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2009年5月14日 (木)

在庫を通じた生産の変動について考える

ここしばらくの授業で、企業の生産活動が日本の景気循環の大きなエンジン、プラスもマイナスも、になっていることを学生諸君に説明しています。主として、最終需要の変化に基づくわずかな消費や販売の変動が在庫の最適化行動を通じて増幅され、生産や出荷の大きな変動を引き起こす例を、実際の数値例に基づいて説明しています。まず、前提は以下の通りです。

  1. 生産側と販売側はともに販売に関する静学的な予想に基づいて、生産側では前期の販売と同じ量を生産し、販売側でも前期の販売と同じ量を入荷 (生産側から見れば出荷) します。
  2. 生産側においても、販売側においても、出荷や販売と同量の在庫を保有します。
  3. ただし、販売側で需要の変動があり、入荷と異なる販売であった場合は在庫の変動が生じ、次期の入荷を増減させて在庫調整を行います。
  4. 同様に、生産側で出荷の変動があり、生産と異なる出荷であった場合は在庫の変動が生じ、次期の生産を増減させて在庫調整を行います。
これを基に、最終需要が変化した場合の在庫調整を通じた生産の変動を以下の表に基づいて説明しています。生産や販売の対象となるのは何でもいいんですが、最近、話題になっている業界を代表して自動車の台数で授業しています。なお、表に一番左側の列の「期」については、分かりやすいと思うので「年」で説明していたりしますが、基本は変わりありません。
生産 / 在庫出荷 = 入荷販売 / 在庫
1100 / 100100100 / 100
2100 / 10010090 / 110
390 / 1207090 / 90
460 / 909090 / 90
590 / 909090 / 90
690 / 9090100 / 80
7100 / 70120100 / 100
8130 / 100100100 / 100
9100 / 100100100 / 100
見れば明らかなんですが、各期における特徴は以下の通りです。
  1. 第1期には、生産、生産側の在庫、出荷・入荷、販売、販売側の在庫とも100で均衡しています。
  2. 第2期には、販売が何らかの理由により減少し、販売側で意図せざる在庫の積上がりが生じます。
  3. 第3期には、販売側で販売の減少とそれに見合った在庫調整を行うため入荷を減らし、その結果、生産側で意図せざる在庫の積上がりが生じます。
  4. 第4期には、生産側で出荷の減少とそれに見合った在庫調整が行われ、生産は減少します。
  5. 第5期には、生産、生産側の在庫、出荷・入荷、販売、販売側の在庫とも90で均衡を回復します。
  6. 第6期には、販売が何らかの理由により増加し、販売側で意図せざる在庫の減少が生じます。
  7. 第7期には、販売側で販売の増加とそれに見合った在庫の積増しを行うため入荷を増やし、その結果、生産側で意図せざる在庫の減少が生じます。
  8. 第8期には、生産側で出荷の増加とそれに見合った在庫の積増しを行うため生産が増加します。
  9. 第9期には、生産、生産側の在庫、出荷・入荷、販売、販売側の在庫とも100で均衡を回復します。
実は、いろんな授業で最初に書いた前提が必ずしも同じではないので、授業ごとに数値例の計算結果は微妙に違うような気もするんですが、まさか、この数値例の表を丸暗記しようとする学生はいないでしょうから、まあ、必ずしも各種授業を通じた統一性は取れていない気もしないでもないものの、そんなに気にしていなかったりします。要するに、学生諸君に理解して欲しいのは、最初に書いた通り、最終需要のわずかな変化が在庫の最適化行動を通じて増幅され、出荷や生産活動の大きな変動をもたらすことです。上の表の数値例でいえば、10の販売の変動が30-40の出荷や生産の変動をもたらしていることを理解してもらおうと努力しています。少し困ったのは、前期末の在庫と、生産側でいえば当期の生産、販売側でいえば当期の販売の合計が、生産側でいえば当期の出荷、販売側でいえば販売とそれぞれの当期末の在庫の和に等しいことを理解させるという、本来の重要性からやや遠いことで苦労して、お小遣いの例を持ち出して、前月末の繰越額と今月にもらった小遣いの合計が、今月中に使った額と来月への繰越額の合計に等しくなることを持ち出したりして説明していたりしました。 ポイントは、繰返しになりますが、最終需要段階でのわずかな変化が在庫の最適化行動を通じて増幅され生産や出荷の大きな変動をもたらすことと、ついでながら、景気循環の4つの波のひとつであり、もっとも短いながら現実経済でもっとも重要と見なされていて、例えば、内閣府の景気基準日付の基になっている在庫循環、キチン・サイクルについて理解を深めることです。

一応、上の表は板書して学生諸君もノートを取っていたように思いますので、頭に入っていることと期待していますが、厳しい就職戦線を乗り切るために、しっかりと授業を進めたいと考えています。

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