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2009年4月 7日 (火)

景気対策の財政規模を考える際のポイント

麻生総理大臣が昨日の記者会見で真水でGDP比2%、10兆円を超える規模の補正予算を柱とする追加経済対策を取りまとめることを発表しました。今日の新聞の1面で報じられており、内容についても断片的ながらチラホラと報じられ始めています。まず、私が見た範囲で、読売新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

新たな経済対策

【第1章 経済危機克服の道筋】

【第2章 具体的施策】
  1. 緊急的な対策
    1. 雇用対策 ワークシェアリングに取り組む企業へ雇用調整助成金の対象拡大
    2. 金融対策 日本政策投資銀行や商工中金の融資枠拡大で企業の資金繰り支援
    3. 事業の前倒し執行
  2. 成長戦略 - 未来への投資
    1. 低炭素革命▽公共建築物、住宅などへの太陽光発電の導入促進▽エコカーへの買い替えなど普及促進
    2. 健康長寿・子育て▽地域医療再生計画に基づく医療機能の強化や医師確保などの取り組みを支援▽介護職員の処遇改善を行う事業者に3年間の助成金
    3. 底力発揮・21世紀型インフラ整備▽耕作放棄地を再生する農家に補助金を支給▽世界最先端の研究開発インフラを整備▽羽田空港の延伸など港湾や空港のインフラ強化▽公共施設の地上デジタル放送対応を促進
  3. 「安心と活力」の実現 - 政策総動員
    1. 地域活性化等
    2. 安全・安心確保等
    3. 地方公共団体への配慮▽1兆円超の交付金を創設、地方自治体による公共事業の地方負担分は原則9割を国が負担
    4. 政策減税・贈与税の減免、中小企業の交際費非課税枠の拡大、研究開発減税の拡充

報じられている内容については変更もあり得ますし、今夜のエントリーでは、追加経済対策における財政政策の規模を考える上で考慮すべきポイントについて、以下の通り、2点プラスアルファを取り上げたいと思います。

まず、GDPギャップの大きさです。もちろん、財政政策によってGDPギャップをすべて埋めなければならないと考えるエコノミストは少数派でしょうが、少なくとも、GDPギャップを上回る規模の財政出動は意味がないことについては大多数のエコノミストは同意すると思います。GDP統計の発表ごとに公表される内閣府の推計による最新のGDPギャップのグラフは以下の通りです。

GDPギャップの推移

昨年2008年10-12月期の段階で、GDP比▲4%を超える需要不足が生じていることが読み取れると思います。このGDPギャップの先行き予想については、今年の3月時点での日本総研の試算があり、下のグラフの通り、今年2009年中はGDP比▲10%程度で推移すると見込まれています。私が知る範囲でも、GDP比で▲10%を超える需要不足はかなり大きなものだという気がします。繰返しになりますが、この需要不足をすべて財政政策でゼロにする必要はないものの、ある程度の規模の経済対策が必要であることは直感的に理解できると思います。

GDPギャップの推移と長期試算

GDPギャップの次に考えるべきは財政政策の乗数の大きさです。よく参照される内閣府のマクロ計量モデルを用いた試算に従えば、すべて名目ベースで、継続的にGDP1%相当額を公共投資と個人所得税減税により景気刺激を実施するGDPギャップへの影響は以下の表の通りです。

名目ベース1年目2年目3年目
公共投資0.951.000.84
個人所得税減税0.220.530.50

繰返しこのブログで表明したように、私は資金の使途を国民にゆだねる減税を公共投資よりも推奨する立場なんですが、純粋に経済効果だけを考えると、減税よりも公共投資の方がマイナスのGDPギャップを縮小させる効果が大きいことは確かです。小数点以下の細かい桁数まで信頼性があるかどうかは別にして、大雑把に、公共投資で1.0くらい、所得税減税で0.2-0.5くらいの乗数が示されています。

以上のGDPギャップの大きさと財政政策の乗数については科学としての経済学でかなりの程度に計測可能なんですが、加えて、プラスアルファの政策判断が必要です。まず、どこまで財政政策によってGDPギャップを縮小させるのか、あるいは、同じことですが、景気下支えのどの程度までを財政政策による刺激策に頼るのかという選択があります。さらに、今回の財政政策発動には赤字国債の発行による財源が必要であることは確実ですから、まず、目先の話として国債が市場で消化できるかどうか、先の話として、景気回復後の増税を含む税制見直しのあり方などとも大いに関係します。国債の消化については私は何ら問題ないと考えますが、もちろん、国債の需給要因から金利が上がってしまうと財政政策の効果を大いに減殺します。

いずれにせよ、現在の議論は、米国のガイトナー財務長官が言い出したといわれているGDP比2%のカギカッコ付きの「国際貢献」とカギカッコなしの明白な選挙目当ての公共投資拡大論がゴッチャになって、本来の財政政策のあるべき姿が見失われているような気がしないでもありません。エコノミストの意見は置去りなのかもしれません。

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