8月17日に発表される今年4-6月期の1次QEやいかに?
内閣府の8月17日の発表を前に、1次QEに必要な経済指標がほぼ7月中に出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +1.6% (+6.4%) | 輸出の回復と政策効果により大幅なプラス成長に |
みずほ総研 | +1.0% (+3.9%) | 外需と財政支出が成長率を押し上げ |
三菱UFJ証券 | +1.0% (+3.9%) | 設備投資、在庫投資などの減少も、輸出などの増加が大きく、プラス成長に |
第一生命経済研 | +1.0% (+3.9%) | 輸出の回復と景気対策効果でプラス成長に |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.8% (+3.2%) | 5四半期ぶりにプラス成長になったと予想 |
ニッセイ基礎研 | +0.8% (+3.2%) | 急激な落ち込みが続いていた輸出が増加に転じ、外需寄与度が前期比1.5%と大幅なプラスとなったこと、昨年来の経済対策の効果から公的固定資本形成が大幅に増加したことが成長率を押し上げ |
三菱総研 | +1.0% (+4.1%) | 生産や外需の持ち直し、経済対策による消費下支えや公共投資の伸びを反映 |
新光総研 | +0.8% (+3.3%) | 内外において、昨年後半以降の急速な生産調整が一巡したことや景気対策の効果が出始めたことで、経済の悪化に歯止めが掛かり、5四半期ぶりのプラス成長 |
全体を概観すると、日本総研を除いて、前期比でほぼ1%から1%弱、前期比年率で3-4%程度といったところが平均的なラインではないかと見受けます。要するに、昨年10-12月期から今年1-3月期の大きなマイナス2桁成長からリバウンドして、4-6月期はプラス成長、しかも、潜在成長率水準をかなり大きく超えるプラスの成長率を記録する可能性が高いと見られています。私もまったく同感です。しかも、明示的に7-9月期に言及しているのは上の表の中では日本総研とみずほ総研だけなんですが、いずれも4-6月期に匹敵する成長を見込んでおり、これまた、私も同感です。
成長率の水準そのものに大きな差がありませんので、それ以外の注目点について、私は2点上げたいと思います。第1にデフレータです。控除項目である輸入デフレーターが商品市況の下落に伴って大幅な低下を示しており、GDPデフレータとしてはプラス幅を拡大するんでしょうが、国内需要デフレータもマイナス幅を拡大することは確実で、デフレの進行の観点からの評価が難しそうな気がします。なお、デフレータのプラス・マイナスは伝統に従って前年同期比で考えています。第2に年度後半以降の先行き見通しが不透明なことです。私の考えとほぼ同じなので、上の表のみずほ総研のリポートからそのまま引用すると、「企業の投資意欲は減退したままであるし、雇用・所得環境は悪化傾向が続いており、民需が自律的に回復するパスは依然として描けない。その意味で、財政刺激効果が剥落した後の景気パスについて、わが国経済は依然として不安を抱えたままの状態にあり、決して先行きを楽観できるものではないだろう。」ということになります。要するに、従来からの私の主張の繰返しになりますが、今年年末から来年年始にかけて W 字型の景気パスを描き、2番底を付けに行く可能性が高いということだと思います。さらに、その先にマイナス成長が続くようだと、本格的なデフレ・スパイラルの可能性が否定できなくなります。もちろん、米国経済をはじめとする外需の動向も気がかりです。
8月30日に総選挙の投票日まで2週間を残す8月17日に発表される4-6月期のGDP1次QEは、あるいは、選挙結果に何らかの影響を及ぼす可能性も考えられなくはありません。いろんな意味で注目なんだろうと思いますので、いつもの直前ギリギリでなく、少し早めに取り上げてみました。
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