貿易統計に見る輸出のリバウンド
本日、財務省から6月の貿易統計が発表されました。一時は、前年同月比でほぼ半減していた輸出もかなり減少幅を縮小させており、季節調整済み系列では前月比プラスとなっていたりします。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。
財務省が23日発表した6月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比35.7%減の4兆6千億円となった。9カ月連続で減少したものの、減少率が5月の40.9%より縮小した。季節調整済みの前月比では1.1%増えた。中国などの景気対策を追い風に、日本の輸出に下げ止まりの兆しが出てきた格好だ。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5080億円の黒字となり、黒字額が前年同月比で1年8カ月ぶりに増加した。
昨年秋以降の金融危機が響き、日本の輸出は昨年10月から前年同月の水準を下回っている。ただ世界的な財政出動の効果もあって、減少率は2月の49.4%をピークに縮小する傾向にある。
次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルが月次原系列の輸出入とその差額たる貿易収支、下が輸出金額を価格と数量で寄与度分解したものです。
まず、輸出が順調に回復して来ています。ほぼすべての国向けの輸出が回復するとともに、特に、欧米向けの自動車が好調です。エコカーの販売促進策は日本だけの専売特許ではないので、特に欧州方面では日本車の売行きは悪くありません。さらに、昨年末からの急速な在庫調整もほぼ完了したように見受けられます。ただし、貿易収支の逆側の輸入はまだ回復に至っていないように見受けられます。彼我の景気回復の力強さの違いを反映しているわけです。昨年後半からの日米欧の実質輸入をグラフ化すると、実に見事に米国では需要のバッファーとして輸入を活用する経済構造が出来上がっているのに対して、日本はそうなっていません。必要なものは必要に応じて輸入するという構造のままですから、本格的な日本経済の回復がなければ、輸入の増加は今しばらく実現しない可能性も残されています。でも、逆の面から見ると、これは貿易収支の黒字幅拡大をもたらしており、景気の回復や成長の加速には好影響を及ぼします。極めて大雑把な計算でも、4-6月期GDPの外需の寄与度はほぼ1%くらいになるんではないかと私は考えています。
最後に、この輸出動向を見ると、来週発表される6月の鉱工業生産指数はプラスを記録することがほぼ確実ですから、事後的に今年1-3月期が景気の谷だったと判定される確率がさらに高まった気がします。
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