労働統計に見る経済活動の水準
本日、総務省統計局から5月の失業率などの労働力調査が、また、厚生労働省から同じく5月の有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。ヘッドラインの季節調整済みの月次系列で、失業率が5.2%、有効求人倍率が0.44倍と、それぞれ前月に比べて悪化しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。
総務省が30日に発表した5月の完全失業率(季節調整値)は5.2%と前月から0.2ポイント悪化した。厚生労働省が同日発表した5月の有効求人倍率(同)も0.44倍と前月から0.02ポイント下がり、過去最悪を更新した。生産に持ち直しの兆しがみられる一方、雇用情勢は依然厳しい状況が続いている。厚労省は雇用判断を「さらに厳しさを増している」と5カ月ぶりに下方修正した。
失業率は15歳以上の働く意欲がある人のうち、職に就いていない人の割合。5.2%は2003年9月以来、5年8カ月ぶりの水準になる。完全失業者数は前年同月比77万人増の347万人で、増加幅は過去最大。就業者数は136万人減の6342万人だった。総務省は「生産は上向いているが、水準は低く、雇用の増加に結び付いていない」と分析する。
次に、いつもの労働統計のグラフは以下の通りです。いずれも月次の季節調整済み系列で、上のパネルは失業率、真ん中は有効求人倍率、下は新規求人数です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このところのグラフの例の通り、暫定的に今年3月を景気の谷としています。
まず、上のグラフを見て直感的に理解されるように、労働環境は総じて悪化を続けています。年初1月の失業率は4.1%だったんですが、アッと言う間に5%を超えました。就業者数が大きく減少している中で、労働市場から退出する部分も大きく、非労働力人口も増加しています。有効求人倍率は過去最低を記録しました。最近の動きでは求人が減る一方で、求職者は増加しており、厳しい就職情勢が浮き彫りになっています。新規求人数も増加の兆しすら見えません。昨日発表された鉱工業生産指数に見られる通り、生産が増勢を示していることは確かですが、昨夜のエントリーの繰返しで、資本係数や労働係数がまだ依然として高く、新規の雇用は増えていません。なお、新規求人数は別ですが、失業率や有効求人倍率については、現状では労働力人口が減る段階にあり、今しばらく景気回復が続いたとしても、今度は、非労働力化していた人が労働市場に再参入することにより労働力人口が増えますから、今しばらく悪化を続けることが予想されます。
他方、グラフや新聞記事の引用は取り上げませんでしたが、家計調査の消費は着実に増加しています。新型インフルエンザで外出が控えられたものの、昨年よりもゴールデンウィークのカレンダーがよかった効果に加え、定額給付金給付の支給開始やエコポイント導入期待もあって、お買い物は進んだようです。でも逆に、雇用情勢が厳しいままでの消費の盛り上がりが続くとサステイナビリティに欠けるとの見方もあり得ます。消費の活性化から労働環境の改善に結びつくのか、それとも、雇用の改善が遅れることが消費の足を引っ張るのか、少なくとも年内いっぱいくらい、私は後者の効果の方が強いと考えています。
何度も書きましたが、今週前半は強弱マチマチの統計が出ます。明日の日銀短観の業況判断DIはかなり上がるんでしょうが、設備投資計画も注目です。
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