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2009年7月 2日 (木)

新しいペーパー「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」を書き上げる

今週になって、標記の新しいペーパー「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」を書き上げて提出しました。大学のホームページにもアップしてあります。本学紀要の9月号に研究ノートとして掲載予定です。出るのが9月末ですので、その時点で、はなはだ古い記述になっている可能性もありますが、一応、7月1日に利用可能な指標に基づいていると但し書きを付してあります。実は、紀要の9月号には1か月前にこのブログでも取り上げた「九州7県における人的資本の推計」も掲載されるんですが、人的資本の推計を基にした研究論文のペーパーと推計のないエッセイの研究ノートを区別しているつもりです。今回のペーパーについては、今までこのブログなどで書いてきたことを、それなりに、もっともらしく研究ノートして書き直したことばかりですので、新味はありません。なお、英文タイトルは "An Essay on Recent Japanese Recession" ということで、current ではなく recent ですから、景気後退は1-3月期に終わったとの基本的認識の下に書いています。

景気動向指数の推移

まず、今回の景気後退局面において、特に、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻以降、2008年10-12月期から2009年1-3月期の景気の落ち込みが激しかったのは、基本的に、生産や在庫の調整スピードが猛烈な速さであったことに起因すると私は考えています。上のグラフは今回とバブル崩壊後の景気後退期の景気動向指数をピークを100としてプロットしてあります。両方の景気後退期ともピークのほぼ80%レベルまで落ちましたが、その落ち方の傾きが今回はかなり急であったことが読み取れます。

各国輸入の推移

この猛烈なスピードによる生産と在庫調整のバックグラウンドには、日本の輸出先国における在庫調整も寄与しているんではないかと私は考えています。日本の輸出先における日本からの輸出品の在庫に関する統計は存在しないでしょうから、傍証でしかあり得ないんですが、上のグラフは、世界共通で景気のピークと考えられる2007年10-12月期を100として、日米欧のGDPベースの実質輸入をプロットしたものです。米欧では昨年10-12月期から今年1-3月期にかけて大きく輸入が減少しているのが読み取れます。それに対して、日本は1四半期遅れて今年1-3月期に大きく輸入が減っており、米欧では国内需要の減退に対して輸入をバッファーとして活用する経済構造になっていることが示唆されています。グラフはありませんが、機械受注統計の外需が大きく落ち込んでいることも傍証のひとつかもしれません。
前半で事実関係を確認してから後半に入り、シュンペータ的及びミッチェル的な景気の2分法について触れ、ミッチェル的な景気拡大の初期にシュンペータ的な不況にあれば経済活動の水準が低く、資本係数や労働係数が高い水準にとどまっているため要素需要は増加せず、一定のタイムラグがあることを指摘しています。最後に、今夜のブログでは繰り返しませんが、今後の景気動向は今年の年末から来年年始にかけて2番底を付けに行く W 字型のパスが想定されると締めくくっています。W 字型か L 字型かは潜在成長率と実際の成長率のそれぞれの水準に依存しますが、今回の景気後退を経て設備投資の減少などにより潜在成長率は1%程度の水準に低下したと私は考えている一方で、今年4-6月期から7-9月期はこの水準を上回るものと見込んでいます。というか、少なくとも、L 字型のパスの定義として、この1%の潜在成長率を下回る成長率が続くと考えるのは非現実的だと受け止めています。

W 字型の景気パスをたどって2番底を付けに行くと私が想定している最大の理由は最終需要の動向にあります。今夜は明日の独立記念日の休日のため、米国の雇用統計がいつもの第1金曜日から前倒しで発表されます。輸出の先行きを占う上で米国景気の占める比率は依然として高く、明晩のエントリーで詳しく取り上げたいと思いますが、今から気がかりです。

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