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2009年4月30日 (木)

鉱工業生産指数のリバウンドをどう見るか?

本日、経済産業省から今年3月の鉱工業生産指数が発表されました。ヘッドラインの季節調整済み指数は前月比で+1.6%増と6か月振りのプラスを記録し、市場の事前コンセンサスの+1%弱を上回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。経済産業省は生産の基調判断を昨年11月から続けている「急速に低下している」から「停滞している」に変更しています。

経済産業省が30日発表した3月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は70.6となり、前月に比べて1.6%上昇した。生産がプラスに転じるのは昨年9月以来6カ月ぶり。金融・経済危機の影響などで大幅な生産減少が続いていたが、電子部品や一般機械が在庫調整の進展などを受けて増産に転じた。ただ生産の水準は低く、依然として力強さはない。
3月の生産指数は市場予測の平均(前月比0.9%上昇)をやや上回った。1-3月期では前期比22.1%低下。1、2月の大幅な落ち込みが響いた。
企業は昨秋から大幅な減産を実施してきたが、「局面は変わってきている」(経産省)という。経産省は生産の基調判断を「停滞している」として、昨年11月からの「急速に低下している」から変更した。

まず、いつもの鉱工業生産指数のグラフと在庫循環図は以下の通りです。上のパネルの指数は赤が四半期、青は月次のデータです。影を付けた部分は景気後退期です。下のパネルの在庫循環図は1999年1-3月期から直近の2009年1-3月期まで、四半期ベースの前年同月比のデータをプロットしています。緑色の上向き矢印から始まって、下向きの矢印まで2周近くの循環が示されています。赤の破線は45度線ですから、第3象限に入って景気転換点に近づいています。

鉱工業生産指数と在庫循環

さらに明るい指標は、製造工業予測指数が4月前月比+4.3%増、5月+6.1%増と大幅な上昇を見込んでいることです。在庫調整の進展とともに増産が始まったような印象を受けます。しかし、直近の動向は、4月22日付けのエントリーで貿易統計を取り上げた際に示したように、輸出の回復と財政政策に支えられていることは明白です。上のグラフで見られるように、在庫調整は第3象限に入ったものの、出荷のマイナス幅が減少しなければ赤い波線の景気転換点を超えるには至りません。私は直感的に年央から夏場くらいまで生産の増産が続くと考えていえるんですが、秋口以降の需要動向は極めて不透明です。需要が伸びないようであれば、いつも主張している W 字型の回復パスをたどり、再び生産が減産局面を迎える可能性も十分あります。そのカギを握るのは設備投資と輸出だと私は考えています。
ということで、まず、設備投資については、4月9日付けのエントリーで先行指標となる機械受注を取り上げた際に、「今年半ばに底入れして急回復の fast-in fast-out のシナリオも無視できない確率であり得る」と書いたとおりです。この考えは変わっていません。確率的には、どんなに気前よく見積もっても、1/3 から 1/4 なんですが、無視はできません。次に、輸出については、米国経済の回復待ちともいえますが、昨日発表された今年1-3月期の米国の成長率は年率でまだ▲6%台を続けており、こちらは市場予想を下回りました。昨日まで開催されていた連邦公開市場委員会 (FOMC) のステートメントを読む限り、"the economy has continued to contract, though the pace of contraction appears to be somewhat slower." ということになるようです。また、自動車会社2社の救済についても大詰めを迎えており、クライスラー社については債務削減に合意したとか、決裂したとか報じられています。オバマ米国大統領はクライスラー社について、「最終的に連邦破産法活用が避けられなくなったとしても、とても短期間のものとなるだろう」と述べ、再建に自信を示したと受け取られています。いずれにせよ、まだまだ不透明な要因が多く残されています。世界経済の最大の不透明要因は、何といっても、世界保健機構 (WHO) が警戒レベルを 5 に引き上げた新型インフルエンザなんですが、この先行き見通しばかりは私にはサッパリ分かりません。

米国の経済成長率

最後に、金融政策決定会合を開催していた日銀は政策金利の誘導目標を据え置くとともに、「展望リポート」を決定しました。このリポートにおいて、我が国の潜在成長率が従来の1%台半ばないし後半より引き下げ、1%前後と推定しています。また、以下のような経済見通しを発表しました。4月27日のエントリーで取り上げた内閣府の改定見通しとほぼ整合的な内容になっていますが、割合とスンナリ成長率がピックアップするような見通しになっていて、特に、私のように W 字型の回復パスを想定しているようには見えません。

日銀政策委員の大勢見通し

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