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2009年5月25日 (月)

全産業活動指数から生産要素需要の動向を考える

本日、経済産業省から今年3月の全産業活動指数が発表されました。ヘッドラインの農林水産業を除く指数が季節調整済み系列で93.6、前月比▲2.4%の低下となりました。この全産業活動指数と、そのサブセットである鉱工業生産指数及び第3次産業活動指数をプロットしたのが下のグラフです。なお、基準年は青い折れ線の鉱工業生産指数のみ2005年=100で、残る緑の第3次産業活動指数と赤の全産業活動指数は2000年=100となっています。影を付けた期間はいつもの通り景気後退期です。

全産業活動指数

一見して明らかなんですが、景気拡大局面においても景気後退局面においても、いずれも鉱工業生産指数の傾きが他の2指数より急傾斜になっています。これは、すでに5月14日付けのエントリーで取り上げた通り、最終需要のわずかな動きが在庫の最適化行動を通じて増幅され、出荷や生産活動に大きな変動をもたらしている実例と言えます。
それはそれとして、今夜のエントリーでは生産や産業活動の水準と生産要素需要、すなわち、労働力と資本設備に対する需要、雇用の増加と設備投資の回復について、5月15日付けのエントリーでイメージ図を示したシュンペーター的な2分法に基づいて簡単に考えたいと思います。大雑把に丸めて、鉱工業生産指数は景気後退局面に入る直前の水準が110くらいで、直近では70くらいに落ちています。110を基準に考えると▲35%くらいの低下で、逆に、直近の70を基準に考えると、110水準に達するまでほぼ60%くらいの活動水準の上昇が必要となります。同じように考えると、全産業活動指数では景気後退前の108の水準に対して、直近が103くらいの水準ですから、大雑把に▲14%くらいの低下を見ています。私の直感では、鉱工業生産指数で考えて、累積で30%くらいの増産があれば、すなわち、元の水準に戻る半分強くらいの90-95くらいの水準までの増産があれば、要素需要は出始めるんではないかと思っています。もっとも、強力な根拠があるわけではありません。これまた、何の根拠もなく、四半期単位で5-6%の増産があるとすれば、W字型の景気パスを想定して1四半期くらい足踏みが生ずると仮定すれば、この2009年4-6月期から数え始めて6四半期くらいで本格回復に到達するように単純に計算できます。来年年央というか、7-9月期くらいということになります。何度も繰り返しますが、何の根拠もない直感的な見通しながら、来年年央には本格回復軌道に回帰することになります。W字型の景気パスでもなく、加えて、もっと精緻な見通しを作成しているエコノミストの一部と大差ない結果かもしれません。
それに対するリスクもいくつかあり、来年中は本格的な景気回復には至らず、さ来年にズレ込む可能性もあります。単純な前のパラの計算が成り立たないのが最大のリスクとも言えますが、計算に根拠がないのは何度も繰り返しましたので、これを別にすると、4月27日付けの内閣府独自試算の「平成21年度経済見通し暫定試算」を取り上げたエントリーと大差ないものの、今では最大のリスクは第1に為替だと考えるようになりました。米国がマネーを急拡大させている一方で、日銀はそうでもないですから、ソロス・チャート的に為替が円高に振れる可能性は残されています。ついでながら、現時点まで、企業収益は少なくとも株価には大きく影響を及ぼしておらず、設備投資への影響を生じさせる段階ではないと考えるようになりました。第2に在庫です。在庫調整がもう少し、4-6月くらいまでズレ込む可能性はあります。第3にデフレです。今年年央が物価上昇率マイナスのトラフだと思いますが、今年年末から来年年始にかけてW字型に沿って2番底を付けに行くとする私の考えの最大の根拠です。インフレレ期待が大きく下方シフトすると、「もう少し待てばもっと安くなる」とのマインドが消費者に刷り込まれてしまい、後送り行動により消費の回復を大きく妨げることになります。後は順不同に、米国経済、特に金融とビッグスリー、政府の財政政策の引締めへの変更の可能性、特に消費税増税へのコミットのあり方、などがリスクになるような気がしないでもありません。

最後に、先行きリスクに関して1点だけ付け加えると、新型インフルエンザのリスクは無視し得ると見なすようになりました。むしろ、新興国経済の回復に伴う逆デカップリングから輸出が増加する上振れリスクの方が大きいんではないかとも思えなくもありません。

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