雇用統計から米国経済の先行きを考える
昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済み系列の前月差で▲46.7万人減と、事前の市場コンセンサスの▲36.5万人減を上回った一方で、失業率はこれも季節調整済みで9.5%と事前予想の9.6%を下回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
米労働省が2日発表した6月の雇用統計(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月から46万7000人減った。減少規模は5月(32万2000人、改定値)を上回り、市場予測の平均(36万5000人)よりも悪かった。失業率(軍人を除く)は前月より0.1ポイント悪化し9.5%。米雇用情勢は底入れがまだ見えにくい状況だ。
雇用者数減は18カ月連続で1981年8月~82年12月を抜き戦後最長。今年1月の74万1000人減をピークに減少ペースが鈍っていたが再び減少幅が拡大した。
製造業が13万6000人減と引き続き低調なうえ、底入れの兆しが見え始めていた建設(7万9000人減)、小売り(2万1000人減)も減少幅が再び拡大した。2007年12月からの景気後退局面での雇用減は合計で約650万人になった計算になる。
次に、いつものグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの月次データで、上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差、下のパネルは失業率です。影を付けた期間は景気後退期で、日本と違って米国では今もって景気後退が続いていると仮定しています。
さらに、これまた、いつものフラッシュを New York Times と Los Angels Times から引用すると以下の通りです。
個別に統計を詳しく見ると、非農業部門雇用者数については、日経新聞にあるようにブルームバーグの集計によれば、事前の予想は▲36.5万人減といわれていて、私なんかは▲30万人近くまで、あるいは、▲20万人台まで悪化幅が縮小するんではないかと考えていたほどなんですが、結局、逆に、▲46.7万人減に悪化幅が拡大しました。ただし、米国の国勢調査の結果を受けた改定もあり、直近の4月が下方修正され5月が上方修正された結果、6月の悪化幅が大きく見えるという点は割り引いて考える必要がありそうに思います。同様に、失業率についても、就業者数が▲37.4万人減少した一方で、労働力人口も▲15.5万人減りましたから、このいわゆる discouraged worker の影響により、事前の予想ほどは失業率が上昇しなかったとも考えられます。ただし、全体として考えれば、メディアの論調のように、雇用環境の悪化が加速していると捉えるべきかどうかは疑問が残り、役人的な細かな表現振りかもしれませんが、せいぜい、雇用の悪化が続いていると言ったところではないかと思います。しかし、今回のこの統計を見て私も今後の米国雇用見通しについては大きく修正し、今年年末から来年年始くらいまで米国雇用者数の減少が続く可能性がある、と見方を変更しました。従って、米国の景気転換点も同じくらいの時期になる可能性が高いと受け止めるべきです。
我が国への影響を考えると、春先から輸出が増加を始めていますが、中国向けの失速とともに米国経済の回復の遅れから、夏場から秋口にかけて弱含みの展開となる可能性が残っていると考えるべきです。日本の景気に関する結論は従来と変わりありませんが、輸出はそれなりに我が国にとって重要な需要項目ですから、すでに景気後退を終えて拡大に転じているとしても本格的な回復にはもう少し時間がかかりそうな気がしないでもありません。
最後に話は大きく変わって、米国の雇用統計とも日本の景気と関係ないんですが、昨日、第141回芥川賞と直木賞の候補作品が発表されました。追って、この週末のエントリーで取り上げたいと思います。
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