財政政策に関するメモ
今週の授業シリーズは財政政策です。ごくかいつまんで、メモとして簡単に済ませます。雑な説明になるかもしれません。
まず、IS-LM曲線と財政政策の効果について、以下のケインズ的なモデルを考えます。
- Y = C + I + G
- C = a + cY
- a > 0
- 1 > c > 0
見れば分かりますが、輸出入を考えない閉鎖経済で、GDPは消費と投資と政府支出の和から成り立ちます。消費関数は租税を考慮せず、正の基礎的消費 a にGDPと限界消費性向をかけた積との和で決まります。限界消費性向はいうまでもなく小文字の c で (0, 1) の開区間にあります。そうすると、ケインズ的な財政乗数は以下の通りに計算されます。
ΔY = | ΔG | または | ΔY | = | 1 |
1 - c | ΔG | 1 - c |
しかし、ケインズ的な乗数はクラウディングアウトを考慮していません。あるいは、後に詳しく書く流動性の罠にある場合の乗数と同じともいえます。これをイメージ図で示すと以下の通りとなります。
ケインズ的な乗数は①の大きさに対応します。しかし、IS 曲線が正の傾きを有している限り、②のクラウディングアウトが生じます。なお、上の IS-LM 曲線のイメージ図で、LM 曲線が左下でフラットになっている部分がありますが、これが流動性の罠と呼ばれる部分です。経済がこの部分にあればケインズ的な乗数はクラウディングアウトを生ずることなくフルに経済を拡大させます。逆に、LM 曲線の右上の部分が垂直になっているのは古典派的な実物経済と貨幣の2分法が成立する世界で、経済がこの部分にあるということは完全雇用が達成されており、拡張的な財政政策はすべてクラウディングアウトされ、GDPに対する何らの効果を持ちません。IS-LM 曲線の分析は物価を一定と仮定しているんですが、完全雇用が達成されていて LM 曲線が垂直な部分で拡張的な財政政策を実施すれば、利子率が上昇するのは要するにインフレを招くと考えるべきです。
加えて、財政のサステイナビリティに関するドーマー条件も式を展開して説明したんですが、私の html に関するテクニックではコチラは書き切れません。大学の紀要の今年3月号に研究ノートとして取りまとめてありますのでご覧ください。
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