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2009年5月12日 (火)

景気動向指数に見る日本と世界の景気の現段階

昨日のエントリーまでで遅れを取り戻し、今日はカレントな話題に戻りたいと思います。すなわち、昨日、経済開発協力機構 (OECD) から先行指標 (OECD/CLI) が発表されるとともに、今日、内閣府から景気動向指数が発表されました。どちらも今年3月のデータです。発表された時間的な順序とは逆なんですが、まず、我が国の景気動向指数について、統計のヘッドラインなどを報じた東京新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が12日発表した3月の景気動向指数(速報値、2005年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.3ポイント低下し、84.9となった。低下幅は2月(2.8ポイント)から大幅に縮小。半年程度先の景気を示すとされる先行指数は2.1ポイント上昇し76.6と6カ月ぶりに上昇した。
内閣府は「先行指数に下げ止まりの兆しがみられる」としているが、一致指数の基調判断は「悪化を示している」のまま据え置いた。
一致指数は8カ月連続の低下で、02年2月(84.9)以来の低水準だった。自動車や電機など輸出産業で在庫調整が進展したため、鉱工業生産指数がプラスに転じたが、有効求人倍率や大口電力使用量は悪化が続いた。
景気に遅れて動く遅行指数は1.6ポイント低下し88.7だった。

いつもの景気動向指数のグラフは以下の通りです。赤い折れ線が一致指数、青が先行指数で、ともに右軸の単位は引用した記事にある通り2005年=100です。これまた、いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。

景気動向指数

次に、景気の山から谷、あるいは現在の景気後退期においては現時点までの景気動向指数の下落幅と下落率、さらに、今月から下落期間の1か月当たり平均下落率を計算してみました。下落率を単純に月数で除しています。以下の通りです。

谷 (直近)下落幅 (率)
<月当たり下落率>
1990年10月 104.31993年12月 79.9▲24.4 (▲23.4%)
<▲0.62%/月>
1997年5月 96.01998年12月 84.0▲12.0 (▲12.5%)
<▲0.66%/月>
2000年12月 95.62001年12月 84.0▲11.6 (▲12.1%)
<▲1.01%/月>
2007年8月 105.22009年3月 84.9▲20.3 (▲19.3%)
<▲1.02%/月>

新たに今月から加えた1か月当たりの下落率から一見して明らかなんですが、ある意味で、調整スピードが増しているのが読み取れます。現在の景気後退局面では当初は緩やかだった下がり方が昨年末から一気に落ちていますから、この部分だけをカウントすれば、極めて速度の速い調整が行われたと理解することが出来ます。このことは景気後退局面を早期に終了させる可能性が示唆されていると私は受け取っています。4月9日付けや4月30日付けのエントリーで明記したように、fast-in fast-out のシナリオが無視できない確率であり得ると言えます。ただし、留保すべき点は2点あり、まず、在庫や生産の調整が早期に終了するとしても、その後の回復のスピードまで速いとは限りません。最終需要次第と言えます。続いて、社会的厚生の問題として、スピード速く短期に大幅な調整を行うのがいいのか、景気後退の期間は長くなっても、ある程度の時間をかけてゆっくりと調整するのがいいのかについては議論が分かれます。私はどちらかと言えば、後者のゆっくり調整型の方が社会的な痛みは小さいんではないかと考えないでもありません。

次に、OECD/CLI の主要国のグラフは以下の通りです。

OECD/CLI

注目点は、かなり多くの国が strong downturn とされている中で、最後のグラフの中国が possible trough に転じたことです。欧州でくくってしまったんですが、EU が少し反転の兆しを見せているのは、実は、グラフは割愛したものの、英仏伊の3か国も possible trough となっているからです。日本の fast-in fast-out がまだ実現していない中で、欧州の一部や中国が景気転換点を迎えている可能性を示唆されているわけで、日本が景気後退局面を早期に終わらせるとはいえ、世界の中で考えると、そんなに早くはないのかもしれません。

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