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2009年4月20日 (月)

国際通貨基金 (IMF) の「世界経済見通し」 World Economic Outlook 分析編

今週末に米国の首都ワシントンで世界銀行と国際通貨基金 (IMF) の総会が開催されます。ついでながら、7か国財務大臣・中央銀行総裁会議 (G7) も開催されます。これに合わせて、IMF の「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) のうちの分析編の第3章と第4章が先週4月16日に発表されています。WEO の副題は Crisis and Recovery となっています。今週末の総会までに見通し編の第1章と第2章も発表されると思いますので、それはそれとして取り上げるとして、今夜は以下の分析編を取り上げたいと思います。なお、これまたいつもの通り、分析編の日本語のサマリーの pdf ファイルもでアップされています。

  • Chapter 3. From Recession to Recovery: How Soon and How Strong?
  • Chapter 4. How Linkages Fuel the Fire: The Transmission of Financial Stress from Advanced to Emerging Economies

まず第3章では、現在の景気後退は金融危機から生じており、かなり深刻であるということが分析されています。わざわざ IMF から言われるまでもありません。そして、かなりの程度に各国で景気が同期 (synchronize) しているという特徴が指摘されています。金融危機に端を発する景気後退についてはラインハート教授とロゴフ教授の一連のペーパーで取り上げられたようなエピソード分析がなされています。なお、両教授の一連のペーパーはハーバード大学のロゴフ教授の Recent Papers に一覧があります。pdf ファイルでアップされているものもあります。下のグラフはエピソード分析の結果から、金融危機に起因する景気後退は長くて深刻であり、その後の景気回復の足取りも緩やかであることが示されています。

Average Statistics for Recessions and Recoveries

そして、景気後退確率が2008年末にはかつてない大きさに達し、しかも、世界中でかなりの程度に同期していることが示された後、これまた当然なんでしょうが、金融部門の信頼回復ともに財政政策を含む需要拡大策により、金融危機に端を発する景気後退であっても、ある程度は景気後退の深刻さの度合いを緩和することが出来ることが示されています。下のグラフの通りです。IMF の言わんとしている結論がにじみ出ているような気がします。

Estimated Median Duration of Recessions

第3章で景気循環を取り上げた後、第4章では金融ストレス指標の面からさらに分析が加えられています。これまた、世界の共通認識なんでしょうが、現在の景気後退は金融上のチャンネルを通じて先進国から世界中に波及しています。下のグラフに見られる通り、赤い折れ線で示された先進国の金融ストレス指標は、かなりの程度に青い棒グラフの新興国にシンクロしています。単純に見ると先進国と新興国の波及の経路は両方向に見えますし、実際に、LTCM の破綻の時のように新興国における金融危機が先進国に伝わることもありますが、少なくとも、今回の金融危機や景気後退は先進国から新興国への波及であることは明らかです。

Comparison of Financial Stress Levels

そして、先進国と新興国の金融上のリンケージを見ると、下のグラフに示されている通り、西欧から新興国への貸出しが大きな割合を占めていることが重要な要因となっています。ここで世界の共通認識と少し違う IMF 独自の意見が見られます。多くのエコノミストはサブプライム・ローン問題に端を発する金融危機は米国で生じて、それが世界に広まったと考えていますが、IMF は少なくとも新興国における金融危機は米国からの直接の影響ではなく西欧発であると分析してます。私が知る範囲でも、特に、新興国において投資銀行が活動する分野では、新興国の国内金融機関に競争力がなく、先進国の投資銀行のシェアが高かったものですから、これが金融面での混乱を大きくしたとも言われています。加えて、IMF は今後の新興国への資金フローが減少し、それが長期化すると分析しています。

Liabilities to Advanced Economies' Banks 2007

以上。大雑把に IMF の「世界経済見通し」の分析編を見ておきました。最初に書いたことの繰返しになりますが、見通し編が出れば、日を改めて取り上げたいと思います。

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