« 財政再建はいかにして可能か? | トップページ | 金融と金融政策のポイント »

2009年6月11日 (木)

過去最大のマイナス成長を確認した1-3月期2次QEは過去の数字か?

本日、内閣府から1-3月期の四半期別GDP速報 (2次速報) が発表されました。エコノミストの業界で2次QEと呼ばれているものです。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が11日発表した1-3月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で、前期比3.8%減、年率換算で14.2%減だった。5月公表の速報値と比べて前期比が0.2ポイント、年率が1.0ポイントの上方修正だが、「戦後最悪」のマイナス成長に変わりはなかった。日本経済は4月以降、生産や輸出に持ち直しの兆しが見えており、4-6月期のGDPはプラス成長を回復するとの見方が多い。
改定値は速報値の発表後に判明した法人企業統計などのデータをもとに、GDPを推計し直したもの。家計の生活実感に近い名目値のGDPは前期比2.7%減、年率10.4%減。それぞれ0.2ポイント、0.5ポイント上方修正した。
今回の上方修正は民間企業の設備投資や在庫が、速報値の段階で想定していたほど急減していなかったのが主因。実質値でみると、設備投資は前期比8.9%減で、速報値より1.5ポイントの上方修正となった。ただ大幅マイナスに変わりはなく、企業の投資意欲の低調ぶりを改めて示した。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは名目ですし、GDPデフレータだけは伝統に従って原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、完全性は保証しません。正確な計数は最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
1-3
2008/
4-6
2008/
7-9
2008/
10-12
2009/1-3
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+0.4▲0.6▲0.7▲3.7▲4.0▲3.8
民間消費+1.4▲1.0+0.1▲0.8▲1.1▲1.1
民間住宅+5.0▲2.0+3.1+5.3▲5.4▲5.5
民間設備+1.3▲2.9▲4.2▲6.4▲10.4▲8.9
民間在庫 *▲0.5+0.1▲0.2+0.7▲0.3▲0.2
公的需要▲1.3▲0.8▲0.0+1.3+0.2+0.0
外需 *+0.0+0.5▲0.1▲3.2▲1.4▲1.4
輸出+2.4▲0.8+1.0▲14.7▲26.0▲26.0
輸入+2.4▲4.2+1.5+3.1▲15.0▲15.0
国内総所得(GDI)+0.3▲1.8▲1.7▲1.1▲1.9▲1.6
名目GDP+1.0▲1.8▲1.7▲1.3▲2.9▲2.7
雇用者所得+0.4▲1.4▲0.2+0.5+0.0▲0.0
GDPデフレータ▲1.3▲1.5▲1.5+0.7▲0.3▲0.3

次に、2005年からの需要項目別の寄与度グラフは以下の通りです。上のテーブルにせよ、下のグラフにせよ、1次QEからの改定幅は小さいと受け止めています。

2次QE寄与度

今週月曜日の6月8日に経済企画協会の ESPフォーキャスト調査の結果が発表されていますが、民間エコノミストによる今年4-6月期の成長率見通しは、平均値で見て、先々月発表の時点では年率で▲1.46%のマイナス成長が予想されていたものの、先月の発表時点では+1.14%のプラスに転じ、今月は+1.64%までカギカッコ付きの「上昇」を見ました。年率1.5%を超える成長率見通しは、明らかに、現時点の我が国の潜在成長率を超えるものです。また、この調査では、私が早くから指摘していた通り、W字型の成長率パスが明確に読み取れます。要するに、今日発表された2次QEは過去の数字と受け止めるべきです。
しかし、1点だけ私が気にかけているのは、在庫調整の進展です。これについてはかなり慎重な検討が必要です。すなわち、昨年10-12月期の在庫は後ろ向きの売残りによる在庫の積み上がりがあって、GDP成長率への寄与度で見て+0.7%ありました。1次QEではこの在庫調整が同じくGDP成長率への寄与で見て▲0.3%しかなく、先月20日の1次QE発表の際のエントリーで在庫調整の遅れを指摘したんですが、この在庫調整の進展を表すマイナス寄与度が2次QEではさらにマイナス幅を小さくして▲0.2%となりました。これは在庫調整の遅れであろうと私は受け止めているんですが、ひょっとしたら、一部の業種では在庫の積増し局面に入っていて、相殺された結果である可能性は否定できません。マクロの統計だけでなく、ウワサ話の類も知りたいところですが、長崎というやや不利なロケーションのために、私には情報がありません。判断しがたいところです。

エコノミストの間で、今年1-3月期が景気の底で、この先の景気パスはW字型を描くとのコンセンサスが出来上がりつつあるように見受けられます。私が早くから主張して来た通りになって喜ばしい限りです。他方で、東証平均が10000円に近付きつつある株価についてはW字型の景気パスを考慮すれば、この先しばらくした時点で一時的な調整局面に入る可能性も見逃すべきではありません。

|

« 財政再建はいかにして可能か? | トップページ | 金融と金融政策のポイント »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 過去最大のマイナス成長を確認した1-3月期2次QEは過去の数字か?:

« 財政再建はいかにして可能か? | トップページ | 金融と金融政策のポイント »