« 長崎県における定額給付金の経済効果 | トップページ | 国際通貨基金の「世界経済見通し」World Economic Outlook (WEO) 見通し編 »

2009年4月22日 (水)

貿易統計は輸出の底打ちを示唆しているか?

本日、財務省から3月の貿易統計が発表されました。3月の速報値は輸出が4兆1823億、輸入が4兆1714億、差引きの貿易収支が110億円と、四捨五入の関係で下1桁はあいませんが、事前の市場のコンセンサスである▲270億円の赤字ではなく黒字となりました。ただし、季節調整済みの計数で見るとまだ▲1000億円近い赤字となっています。2008年度を通じた貿易収支は▲7253億円の赤字を記録し、貿易赤字に転じたのは第2次石油危機の影響を受けた1980年度以来、何と28年振りでした。米国発の金融危機に端を発する世界的な景気後退に加えて、昨夏までの資源価格の高騰などが影響したことは明らかです。まず、いつものグラフは以下の通りです。上から2つのパネルは輸出入とその差額たる貿易収支で、一番上のパネルは原数値、真ん中のパネルは季節調整済みの数値です。いずれも左軸の単位は兆円です。一番下のパネルは原系列の輸出金額の前年同月比を数量指数と価格指数で寄与度分解したものです。単位は前年同月比のパーセントです。

貿易統計の推移

まず、3つのパネルいずれを見ても、単月ではありますが、2月を底に輸出も貿易収支も反転の兆候が見られるのは注目すべきであると私は考えています。地域別に見ると、対米と対アジアで輸出の下げ止まりが見られ、地域別の景気実感とも合致することから、単月に止まる動きではなく、輸出の底入れが近い、あるいは、すでに底入れしたと見なしても差し支えないと私は受け止めています。おそらく、メディアは2008年度を通した28年振りの貿易赤字を大騒ぎして取り上げるでしょうが、直近の統計を正しく見る限り、大いに明るい兆しを読み取ることが可能なことは確かです。例えば、季節調整済みの計数で輸出は3月に+2.2%増となりましたので、鉱工業生産指数も3月はプラスを記録する可能性が高まりました。ただし、先行きについて必ずしも楽観できないのは為替の影響です。足元では1ドル100円を少し切るくらいの水準ですが、少し前まで90円前後の水準を続けていましたし、為替は半年から1年くらいのラグを伴って輸出に影響しますから、控え目に言っても、一直線で輸出の底入れから順調な回復に戻るとは言い切れないと私は考えています。リーマン・ショック後の為替の水準と現在進行形の諸外国の景気回復の足取りの双方に注目すべき時期と言えます。加えて、3月の貿易統計は輸出反転の兆しを見せているものの、1-3月期をならせば外需がGDP成長率に対して引き続きマイナスの寄与を示すことは明らかで、来月に発表される2009年1-3月期の1次QEは2桁マイナスの可能性が高いと考えるべきです。

金融機関の潜在的損失額

最後に、今週月曜日のエントリーでも触れましたが、今週末4月25-26日に米国の首都ワシントンで世銀 IMF 総会が開催され、昨日は、IMF から「世界金融安定化報告」Grobal FInancial Stability Report (GFSR) が公表されました。上のグラフにある通り、2007年から2010年にかけての金融機関の潜在的な損失額 (potential writedowns) は4兆ドルを超えると推計されています。リポート第1章の pp.28 にある Table 1.3 をグラフにしています。昨年10月時点での推計と比較可能なのは米国だけですが、米国金融機関のみの潜在損失額は昨年10月時点で1.4兆ドルと推計されていたのが、今年4月時点では2.7兆ドルまで膨れ上がりました。今週末に世銀 IMF 総会でどのような議論が交わされるのか注目です。

|

« 長崎県における定額給付金の経済効果 | トップページ | 国際通貨基金の「世界経済見通し」World Economic Outlook (WEO) 見通し編 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207184/29241259

この記事へのトラックバック一覧です: 貿易統計は輸出の底打ちを示唆しているか?:

« 長崎県における定額給付金の経済効果 | トップページ | 国際通貨基金の「世界経済見通し」World Economic Outlook (WEO) 見通し編 »