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2009年6月27日 (土)

日銀短観はどこまで改善するか?

来週水曜日7月1日に6月調査の日銀短観が発表されます。3月調査の結果はこのブログでも4月1日付けのエントリーで取り上げ、ヘッドラインの大企業製造業の業況判断DIが▲58、大企業非製造業が▲31と過去最悪を記録しましたが、6月調査ではこれが2年半振りに改善すると見込まれています。まず、少し前ですが、日経新聞のサイトから日銀短観の予想に関する1週間ほど前の記事を引用すると以下の通りです。

日銀が7月1日に公表する6月の企業短期経済観測調査(短観)について民間調査機関の予測を集計したところ、大企業製造業の業況判断指数(DI)予測の中心値はマイナス41になった。過去最悪だった今年3月の短観から、17ポイント改善する見通しだ。2006年12月以来、2年半ぶりに改善するとの予測だが、先行きについては慎重な見方も多い。
日経グループのQUICKが25社の予測を集計した。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。予測値によると、改善幅は02年6月の短観の20ポイント以来の大きさとなる。非製造業はマイナス26で、5ポイント改善する見通しになった。

この日銀短観について、GDP統計などでチェックしているシンクタンクや金融機関各社のリポートから下の表を取りまとめました。金融機関などでは顧客向けに出しているニューズレターでクローズに公表する形式の機関もありますし、私もメールなんかに添付してもらっているリポートもあるんですが、いつもの通り、ネットに PDF ファイルなどでオープンに公表している機関に限って取り上げています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールされてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
ヘッドライン
日本総研▲46
▲26
生産の持ち直しを背景に、企業マインドは2年半ぶりの上昇に
みずほ総研▲46
▲35
稼働水準が「つるべ落とし」的状況から脱出する中で業況感は底入れ
三菱UFJ証券▲39
▲23
業況判断DIが上昇に転じ、景況感の全般的かつ大幅な改善が確認されよう
第一生命経済研▲42
▲27
業況判断は半値戻しの範囲内
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲49
▲33
在庫調整の進展や中国向け需要の回復などを受けてこのところ生産が持ち直してきていることが背景
ニッセイ基礎研▲39
▲27
製造業は在庫調整に目処がつき、中国を中心に輸出の減少も止まりかけており生産増加の動き
三菱総研▲37
▲26
経営環境は依然厳しく足元のマインドの改善も限定的
富士通総研▲37
▲12
企業マインド面からも景気の底打ちが確認される内容
新光総研▲40
▲26
最悪期脱却で大企業・製造業の業況判断DIは大幅改善へ

業況判断DIに並んで注目度の高い設備投資計画については、規模別や産業別で区分に統一性がなかったり、ほとんどの機関がGDPベースの設備投資に整合性のない土地を含みソフトウェアを除くベースでの発表でしたので、上の表には取り上げませんでしたが、大雑把に本年度2009年度の設備投資計画は3月調査の時点とそんなに変わらないとの印象でした。設備投資や雇用などの要素需要は経済活動の水準に対応しますから、今しばらくは盛り上がりに欠ける可能性が高いのかもしれません。
経済活動の変化の方向を示す業況判断DIに着目すると、すべての機関の予測に通じて言えることは、2年半振りの企業マインドの改善は確実なんでしょうが、業況判断DIの水準としてマイナスのままであるということです。通常、DIは水準を論じることは意味がないとされていますが、符号をマイナスからプラスに、あるいは、プラスからマイナスに転ずる時点が転換点であることは教科書的な説明にもある通りです。今日のブログで取り上げたのは、あくまで日銀短観の予想ですが、これが正しいとすれば、企業マインドから見ても景気転換点を過ぎつつあることが読み取れる結果となるかもしれません。さらに、先行き見通しについては、強気の見方がある一方で、引き続き、本格的な景気回復までは時間がかかる可能性を指摘する機関が多かったような印象を持っています。

来週は月末から月が代わる週ですから、いろいろと重要な経済指標が公表されます。特に、景気の方向を敏感に示す鉱工業生産指数が月曜日に、経済活動の水準に対応する雇用指標が火曜日に、それぞれ発表されます。メディアの記事はジェットコースターのように上下するかもしれませんが、指標を分析するのがエコノミストのお仕事ですから、正確な分析に努めたいと考えています。

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