鉱工業生産の増産はいつまで続くか?
本日、経済産業省から6月の鉱工業生産指数が発表されました。いずれも季節調整済みで、月次指数では前月比+2.4%と今年2月を底に4か月連続の増産となり、4-6月の四半期でも前期比+8.3%と5期振りの上昇となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。
経済産業省が30日発表した4-6月期の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は78.3となり、前の期に比べて8.3%上昇した。上昇は5四半期ぶり。在庫調整が進み、一部新興国の経済が回復し始めたことなどから、電子部品や鉄鋼製品などの生産が持ち直している。ただ消費や雇用は依然として厳しい状況にあり、経産省は「注意してみていく必要がある」としている。続いて、いつものグラフは以下の通りです。一番上のパネルは季節調整済みの月次の鉱工業生産指数、真ん中のパネルは同じく水色の出荷指数と緑色の在庫指数、一番下のパネルは季節調整済みの四半期系列で出荷指数と在庫指数の前年同期比をプロットしたもので、1999年1-3月期に緑色の上向き矢印から始まって、2009年4-6月期には同じく緑色の下向き矢印に達しました。45度線である赤の破線にはまだ達しません。
鉱工業生産の大きな流れを示す四半期ごとの指数は、昨秋の世界的な金融・経済危機を背景に低下し、09年1-3月期には下げ幅がマイナス22.1%まで広がった。その後には主要国を中心とした需要喚起策などが徐々に浸透し、在庫調整も一巡したことから、生産が上向き始めている。
経産省が同日発表した6月の鉱工業生産指数は81.0で、前月比2.4%上昇した。上昇は4カ月連続。業種別にみると、電子部品・デバイス工業が12.5%上昇した。国内向けのゲーム機やAV機器に用いる半導体集積回路の生産がけん引役となっている。
輸出とともに鉱工業生産が増加を示すのは当然なので、私が注目していたのは、第1に、先行きでした。製造工業予測指数は7月が前月比+1.6%増と先月の時点での予測である+0.9%増から上方改訂され、新たに出た8月も+3.3%増と6か月連続の増産を見込んでいます。GDP統計が4-6月期にはプラスに転じるとの予想はエコノミストの間で当然視されているんですが、7-9月期も潜在成長率水準を超えるプラスを記録する可能性が出て来たと私は受け止めています。少なくとも、4-6月期は鉱工業セクターの寄与だけでGDPh2%成長します。第2に注目すべきは、増産が幅広い業種に拡大して来たことです。そして、第1と第2の点を合わせて、要素需要のうち、雇用に先駆けて設備投資が回復する可能性があることです。ただし、現時点では逆の見方もあり得て、雇用の回復の遅れが設備投資の足を引っ張る可能性も排除できません。増産が設備投資をもたらし、雇用の回復に結実するのか、それとも、雇用の回復の遅れが最終需要の低迷につながって設備投資の伸びを抑制するのか、見方は分かれると思います。もちろん、中間の道もあって、輸出依存で生産と設備投資が回復し雇用が取り残される可能性もあり得ます。でもやっぱり、現在のような鉱工業生産の力強い増産がいつまで続くかは雇用にかかっているいるような気もします。
日本ではかなり確度高く1-3月期が景気の谷であったと考えているエコノミストが多いんでしょうが、米国でも発表されたベージュブックを見る限り、持直しの動きに向かっています。欧州のいくつかの国でははっきりと景気は回復局面に入っていますし、新興国はなおさらです。来年の今ごろには景気実感も大いに上向いていることを期待しています。
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