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2009年4月27日 (月)

まったく精緻ではない直感的な経済見通しと下振れリスク

メディアで報じられている通り、内閣府が独自試算で「平成21年度経済見通し暫定試算」を発表しました。経済危機対策の経済効果として今年度の成長率を1.9%ポイント押し上げる効果を見込んだ上で、今年度の成長率を▲3.3%と見通しています。詳細は上のリンクの pp.3 にあり、同じリポートの pp.4 から引用したグラフは以下の通りです。

主な経済指標

今年度の成長率に絞って議論すると、非常に大雑把に、2009年1-3月期が昨年10-12月期の前期比▲3%減、前期比年率で▲12%のマイナス成長と仮定すると、いわゆるゲタは昨年度から今年度にかけて▲3.9%になります。私のように W 字型の景気パスを見込みつつ、年度を通じてゲタよりも少し低めの成長率を想定すると、経済対策の効果を除いて、今年度の成長率は▲4.5%から▲5%くらいではないかと考えられます。ですから、経済対策の効果を2%ポイントくらい見込むと全体の仕上がりとして▲3%くらいの成長率見通しは非常に plausible な気もしますし、やや強気バイアスの私からすれば、逆に、慎重な見方ということも出来なくもありません。
もちろん、下振れリスクも少なくありません。私が可能性が高いと考える順に6つの要因を上げると以下の通りです。第1に、企業収益です。そろそろゴールデンウィークをはさんで、東証が昨年から導入した45日ルールに従って、この3月期決算を発表する企業が多いんですが、企業決算が予想より悪い可能性があります。東証の日経平均株価の上値が重いのも同じ原因ではなかろうかと私は考えています。第2に、為替です。中央銀行の金融政策に負う部分が大きいんでしょうが、日米が政策金利を下げ切った一方で、欧州はまだ金利引下げ余地がありますし、米国ではマネーサプライが日本よりも大幅に増加していますから、一昔前のソロス・チャートを当てはめれば、大きく円高に振れる可能性も否定できません。第3に、物価動向です。今年前半のうちに消費者物価はマイナスになることは確実で、日銀の金融政策次第ではデフレ・スパイラルに陥らないまでも、成長率が大きく下押しされる可能性が残ります。第4に、海外、特に米国の景気動向です。国際機関の成長率見通しなどでも今年の米国はゼロ近傍の成長と見込まれており、豚インフルエンザの動向を別にしても、GM やクライスラーが連邦破産法の11条にファイルすれば、リーマン・ブラザーズ証券の破綻と同等のショックが生ずる可能性があります。米国経済の回復が遅れる可能性は大いにあり得ます。これに伴って、我が国のみならず中国をはじめとするアジア各国が影響を受ける可能性も残ります。第5に、資源価格、特に今回は穀物価格の上昇です。石油についても可能性はなくもないんですが、一度、かなりの高騰を見た後では経済システムとして織り込むことも可能です。しかし、世界の人口増に伴って穀物価格が、少なくとも中長期的に上昇することは確実で、エネルギーよりも技術的な対応が難しそうな気がすることは以前にも書いた通りです。第6に、欧州発の金融危機の再来です。昨年9月のリーマン・ショックに匹敵する欧州金融機関の破綻の可能性は、そんなに高くないとしてもゼロではあり得ません。

ほとんど上振れリスクが見当たらない中で、下振れリスクのみが多くあり、今年から来年にかけての景気は予断を許しませんし、さらなる景気対策も後々の財政再建のための増税との見合いで国民の支持が得にくい状況で、政府や日銀の対応も手持ちのカードに限りがあるのも事実です。四半期ごとの成長率が来年前半までマイナスを続ければ、デフレ・スパイラルの懸念が大きくなることは確実ですから、早めの景気回復が必要と私は考えています。

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コメント

デフレ・スパイラルの件については、まさに同感です。21年度のCGPI▲5.5%かつCPI▲1.3%の中で、GDPデフレーターがプラス0.3%
なのは、原油価格が20年度比で大幅に低下するとの前提でいること
が、輸入デフレーターを介して、反映していそうですね。 原油の20
年度実績値は不明ですが、ざっと半額になったとして、輸入のGDP
でのウェイトが6分の1、石油の輸入でのウェイトが5分の1とすれば、
寄与度にして▲1.6%ですから、我が国の内需デフレーターについて
は、恐くて言えませんね。輸出デフレーターが鉱工業生産▲23.4%
の中で、伸びているとは思えませんし・・・。

投稿: TOMOHIKO SENGE | 2009年4月28日 (火) 20時21分

千家さん
コメントを有り難うございます。
実は、デフレと為替は原因が同じで、要するに、マネーサプライの伸びが鈍いんだろうと思います。原油の価格動向は実質輸入に確実に影響して、10-12月期には成長率をさらに押し下げる要因になったのはよく知られている通りです。でも、原油価格半値はいいとしても、ウェイトを少し大きく見積もっていませんか。直感的に、寄与は▲1%には達しないと私は見ています。

投稿: 官庁エコノミスト | 2009年4月29日 (水) 09時52分

ご返信、ありがとうございます。ウェイトですが、貿易統計によると、
19年度・20年度ともに、輸入に占める「原油及び祖油」の価額上の
構成比は18.3%→19.0%と、約5分の1くらいなので、これを使って
みました。ちょっと、粗いでしょうか・・・?
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2008/2008_215.pdf
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2007/200738f.pdf
(鉱物性燃料全体でみると、⑲29.7%→⑳34.1%です)
後向きの資金需要はあっても、前向きな資金需要がない限りは、
銀行も貸し出しにくい訳ですから、マネーサプライは、増えにくい
ですよね。少々、BOJの肩を持つとすれば、そこで買いオペして
も、ブタ積みになる訳で、なかなか難しいところですね。 MOFも
為替介入は国際的に難しいでしょうし、政府紙幣といっても、日銀
の協力は期待できないですし、手詰まり感はありますね・・・。

投稿: TOMOHIKO SENGE | 2009年4月29日 (水) 21時34分

輸入のウェイトをどう見るかは分析目的によって異なりますが、大雑把に、名目で15-16%、実質で10-11%だと思います。
それから、量的緩和がブタ積みであったとしても、私は間接的に3つの効果があったと考えていて、ひとつは日銀も認めているであろう、資金調達リスクの軽減です。逆から見ると短資市場が機能しない弊害もあります。もうひとつは為替への影響ですが、これは非不胎化介入を実施した結果であって、逆の因果と見る人もいるかもしれません。私も半分くらいはそう思います。最後は資産価格を通じて銀行のバランスシートを改善する効果です。例えば、大和総研の原田さんの分析は以下の通りです。

http://www.dir.co.jp/souken/research/report/harada/08042801harada.html

投稿: 官庁エコノミスト | 2009年4月29日 (水) 22時51分

19年度、輸入GDPが84兆、原油及び粗油が14兆ですから、たしかに、ウェイトは14%くらいですね。 実質は、19年度は基準年に比しての価格上昇分があるので、たしかに、10%くらいですね。そうなると、寄与はプラス0.8%あたりとなり、1%を超えることはなさそうですね。

アメリカにいらっしゃる星先生は,金融政策の貸出チャネルについて、
①企業において、銀行借入が他の調達手段と完全代替でない
②銀行において、貸出と他の債券投資は完全代替でない
の2つが満たされることとされていたと思いますが、①はともかく、②がどこまで当てはまるのか次第で、原田先生のご提言のとおり、資産価格の上昇を通じて、銀行のB/Sが回復したときに、貸出しが増えるかどうか、決ってくるような気がします。

投稿: Tomohiko SENGE | 2009年4月30日 (木) 16時42分

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