機械受注統計から景気パスと景気転換点を考える
本日、内閣府から3月の機械受注統計調査報告が公表されました。民間設備投資の先行指標と見なされている電力と船舶を除く民需のいわゆるコア機械受注の結果が2月統計で5か月振りにプラスに転じて注目されていたところですが、結果は季節調整済みの同じコア機械受注の系列で前月比▲1.3%減となりました。加えて、4-6月期も同じベースで前期比▲5.0%減と見込まれています。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計結果の概要に関する記事を引用すると以下の通りです。
内閣府が15日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.3%減の7279億円となり、2カ月ぶりに減少に転じた。このうち製造業は21.8%増、非製造業は3.1%減だった。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額は22.2%減だった。4-6月期は前期比5.0%減の2兆883億円を見込む。
内閣府は基調判断を「わずかに増加したものの、基調としては減少が続いている」から「減少のテンポが緩やかになってきている」に変更した。
次に、電力と船舶を除く民需のいわゆるコア機械受注のグラフは以下の通りです。左軸の単位は兆円で、青の折れ線が毎月の受注額、赤が後方6か月平均です。影を付けた部分はいつもの通り景気後退期です。
直感的に、コア機械受注はこの年央に底を打って反転するんではないかと見られます。そうだとすると、GDPベースの設備投資も今年年末か来年年初には反転する可能性が高まっています。現時点で、今後の年度内いっぱいくらいの景気パスを考えると、アルファベットで表して3通りあり、W字型、V字型、L字型となります。一昨日の景気ウォッチャー調査を取り上げた際には、単純なV字型を想定しなくもなかったんですが、やっぱり、設備投資を考え合わせるとW字型なのかもしれないと、私自身も考えが揺れ動いています。でも、よほどW字型の右半分がフラットにならない限り、L字型は可能性が低いように見込んでいます。加えて、もしもW字型の景気パスをたどると仮定すれば、景気転換点としては1-3月期に底入れしたと見るか、その後のW字型のパスの2番底が景気転換点なのかは、直感的には2番底の方が浅いように見受けられるものの、なかなか微妙な判断だという気がします。
1-3月期に底入れして景気が回復局面にあると仮定しても、その後の景気回復局面の力強さについては、先月4月30日付けのエントリーで鉱工業生産指数統計を取り上げた際に、「カギを握るのは設備投資と輸出」であると書いた通りです。特に、設備投資について考えると、増産しても生産水準が低いままで推移するならば稼働率の上昇や遊休設備の再稼働につながるだけで、新たな設備投資は活発になりません。生産が一定の水準を超えて初めて新たな生産設備が必要とされます。別の表現をすると、ミッチェル的な景気拡大局面に入っても、シュンペーター的に経済活動水準が低い段階では、大きくなり過ぎた資本係数が修正されるだけで、資本係数がさらに低下して新たな設備投資が必要とされる段階まで少し時間的なラグがあります。生産や輸出はミッチェル的な景気の2分法に従って増減する一方で、設備投資はシュンペーター的な2分法に対応するということも出来ます。この意味で、知り合いのエコノミストから送られて来たリポートには「設備投資は景気の遅行指標」と明記しているものもあったりしました。その通りかもしれません。なお、詳細な説明は省きますが、私が作成したミッチェル的な景気の2分法とシュンペーター的な景気の2分法の対比をイメージ的に描き出したものが下の画像です。もちろん、現在では、日米両国をはじめとして、ミッチェル的な景気の2分法に従って景気基準日付を判定しています。縦軸は経済活動水準、横軸は時間の流れ、赤いカーブが景気の推移、水色の直線はトレンド線です。
一般的な景気パスのお話に終始してしまいましたが、最後に、機械受注統計に戻ると、3月データのひとつの特徴は製造業と外需が大幅に伸びたことです。世界経済が全体として拡大し、世界の多くの国が景気転換点に向かっていることを間接的ながらうかがい知ることが出来ます。
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