アジア開発銀行 (ADB) の「経済見通し」 Asian Development Outlook 2009 Update
日本が秋のシルバーウィークに入っていて金融市場が開かれていないだけでなく、当然ながら経済指標の発表もなく、その上に、総理大臣が外遊してしまったので、国内には大きなニュースもないようなので、昨日今日と海外から発信された経済の話題を取り上げています。昨日の世銀の「世界開発報告」World Development Report 2010 に続いて、今日はアジア開発銀行 (ADB) の「経済見通し」 Asian Development Outlook 2009 Update に注目します。本日、フィリピンの首都マニラにある ADB の本部で発表されました。副題は Broadening Openness for a Resilient Asia となっており、第2章で貿易、金融、労働などの開放政策を論じています。もちろん、pdf ファイルのリポートも公表されています。まず、見通しのヘッドラインなどについて、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
アジア開発銀行(ADB)は22日、アジア地域(日本など域内先進国を除く)の来年の実質国内総生産(GDP)が今年に比べ6.4%成長するとの見通しを発表した。各国の積極的な財政出動などが寄与するとして、3月末時点の前回見通しを0.4ポイント上方修正した。域内大国の中国が同8.9%、インドが同7%伸び、全体を押し上げる。今年についても昨年に比べ3.9%成長と、前回見通しを0.5ポイント上方修正した。ADBは「アジア経済は世界景気の回復をけん引していく」とみている。
対象各国の成長率見通しは以下の通りです。リポートの p.170 Table A1 Growth rate of GDP (% per year) から引用しています。少し縮小をかけていますので、見にくかったらゴメンなさい。
3月29日付けのエントリーで取り上げた春の Asian Development Outlook (ADO) では昨年版から大きく下方修正されたアジア途上国の成長率見通しが、最近時点までの動向を踏まえて上方修正されています。2010年の成長率だけで見ると、上の表の通り、中国が8.0%成長から0.9%ポイントの上方修正をはじめとして、東アジア地域が春の6.5%から7.1%と0.6%ポイントの大幅上昇となっていて、アジア途上国全体では0.4%ポイントの上方修正となっています。他方、インフレ率も2010年でアジア途上国で春の2.4%から3.4%に上方修正されていたりします。なお、アジアだけでなく世界経済に関する先行きリスクとして、pp.21-25にかけて、以下のような要因を上げています。
- Misjudged exit from stimulus
- Continued weak US housing market
- Resurgent global oil prices
- Flu pandemic
ということで、最初のリスク要因を分析する一環として、大胆にも、p.10 の BOX 1.1.3 では日米中央銀行の出口戦略を論じたりしています。余計なお世話かもしれません。また、米国住宅市場をリスクとして認識している一方で、我が日本の回復ペースの緩慢さや2番底をつける可能性はすでに ADB では織込み済みなのかもしれません。
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