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2009年6月 3日 (水)

新しいペーパー「九州7県における人的資本の推計」を書き上げる

今月も新しいペーパーを書き上げました。タイトルは「九州7県における人的資本の推計」です。内閣府が取りまとめている県民経済計算を用いて、1人当たりの雇用者所得から時系列的な確率過程を応用して人的資本を推計しています。具体的には AR(1) を当てはめて雇用者1人当たりの人的資本を推計した上で、県内市場の大きさの代理変数と大学志願率及び非正規労働者比率の質的な代理変数を用いてパネル推計を行っています。まず、九州7県の人的資本のうち、長崎県の推計結果は以下の通りです。水色の棒グラフは各年度の人的資本額で、左軸の単位は万円です。赤い折れ線は各年度の福岡県の人的資本額を100とした、いわば格差指標です。

長崎県における人的資本の推移

データが利用可能な直近の2006年度を見ると、雇用者1人当たり人的資本の九州7県における最高額は福岡県の7627.3万円、最低は長崎県の6337.0万円、長崎県の対福岡県格差指数は83.1パーセント、人口でウェイト付けしない九州7県の単純平均は6913.5万円となっています。長崎県の場合は、対福岡県の格差は大雑把に広がる一方のように見えます。もちろん、ペーパーには九州7県すべての人的資本が推計されています。

九州7県における人的資本の格差

次に、上のグラフは九州7県における人的資本の格差について、一般的な変動係数と第2のタイル指標を計算したものです。青い折れ線が変動係数で左軸、赤が第2のタイル指標で右軸に、それぞれ、対応しています。2000年度を底に、今世紀に入ってから格差が拡大しているのが見て取れます。特に、2002年度には跳ねています。小泉内閣の成立と何らかの関係があるのかどうか、興味あるところです。もちろん、この格差は各県の平均的な人的資本における県間のマクロ的な格差であって、県内のマイクロな格差ではありません。一般的には後者の方に興味が集まっているような気がしますが、今回のペーパーの分析対象は異なります。
最後に、九州7県における人的資本格差をパネルデータで推計しています。県内総生産の量的な代理変数は統計的に有意に正となり、質的な代理変数である大学志願率と非正規労働者比率は統計的に有意ではないものの、経済的に予想される符号、すなわち、大学志願率は正、非正規労働者比率は負となりました。要するに、大学志願率が高まれば人的資本は増加し、非正規労働者比率が上昇すれば人的資本は低下することがパネルデータ推計から確かめられました。当然です。

財政の持続可能性の研究ノートは別にして、推計モノのペーパーとしては3本目です。EViews を使った状態空間モデル、RATS を使ったマルコフ・スイッチング・モデル、そして、今回は STATA を使ったパネルデータ推計です。いろんなソフトを使って、いろんな推計を虫干ししています。

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