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2009年6月 5日 (金)

村上春樹『1Q84』(新潮社) を読む

今週の日本経済論の授業シリーズは都合によりお休みとし、今夜は先週発売された村上春樹さんの『1Q84』(新潮社) を取り上げたいと思います。私も村上ファンの例に漏れず、発売と同時に買い求め、やや時間はかかりましたが、最近読み終えました。朝日新聞のサイトによれば、6月4日現在で BOOK 1 が51万部、BOOK 2 が45万部売れていて、次の入荷は6月10日ころとのことです。BOOK 1 とBOOK 2 をほぼセットで買っているとして、大雑把に、昨日までに『1Q84』を買ったのは日本人の0.5%ですから、私がその中に入るのは当然という気もします。なお、今夜のエントリーは敬称略で書き進めます。それから、ネタバレが含まれているかもしれません。ご容赦ください。

村上春樹『1Q84』(新潮社)

まず、形式は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『海辺のカフカ』と同じように奇数章と偶数章でパラレルに物語が進みます。ただし、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では「私」と「僕」が交互に1人称で登場し、また、『海辺のカフカ』では主人公の章は1人称、ナカタさんの章は3人称となっていましたが、『1Q84』ではどちらも3人称で書き進められています。なお、奇数章の主人公は青豆、偶数章は天吾となっています。天吾の章で要をなすのは宗教と「リトル・ピープル」だと私は考えています。明らかに「ヤマギシ会」をモデルにしたと考えられる「ミヤザキ塾」とか、ここから派生した「さきがけ」や、さらにその武装分派の「あけぼの」、あるいは「エホバの証人」をモデルにしたと思しき「証人会」などが宗教で、「リトル・ピープル」はよく分かりません。我が家で全巻そろえてある『ダレンシャン』のシリーズに同じ名称の「リトル・ピープル」が出て来ますが、全12話を読破した下の子に聞いても、少し特徴が違います。当然でしょう。『1Q84』の「リトル・ピープル」は「空気さなぎ」を作ります。人間世界に対するいろんな影響力を持っています。詳細は読者の解釈に任せられているような気がします。でも、キーポイントであることは確かです。なお、「証人会」は青豆の章でも底流をなしています。加えて、青豆の章でキーポイントとなるのは DV かも知れません。というのは、村上ワールドを象徴している天吾の章に比べて、青豆の章はより実務的で、ゴルゴ13とまでは言わないにせよ、プロの世界だからです。
次に、諸説あるものの、私はこの『1Q84』は村上春樹の最高傑作だとほぼ無条件で考えています。それほど、文体もストーリーも完成度が高いといえます。ただし、1点だけ、BOOK 2 の第4章で天吾が唐突に青豆を思い浮かべるのは少し違和感があります。でも、これは同じくBOOK 2の第23章で青豆が自殺する唐突感と通ずるものがあり、この『1Q84』を完結させるための一種の方便だと私は捉えています。上下ではなく、思わせ振りな BOOK 1 と 2 というネーミングからして、この『1Q84』の続編がある可能性の議論もなされているやに聞き及びますが、私は少なくとも現時点で村上春樹は完結を意図していると私は受け止めています。青豆の自殺が大きな理由です。エンディングに含みを持たせているものの、青豆を欠いて物語は続きようがありません。コナン・ドイル卿の「シャーロック・ホームズ」と同じというか、違うというか。

最後に、繰り返しになるものの、私はこれまで村上春樹の最高傑作といえば『ねじまき鳥クロニクル』と『海辺のカフカ』で悩んでいたんですが、これで文句なく『1Q84』が最高の村上作品だといえるようになりました。数年のうちにノーベル文学賞が授賞されるものと期待しています。

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