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2009年9月17日 (木)

伊坂幸太郎『あるキング』(徳間書店)を読む

伊坂幸太郎『あるキング』(徳間書店)

伊坂幸太郎さんの『あるキング』(徳間書店)を読みました。『本とも』の連載を大幅に加筆修正したとのことです。私はそんなに伊坂作品をたくさん読んでいるわけではありませんが、それでも、『ゴールデンスランバー』、『死神の精度』、『終末のフール』、『重力ピエロ』なんかとは大幅に違う作風だと思います。以下、ネタバレがあるかもしれません。未読の方が読み進む場合はご注意ください。
まず、「キング」の名の通り、「王」なんですが、これは野球の「王」です。すなわち、「ホームラン王」とか「盗塁王」とかの「王」です。もちろん、とっくに引退しましたが、固有名詞の選手としても偉大なホームランバッターがいたことは多くの方がご存じでしょう。弱小地方球団仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求が主人公です。この少年は両親に徹底的に英才教育を施され、当然のように仙醍キングスに入団して野球選手になるべく育てられます。左打ちのホームランバッターに育ち、メチャメチャな成績を残し、短い選手生命を意外な形で閉じます。
今までの作品とはかなり毛色が違います。まず、3人称で書かれている章がある一方で、主人公の王求が生まれた日に不慮の死を遂げる仙醍キングスの名選手・監督であった南雲の1人称の形を取ることもあります。エンタテインメント的な色彩はありません。主人公の王求について私がイメージしたのはゴルゴ13です。感情がないかのような人物で、正確無比にミッションを遂行します。もちろん、ゴルゴ13と違い、王求のミッションはホームランを打つことです。打率が9割近いメチャクチャな設定です。その王求の最期はジョン・レノンというか、ケネディというか、そういった死を連想させます。非常に興味深いのは、0歳で王求が生まれるところから始まる小説が、最後にまた0歳で誰かが生まれるところに戻っていることです。小説の手法としては、少なくとも、伊坂作品では見かけたことはないような気がします。

最後に、『あるキング』を離れて本邦文学界の話題なんですが、毎日新聞のサイトの報道によれば、村上春樹さんが『1Q84』の BOOK 3 を執筆中だそうで、来夏にも出版されるみたいです。私が6月5日付けのエントリーで「完結」と断言したのは間違いだったようで、大いに反省していますが、同時に、楽しみでもあります。

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