今週発表された主要な経済指標について
子供達と多摩テックに行ってゴーカートやプールで遊んだり、ポケモン映画を見に行ったりと、今週もゆったり夏休みを過ごしていたんですが、今週もいくつか重要な経済指標が発表されています。まず、今日、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの労働統計、そして、総務省統計局から消費者物価指数が発表されています。さらに、一昨日、貿易統計も公表されています。いずれも7月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
労働統計
国内の雇用情勢が一段と悪化してきた。総務省が28日発表した7月の完全失業率(季節調整値)は5.7%と前月から0.3ポイント上昇し、過去最悪を更新した。失業率が過去最悪を記録するのは2003年4月以来6年3カ月ぶり。一方、厚生労働省が同日発表した7月の有効求人倍率(同)は前月を0.01ポイント下回る0.42倍と、3カ月連続で過去最低を更新した。国内経済は昨秋以降の景気後退から持ち直しの動きがあるが、なお生産能力などに過剰を抱える企業も多く、雇用調整がさらに進む恐れもある。
7月の失業率は02年6、7月と03年4月に記録した5.5%を上回り、1953年の統計開始以来過去最悪となった。失業率は7月まで6カ月連続で上昇しており、昨年7月からの1年間では1.7ポイントもの大幅な悪化となる。
消費者物価
総務省が28日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動が大きい生鮮食品を除いたベースで100.1となり、前年同月に比べて2.2%低下した。低下は5カ月連続。前年同月比の低下率は比較可能な1971年以来で過去最大で初めて2%台に乗った。昨年夏にガソリン価格が急騰した反動に加え、家電などの価格下落も進んでいる。
CPIは生鮮食品を除くベースで、今年5月に1.1%低下と前年同月比の低下率が8年ぶりに過去最大を記録。その後、6月(1.7%低下)、7月と低下率はさらに広がり、3カ月連続の記録更新となった。7月のCPIは前月比でも0.2%低下しており、夏物衣料の値下がりなど季節要因を勘案しても、物価の下落傾向は鮮明だ。
貿易統計
財務省が26日発表した7月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は前年同月の4.6倍の3802億円の黒字になった。黒字幅の拡大は2カ月連続。輸出額が4兆8447億円と前年同月比36.5%減ったものの、原油価格の下落で輸入額が4兆4644億円と40.8%減ったためだ。
輸出額の減少は10カ月連続で7月の減少率はわずかながら6月より広がった。「リーマン・ショック」前だった昨年7月は中東やロシア向け自動車が好調で、輸出額は過去2番目の水準に達しており、その反動が出た面もある。財務省による季節調整値によれば輸出額は前月比1.3%減とマイナスに転じた。
7月の輸出動向を国別にみると、米国向けは前年同月比39.5%減となった。排気量が3千ccを超える自動車や自動車部品、横軸マシニングセンターなど金属加工に使う機械が落ち込んだ。輸出額のマイナス幅は5カ月ぶりに拡大した。欧州連合(EU)向けは45.8%の減少。
ということで、まず、労働統計のグラフは以下の通りです。上のパネルの赤い折れ線が失業率、真ん中のパネルの青い折れ線が有効求人倍率で、ともに過去最悪の記録を更新しています。もっとも、一番下のパネルの緑の折れ線は新規求人倍率で、労働統計の中では先行指標と目されているんですが、6-7月と2か月連続で改善しています。失業率の上昇も就業者数の減少よりは労働力人口の増加の寄与が大きく、景気が改善する中で労働市場への参入が増加しているわけですから、引用した記事ほど悲観的に見る必要はなく、そろそろ、労働統計も下げ止まりを示し始めたと私は受け止めています。もっとも、明らかな反転を確認するためにはもう少し時間が必要かもしれませんし、さらに、所得に反映されるのはもっと先になる可能性が高いのは言うまでもありません。いまだに生産などの経済活動の水準そのものは低くて、労働や設備投資といった要素需要は盛り上がりに欠けます。
次に、消費者物価のグラフは以下の通りです。青い折れ線が生鮮食品を除く、いわゆるコア CPI、赤が食料品とエネルギーを除く、いわゆるコアコア CPI、そしてグレーが東京都区部のコア CPI のそれぞれ前年同月比の上昇率です。棒グラフは全国ベースのコア CPI の前年同月比に対する寄与度で、黄色がエネルギー、緑色が食品、水色がその他です。労働統計と同じで、消費者物価の前年同月比下落率も過去最悪を更新し続けています。エネルギーを含めたコア CPI の下落幅が最大を記録するのはこの8月か9月統計だろうと私は考えています。でも、エネルギーを含まない欧米タイプのコアコア CPI は年内いっぱいまで下がり続ける可能性が高いと覚悟すべきです。その後、来年にかけて本格的なデフレ・スパイラルに陥るかどうかは、私の想定する W 字型の景気パスの2番底の深さや長さに依存します。
最後に、一昨日に発表された貿易統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは輸出入とその差額たる貿易収支で、左軸の単位はいずれも兆円です。下のパネルは輸出金額の前年同月伸び率を数量と価格の指数で寄与度分解したものです。輸出入とも今年前半に底を打って回復傾向にあることは明らかですが、現時点では、主として中国などの新興国への輸出によって牽引されており、ボリュームの大きな先進国の景気回復が遅れていますから、V 字型の回復には見えません。でも、今回の景気回復局面も国内需要が盛り上がらないので、外需に依存する可能性が高いんではないかと私は考えています。その意味で、貿易統計は引き続き注目なんだろうと思います。
景気が回復しているとは言っても、今日発表の労働統計と消費者物価は過去最悪と報じられていて、景気実感はまだまだ上がりません。でも、来週早々に発表される鉱工業生産はまた違った様相を呈するんではないかと期待しています。
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