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2009年8月 1日 (土)

死に関する伊坂作品を文庫で読む

最近、文庫本になった伊坂幸太郎さんの作品を続けて2冊読みました。『死神の精度』(文春文庫)『終末のフール』(集英社文庫)です。やや無理やりに2冊セットにしたのは、同じ伊坂さんの作品であり、ともに「死」をひとつのテーマにしているからです。というのは表向きで、実は、生協で15パーセント割引の対象は2冊以上を買うことだったのが最も大きな原因です。6月28日付けで取り上げた『天使と悪魔』上中下の3巻も、7月19日付けの『名探偵の掟』と『名探偵の呪縛』もコレだったりします。
どちらも短編集なんですが、伊坂作品らしく関係のない話題を集めているわけではなく、各短編が密接な関連を持っています。ということで、まず、この2冊に収録されている短編を並べると以下の通りです。

  • 死神の精度
    • 死神の精度
    • 死神と藤田
    • 吹雪に死神
    • 恋愛で死神
    • 旅路を死神
    • 死神対老女
  • 終末のフール
    • 終末のフール
    • 太陽のシール
    • 篭城のビール
    • 冬眠のガール
    • 鋼鉄のウール
    • 天体のヨール
    • 演劇のオール
    • 深海のポール

伊坂幸太郎『死神の精度』(文春文庫)と『終末のフール』(集英社文庫)

1冊目の『死神の精度』は不慮の死が予定されている対象の人物を死神が調査して、「可」か「見送り」かを報告するもので、もちろん前者はそのまま死に至り、後者は不慮の死が文字通り見送られます。すべての短編を通じて主人公は同じ死神なんですが、この死神は調査案件ごとに年齢や外見を変えるということになっています。なお、死神とはヤケに音楽=ミュージックが好きであると設定されており、もちろん、人間ではありませんから「雨男」と「雪男」を同じ種類の表現ととらえるカン違いをしていたりします。それから、各作品の関連はいかにも伊坂作品らしく、濃厚に関連しています。最後の短編の老女とは「恋愛で死神」に登場する調査対象者の恋人と目される女性であり、さらに、この老女は最初の短編の調査対象者で死神がめずらしく「見送り」と報告した人物のCDを持っていたりします。各短編作品が密接に関係しているだけではなく、別の伊坂作品とのつながりも見られます。「旅路を死神」では仙台に死神一行が立ち寄った際に、"GOD" とスプレーで落書きしている若者と死神が会話を交わします。そうです。このブログの6月21日付けのエントリーで取り上げた『重力ピエロ』の主人公兄弟の弟の方のがこの若者だと考えられています。
続いて、『終末のフール』は近未来SFとでも呼べそうな作品で、「8年後に小惑星が地球に衝突して人類が滅ぶ」ことが発表されてから5年後、すなわち、3年後に地球が終末を迎えるという設定で仙台郊外のマンションに住む住民を主人公にしています。もちろん、ネビル・シュートの『渚にて』を強く意識した作品だと思います。地球滅亡のニュースの直後には治安がかなり荒れてたんですが、やや小康状態になったとの設定です。短編ごとに主人公は異なりますが、これまた、伊坂作品らしく密接に関連した作品です。繰返しになりますが、各短編の主人公はすべて仙台郊外の同じマンションであるヒルズタウンに住んでいます。『渚にて』は基本的には、カギカッコ付きの「滅びの美学」であって、最後にタワーズ艦長はスコーピオン号を乗組員とともに自沈させるんですが、『終末のフール』の各短編はもっと前向きで、地球の終末すらギリギリまで楽しもう、あるいは、それを超越してしまって自らの道を進み続ける、という姿勢を持つ登場人物もクローズアップされている短編もあります。
この2作品を通じて、さすがに、幅広く何でも書ける伊坂さんの才能に脱帽してしまいました。もちろん、伊坂ワールドは仙台を舞台とするミステリーがホームグラウンドなんでしょうが、決して、ミステリーだけではなく、村上春樹さんに通ずるエンタテイメント性も豊かな作品を生み出す自由自在な筆致は素晴らしいと言えます。今日のブログで取り上げた作品はいずれも5ツ星、特に『終末のフール』の方はさらに高い評価が可能だと思います。

米国GDPの推移

最後に、誠についでながら、上のグラフは米国商務省が昨夜発表した米国GDP成長率です。季節調整済み系列で前期比年率成長率は昨年10-12月期の▲5.4%減、今年1-3月期の▲6.4%減から、4-6月期には▲1.0%減までマイナス幅が縮小しました。オバマ米国大統領は "As far as I'm concerned, we won't have a recovery as long as we keep losing jobs." と発言し、雇用を重視する従来の姿勢を強調しました。来週の米国雇用統計も注目なんでしょう。

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