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2009年9月28日 (月)

新しいペーパー「我が国における労働調整過程の変容: VAR プロセスの応用」を書き上げる

新しいペーパー「我が国における労働調整過程の変容: VARプロセスの応用」を書き上げました。一応、私は時系列分析が専門であると称しているんですが、今回は初心に帰って VAR プロセスを組んでマクロの労働調整過程を分析してみました。
戦後における日本の雇用においては、労働投入量としては残業などの労働時間の伸縮性により、また、コスト面からは独特のボーナス制度などに支えられて、主として賃金=価格で調整される部分が大きく、最終的に雇用者数や失業率がそれほど変動することなく雇用調整が行われてきたと考えられているんですが、昨年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻以降の世界的に厳しい景気後退の中で、いわゆる「派遣切り」とか「雇い止め」と称するような現象が起こり、産出の代理変数である生産の変動を労働時間や賃金の伸縮性で吸収し切れずに雇用の大幅な減少につながったのではないかと指摘されています。これを VAR プロセスに基づくインパルス応答で分析しています。結果は下のグラフの通りです。

インパルス応答の推移

上のパネルから順に、生産から時間外労働時間、すなわち残業へのインパルス応答、生産から賃金へのインパルス応答、生産から雇用、すなわち非農業就業者数へのインパルス応答です。期間は全体が1978年2月から2009年6月まで、第1期は1978年7月から1988年6月までの10年、第2期が1988年7月から1998年6月までの10年、第3期だけ1998年7月から2009年6月までの11年としています。
グラフを見れば明らかなんですが、直近時点を含む第3期だけ、生産が増加しても労働時間が伸びず、逆に賃金は上昇するという結果になっています。しかし、生産から雇用へのインパクトについては、上のグラフは自然単位ですが、労働生産性を加味した効率単位では1-3期で大きな変化はないように直感的に感じています。上の2つのグラフを総合して考えると、賃金データは1人当たり月額をベースに作成されていることから、労働時間、特に残業時間の変動が従来に比べて小さくなった状況下で賃金が伸縮的になった原因として考えられるのは、第1に、1人当たりの賃金そのものが労働時間にかかわりなく伸縮的であるか、第2に、加重平均された賃金を考え、いくつかの賃金水準グループを生産の変動に合わせて雇用しているか、のどちらか、あるいは、その双方です。現実の日本経済に最近時点で生じている定型化された事実と照らし合わせて解釈すると、前者については、生産が変動する景気局面に応じて従来以上にボーナスが変動する業績連動を強めた給与体系が広く普及している、あるいは、後者については、生産が縮小する景気後退期に給与水準の高い正社員から給与水準の低い非正規労働者に代替する、あるいは、逆に、生産が拡大する景気拡張期には非正規雇用を一括して正社員として登用する、などが考えられるところです。この点では直近時点を含も第3期の労働調整過程は大きく変容したと考えて差し支えありません。しかし、話は戻りますが、3番目の一番下のグラフを見ると、生産性の向上に基づく効率単位を加味すれば、オーバーオールの生産から雇用へのインパクトは決して大きく変容していないと考えられます。最後に、最近1年間で観察された「派遣切り」や「雇い止め」はさすがにデータで追い切れていない気がします。

時系列の基本たる VAR プロセスを応用した分析でした。少しインパルス応答の解釈に自信のない部分もありますが、その昔に大和総研の原田さんと書いたペーパーに準じましたので、間違ってはいないと思います。

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