明日発表の1-3月期GDP速報(1次QE)は過去最大のマイナスか?
明日5月20日、内閣府から1-3月期のGDP速報が発表されます。エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている重要な経済統計指標です。シンクタンクや金融機関などでは、ゴールデンウィークをはさんで、この予想が出そろったように見受けられます。第一生命経済研究所は先週になって微修正をしていたりします。まず、先週に掲載されたものですが、日経新聞のサイトからこの1次QEの予想に関する記事を引用すると以下の通りです。
内閣府が20日発表する2009年1-3月期の実質国内総生産(GDP)が戦後最大の下落率になるとの観測が広がっている。民間調査機関27社による予測平均は前期比年率で16.0%減。予測通りになれば、第1次石油危機時の1974年1-3月期の13.1%減を超え、35年ぶりに「戦後最悪」を更新する。ただ4-6月期は生産の持ち直しなどでプラスに転じるとの見方も出ている。
民間予測平均は日経グループのQUICKがマクロ経済予測「コンセンサス・マクロ」の一環で調査した。実質GDPは4四半期連続のマイナス成長になる。
次に、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。第一生命経済研究所については微修正前のリポートから取っています。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
---|---|---|
日本総研 | ▲3.9% (▲14.9%) | 内・外需の大幅な減少により過去最大のマイナス成長に |
みずほ総研 | ▲4.9% (▲18.1%) | 内外需とも落ち込み、2四半期連続で年率2ケタのマイナス成長 |
ニッセイ基礎研 | ▲4.4% (▲16.4%) | 外需の悪化に加え、民間消費、住宅投資、設備投資などの国内需要も大きく落ち込んだ |
三菱総研 | ▲4.4% (▲16.3%) | 内需悪化も加わり大幅な落ち込み |
三菱UFJ証券 | ▲3.7% (▲14.0%) | 輸出、設備投資、個人消費が大幅に減少し、4四半期連続のマイナス成長 |
第一生命経済研 微修正前 | ▲5.4% (▲19.8%) | 需要項目別にみてもプラスに寄与するものはなく、まさに総崩れ |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲4.2% (▲15.6%) | 輸出の急減を起点とした企業の生産活動の低迷とそれを受けた家計部門の不振が鮮明となってこよう |
新光総研 | ▲4.8% (▲17.8%) | 過去最悪のマイナス成長が予想される |
引用した記事やほとんどのリポートで触れられている通り、四半期ベースとしては過去最大のマイナス幅を記録した1974年1-3月期の前期比年率▲13.1%をはるかに超えて、今年1-3月期は歴史に残りかねない大幅マイナス成長を記録することが予想されています。他方、これまた、引用した記事や多くのリポートで強調されている通り、逆に、現在進行形の4-6月期はプラス成長にリバウンドすることがかなり高い確率で予想されています。この変動の激しい大きな要因は、生産や在庫の調整スピードが極めて速かったからではないかと私は考えています。通常は4-6四半期かけて調整するところを、フルスピードでもって1-2四半期で生産と在庫の調整を終えてしまった可能性があります。直感的には、先週5月12日に取り上げた景気動向指数の落ち方の傾きが極めてスティープであることから明らかです。GDP統計はもとより、景気全体も1-3月期に底入れして4-6月期から反転する可能性もあり得ます。もちろん、その後、さらに下方に振れてW字型のパスを描く可能性もあります。これは、ここ何日かのこのブログで表明している通りです。
あす発表のGDP統計が過去最大の落ち込みとなれば、もちろん、メディアは大騒ぎするでしょうし、ある意味で、エコノミストとして実際にこの歴史的な四半期に立ち会えたのは貴重な体験なのかもしれません。でも、直ぐに「過去の数字」と見なされる可能性も指摘しておきたいと思います。
| 固定リンク
コメント