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2009年5月26日 (火)

読売新聞の年金報道を読む

年金の世代間格差について、共同通信のサイトで報じられており、報道各社もいっせいにキャリーしていますが、実は、この週末をはさんで、読売新聞でいくつか年金受給に関する報道を見かけました。厚生労働省のホームページを見た限りでは、特に記者発表はないようなので、メディア側の取材に基づくものだと考えています。コチラの読売新聞の報道の方が図表もあったりして、共同通信よりずっと詳しいので、今夜のエントリーで取り上げたいと思います。まず、引用した図表と引用元のリンクは以下の通りです。なお、それぞれの表の注にありますが、貨幣価値は物価上昇率で現在価値に換算してあります。

単純に見ただけでも、上の表では、厚生年金・国民年金とも、生まれた年によって保険料負担と受給できる年金額の比率に3倍ほどの差が生じることが明らかにされています。下の表でも、年齢により受給額に1.5倍近い差が出ています。よく知られた通り、年金制度は2004年度に大きな改革が実施されましたが、その時点と比べて、まず、上の表に即して言えば、高齢者は負担に比べて受給額の倍率が上昇しており、逆に、若年層はこの倍率が低下していると読売新聞は報じています。次に、下の表ではカッコ内に現役世代の給与と老齢世代の年金受取額の比率があり、2004年度の年金制度改革の際には、これが50%を下回らないとされていたんですが、年齢が若くなるほどこの比率が低下しているのが見て取れます。
繰返しになりますが、年金制度は2004年度に大きな改革があり、長期的な財政の見通しを把握するため、5年に1回、財政検証を行うこととされており、その内部検討資料か何かを読売新聞の記者が把握する機会があったんだと思います。いずれにせよ、私の従来からの主張の通り、現在の日本の年金制度は若年層との相対的な比較で言えば高齢者に非常に手厚い制度になっていることが明らかです。国民年金保険料の納付率に関する最新データについて、今年2月に社会保険庁から発表された「国民年金保険料の納付率について」を見れば、昨年4月から今年2月末までの納付率は61.1%にとどまっており、政府の目標の80%には遠く及ばない状況です。もちろん、国民年金以外の年金ではここまで低くはないことは容易に想像されます。さらに、私は正確な年齢別納付率のデータを知りませんし、ましてや、国民年金保険料を納付しないことを勧めるつもりは毛頭ありませんが、これだけ若年層に不利な年金制度に対して、少なくとも若年層から見た場合、保険料を払うインセンティブが低いのも事実かもしれません。極端な見方かもしれませんが、2004年度の年金制度改革の前の古い記事ながら、『日本の不平等』で第46回エコノミスト賞などを受賞した大阪大学の大竹教授なんかのように、「年金未納は若者の逆襲」と見る識者がいることも事実です。この言葉は、大竹教授が「東洋経済」2004年5月29日号のpp.9に投稿した記事のタイトルから引用しています。なお、この記事の中で大竹教授は「団塊の世代以上の年齢層の人々の既得権を崩さないかぎり年金改革は不可能」と喝破しています。

2005年の人口と年齢別投票者数

上のグラフは朝日新聞のサイトから引用して、このブログの12月30日付けのエントリーで取り上げたものですが、選挙権のある若者はもっと選挙に行って若年層の意見を政治に反映させるべく努めるとともに、私なんかを含めたより年齢層の高い人たちは、まだ選挙権を有していない世代のことも考えて投票しなければ、年金の高齢者優遇と若年層の年金離れの悪循環がさらに進むことにもなりかねません。

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