悪化が続く |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲63 ▲27 | 過去最悪の水準まで悪化 |
ニッセイ基礎研 | ▲53 ▲23 | 今回短観は「景気が戦後最悪の状況」にあることを裏付ける |
三菱総研 | ▲50 ▲25 | 製造業、非製造業ともに過去最大レベルの悪化幅 |
新光総研 | ▲55 ▲27 | 業況判断DIは急速な悪化が継続する見込み |
ついでながら、同じような日銀短観の予想に関する表が朝日新聞のサイトにも見られます。このサイトには短観の簡単な解説もあります。何らご参考まで。
さて、この日銀短観について、ヘッドラインの現状判断DIの結果がもちろん興味を引くんですが、私はこのほか以下の4点に注目すべきだと考えています。第1に、3か月先の6月を想定した先行きDIの方向性です。私はかなりの開きが出るんではないかと考えています。例えば具体的な数字で示すと、3月の現状判断DIよりも6月の先行きDIの方が10ポイントを超えるくらい上向きの数字になると、企業マインドに明るさが見られる兆候と受け止めることが可能なような気がします。実際にロイター短観では16ポイントの改善を見込んでいます。第2に、2009年度の設備投資計画です。どの規模や業種を見ても2桁マイナスの計画であろうことは疑いありません。しかし、6月調査での修正方向も含めて注目であることは確かです。第3に、資金繰り判断DIなどの金融機関の貸出態度が昨年12月調査時点から、どのように変化しているかです。日銀の実施した企業金融支援策であるCPや社債の買取り、政府による信用保証枠の拡充などが効果を上げているのであれば、ひょっとしたら緩んでいるくらいではないかと予想するエコノミストがいても私は不思議に思いません。第4に、雇用判断DIに見られる雇用過剰感が大きくなっているかどうかです。そろそろ学生諸君の就職活動が始まる季節ですので、大学教授としては大いに気がかりなところです。
来週は月曜日に鉱工業生産指数、火曜日に失業率と有効求人倍率などの労働統計、水曜日にはこの日銀短観と、いろんな経済指標が目白押しです。
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